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空と海と、21日目
2019年5月16日
違和感のある左のお尻から腰にかけて、少し改善したようなしないような微妙な中、昨日と同じおにぎり弁当を受取り6時5分に宿を出た。
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目の前からの潮風が心地よく、洒落た造りの白い宿は離れて見ると絵になっている。明日は打ち戻りなので、この先の『民宿くもも』に連泊の予約をとっていた。
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昨夜は、学生時代に亡くなった父の夢を見た。久しぶりに私を案じてくれているのかなぁと、青い空と海を見て思った。何度考えても、この青い海が高知の人には一瞬にして魔物に変わるのだと思うと複雑だ。
人間は自然の恩恵を大いに受け共存してきた歴史がある。他方、それを破壊してきたのもやはり人間だ。そして又その自然の脅威におののくのも、その人間なのだ。
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ここ土佐湾の黒潮町は、ホエールウォッチングで有名な町だ。我が子が小さいときに連れて来たらどんなに喜んだだろうかと、看板をみてしみじみ思った。
高知は『やなせたかし』の出身地でもあり、道理でバイキンマンの人形を見かける訳だ。
ルートを間違えないように何度も地図を確認しながら、四万十大橋を目指して歩いた。
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四万十川を渡るのには、『下田の渡し』があるのだが、運行しないことがあるので電話で要確認と公式地図に書かれていた。
その船主である沖さんの携帯に9時過ぎにかけることが決められていて、それなら早朝にルートが決まらないので船はやめて初めから橋を渡ることにしたのだ。
渡る予定だった。
渡ると思っていた。のだ。
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歩いていると、数多くの『津波避難路』の標識がある。今、正にここで遭遇するかも知れないのだ。そのときはザックを投げ捨てて高台に走って行こうと、その標識を見るたびに思うのである。火事場の馬鹿力で、重いザックがあっても飛んでいけるのかも知れない。
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コスモスに似た黄色の『オオキンケイギク』が道路わきに咲き、かすかに揺れている。
歩き始めてまだ2時間くらいだったが、違和感はどんどん大きくなり私の歩は一層ゆっくりとなっていた。脚が開きにくく前に出ないのがもどかしい。意に反した脚は自分のものと思えないほどで、鎧を着て歩いているようだった。
そして遂に案じてい小爆弾が、ここで姿を現すことになる。
四万十大橋手前にLAWSONがあり、その直ぐ先には地元の物販をする道の駅の縮小版みたいなお店が見えた。とにかくそのお店まで辿り着こうと、必死に歩いていた。自動販売機の真横に、スチール製のベンチ椅子があったので座った。
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『四万十大橋目前にある、地元商店の自動販売機ヨコのベンチ』に、私が座った時間は午前9時だった。
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腹が減っては戦はできぬ。この休憩中に、ホテルで準備してもらったおにぎり弁当を食べる。
昨日と全く同じおにぎり3つと、添えられた少しのおかずが変わっていた。
食欲だけはいつ何時も落ちることがない。しかし、そのおにぎり休憩の間も左脚が確実に動かなくなっていったのだ。
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それで『民宿くもも』までの地図を眺めては、これは無理だと判断した。その場でキャンセルの電話をいれた。仕方がない理由であれ、キャンセルの電話をかけるのはいい気分ではない。しかし1分でも早く取り消しを伝えるのが、せめてもの礼儀だと思う。
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そして、考えていた。
このまま此処で長く休むのか、それとも一泊して様子をみるべきかと近辺の宿を探したり、ルート変更を考えたり、友人にLINEで相談したりと私の心は揺れていた。
実は2月のマラソン大会の前に、歩けなくなったときと感触が似ていた。
このまま歩けなくなるかも。 やばい!(普段は使わない)
辺りは何もない。地図を見ると近くに『こつか』駅があったのでとにかく移動しようと思って電話をすると、チケットを買うなら次の中村駅に行くように言われた。
どうしよう・・・
駅前なら何かあるだろうから、とりあえず移動しようと中村駅に行くためにベンチ椅子から立ち上がるのだが、上手く立ち上がれない。
なんだ?
杖を突いてもまるでふざけているかのような、少しの歩きがやっとだった。
お店の人に、中村駅には歩いて行くと遠いですか?と尋ねていると、こちらを気にかけてチラチラ見る女性がいたのだ。
そして、そのとき女性が「私が乗せて行きましょう!」と。
神の声だった。
「いいんですか?」と言う私に、「通り道だから」とさっぱりした返事をした後、私が車まで歩くのが大変なのを知り目の前で移動してくれたのだ。
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駅まではここから4㎞ほどある道のりを歩ける訳がなかった。駅に行くにはタクシーで移動だった筈で、お金もかかるからとてもありがたい。
車の中で、弘法大師の木から作ったという数珠を渡された。
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その女性のくれた数珠は実際に手首にはめるには小さいサイズであり、飾りとして使うものだ。数日前にベトナムから来たお遍路さんにも渡したらしく、こうして100個くらい渡しているんだと淡々と語る。
100個も渡しているんだ・・・
そして「懲りずに又来てくださいね」との言葉が、暖かくて嬉しい。駅前に着くと、私の重いザックを持とうとするので「重いです!」というと、「農家だけんね・・・」と片方の肩に背負ってスタスタと駅舎に向かって歩いたのだ。
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農家の人はたくましい。
そして女性だけど、男らしい!
