空と海と、20日目
2019年5月15日
止まらないために、止まった 。
いつものように5時の目覚ましで起きると、体が昨日と確実に違った。
動物的な勘で、このままだと歩けなくなると察知する。脚が前にでない、いや出にくいのだ。
6時の出発に合わせて準備してもらっていたおにぎり弁当をフロントに取りに行き、連泊を申し出た。アメニティーの補充もタオル類の交換も不要だと言った。
今日は止まらないために止まるのだから、しっかり休もう・・・
リタイアするのは簡単だった。だけど此処まで来たのだから、やるだけのことはやりたい。
三十七番から三十八番は、85㎞と四国霊場で一番長い。距離だけ考えてウンザリすることもなく、1.400㎞の単なる一部と考えていた。
出発してから3週間が経ち、縁もゆかりもない四国を私はこうして歩いている。空も海も山も、それはそれは大きく人間がいかにちっぽけな存在なのかを感じる。
そうしてこの地方の人々の生活の一部を垣間見ている。全ては分からないにしても、部分的な一部分を切り取って見ているのだ。学生時代の恩師が、人間なんて良く生きて100年の小さな命だと言っていた。人生100年時代と言われて久しく、仮に100年生きたとして本当に自分の意思で行動できるのは、実際に半分くらいだと思う。
今、私は自分の意思で重いザックを背負い、毎日文句ばかり言いながらも自分の意思で歩いている。手も動き、脚も動き、目も見え、耳も聞こえ、言葉を発することもできる。これだけ海外の人が四国の地を歩くのだが、彼らは言葉も通じない異国なのにすごいと思う。
朝6時過ぎ、色々と考えを巡らせながら、大きなおにぎり3つ食べてお風呂に入り朝寝をするのであった。朝寝と言うよりは、疲労を補うために身体を休めるためのもの。
力士は5時から稽古をしてからの、ご飯➜昼寝との流れなので、私の朝寝は力士以上の『小原庄助さん』であった。そして午後2時まで、死んだように眠っていた。その後は起きたと言うよりも、寝返りを打つ体が痛くて目を覚ましていたのだ。
左側のお尻は依然として違和感が残るものの、昨日より少しマシになったのかな。水をたくさん飲んで、3時頃に再び湯に浸かる。
火照った脚をシャワーで冷やしては、湯に浸かるのを何度か繰り返す。それは理学療法士から教わったことで、傷ついた筋肉の修復を早める方法をとっていた。数日前に、このことをOちゃんに言うと「良いことを聞いた」と喜んでくれた。ということは、少なくとも医学関係の学部じゃないのね、Oちゃん。
今日は私が一日休むから、抜かされているなぁ。
どこかで会えるかも。
ここ高知県は、とにかく海・海・海のイメージで鰹の一本釣りが有名なのだが、県内面積の84%が森林らしく県産のヒノキを売り物にしている。自分が沿岸を歩いているので、ヒノキとは無縁だ。
そして宗田節は鰹の品質の良さからくるものらしい。道の駅には、大衆食堂にあるキッコーマン醤油と同じような空瓶に宗田節が入ったものが売られている。
瓶の中に醤油を入れると、見事にダシ醤油になるから素晴らしい!と心ときめくが、もちろん買わない。
午後5時にフロントに行くと、昨日ラーメンを食べたあの道の駅まで車で送迎できると言うではないか。お言葉に甘えた。道の駅では、半額になった冷めたタコ焼きを購入。お腹が空いているのに美味しくなかった。知って買ったのだから仕方がない。文句を言う方が悪いのだ。元々、惣菜などをあまり購入しないのだが、この度は文句は無用で食べないと。
レストランのきれいなお姉さんは、今日は髪を結んでいた。結ばない方が絶対に良いのになぁ・・・と、これも余計なお世話である。
今日は部屋の清掃も何も不要だといい連泊したけど、割引もないのは少し残念だった。500円くらい引いても良いと思うのだが、わがままなのだろうか。
寝る前に、また這うようにして浴場に行き体を温めた。
リフレッシュして、明日から再スタートだ。
高知県だけでも踏破できるのか。
それより先に行けるのか。
もちろん、行きたい! 行くのだ!
今日の貴重な休憩で、自分自身の心も身体もを整えるのであった。
本日、1.081歩
(この4倍以上歩いているが、iPhoneの記録から)