多国籍チームのマネジメントとリーダーシップ
(6月14日のnoteの内容を日本語で書きました。)
先日お招きい頂いたFacebookLiveイベントで、国連で多国籍チームのマネジメントとリーダーシップに関してお話する機会を得た。自己紹介にも書いたが、新卒で国連に入り、17年間、様々な国で多国籍チームと共に働いてきた。その中で私なりに学び、実践してきたことをいくつかお話した。
今日は二つシェアしたい。
一つ目は、良き観察者であることについて。
新しい国や地域に仕事で赴任する際意識していたのが、自分はその国にお邪魔している身分である、という事実である。大抵2年くらいの赴任期間をその国で過ごすのだが、特に最初の3ヶ月間は、周囲の環境をよく観察することに努めていた。同じ機関ではあっても、その事務所なりの仕事の進め方というものが往々にしてあるので、あえて良い悪いの判断をせずにまずはそこの事務所のやり方を観察する。そしてこの最初の3ヶ月間は仕事のやり方を大きく変えるようなことは出来るだけしないようにしていた。よくある失敗は、相手をよく理解せずに自分のやり方を押し通そうとすること。大抵の場合、大きな抵抗にあったり、徒労に終わり、お互いにとって良い結果にはならない。まずは相手を理解すること。そのためには、良き観察者であることが大切だ。
2つ目は、コミュニケーションとフィードバックの大切さについて。
国連で働いていた当時、常に多様な文化背景を持つ多国籍チームと共に仕事をしていた。それぞれのチームメンバーが違う文化背景を持ち、更に、開発途上国の国事務所で働いていた時は、そこに現地の文化の影響が色濃くあった。そんな多様な背景を持つ同僚や、仕事相手の現地政府やNGOの人達と、より良い信頼関係を築いていく上で、コミュニケーションは非常に重要だった。
2009年から2011年の終わり頃まで、つまりアラブの春が始まる前からその最中に、イエメンに赴任していた。イエメンの事務所に配属されて直ぐ、当時の上司に、私の所属していたチームの全ての現地職員の上司役を委任された。急に来たばかりの日本人女性が今日から上司だと通達されたイエメン人の男性スタッフ達は、初めは私を上司として認めることに抵抗を覚えていた。これは、文化的背景を考えると無理もないことで、当時もおそらく今もイエメンはジェンダーギャップの指標において世界最下位で、女性の地位が低い。それまでの上司が年配の男性だったのに対し、新上司となった当時の私は30代前半だった上、部下は私より皆年上だった。それまでの任地でも、部下の方が年上である状況には慣れていたが、女性であることで苦労したのはイエメンの文化背景が多分に影響していたと思う。
一人一人のスタッフと信頼関係を築く為、当初は毎日一回は全てのスタッフのデスクを訪れたり、毎週のチーム全体でのミーティングのほかに、個別のミーティングも定期的に行っていた。個別ミーティングでは、各人のキャリアの目標を理解し、その達成のために上司として私はどんなサポートができるかという話もした。また、上司である私に対してのフィードバックも定期的に貰うようにしていた。これはそれぞれのスタッフに存分に能力を発揮してもらうために、各人に合ったマネジメントスタイルを模索する上で役に立った。上司から部下へという一方通行のフィードバックではなく、双方向のフィードバックを大切にしていた。数年おきに次の赴任地に転勤する身であった為、どの赴任地でも、そこのオフィスを、来た時よりももっと良い状態にしてから去りたいと常に思っていた。人を育てるには時間も労力もかかったが、強いチームこそが後に残していくべき成果だと思う。コミュニケーションもフィードバックも、双方向であるからこそ、相互理解が増し、ひいてはより良いチームを作ることにつながると信じている。
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