「彼氏どんな人?」

昔からこの質問が苦手だった。

まず、この質問をする相手が何を知りたいのか、質問の意図がわからない。聞きたいことがあるなら「何の仕事をしている人?」とか具体的に聞いてくれたらいいのに。しかも「どんな人」って、人物像を一言でまとめろということ? 咄嗟にそんなの難しすぎる。

だからいつも「優しい人」とか「こんなことしてくれる人」のような曖昧で部分的な答えになってしまう。これで相手の期待する答えになっているのかもわからない。

昔それを、会社の先輩に相談したことがある。その先輩は、私が辞書を好きなことを知っていたので「辞書で引いたときに書いてありそうなことを伝えるといいのでは」とアドバイスをくれた。

自分のパートナーを辞書で引いたときの基本情報。要は、スペックを答えるといい、ということだった。その方が、「優しい人」という回答よりも人物像を掴めるだろう、と。


昨日、会社の1年目の後輩と食事をした。

そのときに
「パートナーの方はどんな人ですか?」
と聞かれた。

私は「その質問苦手なんだよね〜」としょうもない自己弁護をしてから、過去に先輩に教わったとおりスペックを答えた。

「パートナーは、ひとつ年下の男性です。会社員です。出身は○○県です」

すると、後輩から返ってきた言葉は意外なものだった。
「なんにもわかりませんでした⋯優しいですか?」

なんだ、それでいいんだ、と思った。
嬉しかった。

私は「優しいです」と答えたあとに続けて、家事を率先してやってくれるしっかり者であることや、彼は細かい性格だから大雑把な自分はよく叱られることなどを付け加えた。後輩は、少し納得した顔をしてくれた。


先輩に教わったとおり、人物の説明をするときに基本情報はある方がわかりやすいと思う。1つ下なのか10個上なのか、商社勤務なのかフリーのデザイナーなのかで、想像する人物は全然違う。

しかし、相手のスペックだけではなく、性格面や「自分との関係性」が伝わる情報も期待されているのだろうな、と今さら理解した。「優しい人」というのも別に間違ってはいなかった。


会話って難しい。多くの人が当たり前にしているこんな些細な雑談が、歳を重ねても自分にはまだまだ難しい。だけど、会話の中で少しずつ学べて嬉しい。こんな自分と交流してくれる人達は本当に有り難い。

有り難い人達なのだから、「どう返すのが正解か」にあまり囚われずに、会話の相手を信じて気楽にやりとりを楽しめたらいいな、と思う。

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ゆかい
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