訳の分からない褒め方をしながら、その女性の後ろ姿が目に焼き付いた。
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🔴そんなこんなで高知で3日ほど休む等々考えていた私は、中村駅の待合室で一息ついて冷静になり、歩くことをストップすると決めたのだった。
その結果、三十七番までの区切り打ちとなったのだ。本来の目標は八十八番まで行くことだったが、高知県制覇もならずして3週間の四国であった。
🔴1,400㎞中の600㎞。
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この度は自分の脚の状況からして此処までが精一杯で、それでも歩いたことに後悔なんてある筈もなく、それは宝の時間であった。
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☝️
中村駅から私のザックを持って電車に乗ってくれた大阪から来た区切り打ちのヨシカワさん。
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途中乗り換えの無人駅でトイレがないので自宅のトイレまで軽トラに乗せて連れて行ってくれたおじさん。思いがけない他人の助けを受け、私は心を熱くして松山に向けて移動していた。
カッパ列車みたいなのに乗って…
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リタイアしたことへの気負いみたいなものは不思議となく、時間の宝石を纏ったかのように・・・
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中村駅~若井駅~宇和島駅~松山駅と、中村駅の駅員さんと相談して最小限の歩きの移動で乗り換える方法をとったのだった。
JR松山駅前からリムジンバスで松山観光港に行き、フェリーに乗る順路。
実はリタイアしたとき友人にLINEすると、大阪から迎えに行くから6時間くらい待ってて、と言ってくれたのをフェリーで帰るからと丁重にお断りしていた。本当に感謝だった。
『とうりゃんせ』じゃないが、行きはよいよい・帰りは恐い~と、帰るにも本当の意味で遍路ころがしならぬ、他人の手助けがなかったら『帰りころがし』みたいなものだった。
『自分には絶対にできない』
『もしかしたら、出来るかもしれない』
『やれば、なんとかなりそう』
2年前から少しずつ思いが変わり、この度の四国の実行に至ったのだ。
マメで文句ばかりだったが大きな事故もなく、区切り打ちとなったのはある意味想定内で、毎日が試されているような不思議な感覚。
これは夢ではなく日本の地であり、紛れもない現実世界。世の流れは、AIの台頭でますます便利になっていくが、人間にとってそれが果たして幸せなのだろうか。
便利が故に『ポチッ』とするだけで玄関までモノを運んでくれる時代は、普段の生活から何を奪ってしまったのだろうか。
『今の子に不足しているものは、不足している物』と、20年前に聞いた言葉だったが、それからどう変わっただろうか。
時代と逆行しているのに、どうして人は四国を歩こうとするのだろうか。お四国病とまで言われ、それに取り憑かれるものは何だろうか。
人間の本来の姿に戻って、汗をかき、自分の脚で歩き、食べて、飲んで、そして疲れて寝る。
本当は、人間はこうして単純なんだと思う。
心に残ることばに『万病に勝る、四国のへんろ道』とあり、とにかく歩いてみれば分かるのだろう。私はここ数年薬を飲まなくなって、病気をしなくなった。薬神話の蔓延るなかではなかなか難しいかも知れないが、動物は元々薬を飲まない。
へんろ歩きは、誰しも出来る訳ではなく本当に贅沢な時間。 お金を出してこんなに苦労をするのだから、 どんだけ~~~~、の世界だ。
結願しえないので本当の意味をまだ分かっていないし、そもそも私は遍路のことを偉そうに語る資格はない。
しかし、これまでの静かな感動を伝えるのならば、なんとなく人間が人間らしくなっていく気がする、と言うもの。偶然は必然といわれるように、かけがえのない出会いもあり心が落ち着いているのを感じる。
つまり、遍路は人間回復する最も近道ではないか、と。
縁もゆかりもない四国の地に、ましてや無宗教の自分を受け入れてくれた。
なぜ生きる
なぜ笑う
なぜ怒る
なぜ迷う
なぜ苦しむ
禅問答を続けて、家路に向かうフェリーに乗る。
フェリーに向かうバスの中で、遍路経験者のイギリス人がお接待といいバス代610円を出してくれた。小倉経由で熊本県の山鹿に向かうらしく、船を待つあいだお話タイムだった。
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そのイギリス人曰く、私がリタイアしたのは自分に会うためだと語る。
貴方に巡り会うためなのですか?
全てをポジティブに捉え、そして私を慰めているのだろう。その容姿はサンタさんそっくりで、ご自身で「サンタさん」と言うのだった。有難いことに、あれよあれよと家に着くまで私の周りに不思議と助けが現れている。
広い待合室でサンタさんみたいなイギリス人と話している、菅笠を持って脚を引きずった私は目立たない訳がない。
彼とは何語で話したかって❓
イギリス人だから英語!と言いたいけど、彼は日本語が堪能だった。
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すると「乗り場が遠いのを、知ってますか?」と、見知らぬ女性が声をかけてきた。
知っていると返事をすると「すごく遠いんですよ!」と、女性が言う。
この人、何だろう・・・
その疑問が不信感に変わる前に「荷物、重そうだから持ちますよ!」と再び。そして私は、初めて見る彼女のお世話になり船に乗るまでの300mほどの長い通路を渡っていた。途中、車椅子に乗せてくれ押してもらっていたのだ。
彼女に何度も、良いんですか?と言ったが、いつか自分も助けてもらうことがあるから・・・と、肝っ玉母さんみたいに応えるのだった。通路がこんなに長いなんて、すっかり忘れていたことに気付くのである。
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私の泊まる2等の大部屋までザックを運んできてくれ、布団まで敷いてくれたのだ。当初その親切を少し疑問に思い、構えた自分を思い出していた。申し訳ない。
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脚が完治した後に、再び四万十大橋の近くにある商店の自動販売機の隣にあるベンチからスタートして、八十八番まで歩こうと瀬戸内の海の上で誓うのだった。
その時は自分の肩に、少しは肉を付けて。
本日、21.472歩