
ブラジルで黒魔術18(アヤワスカ体験談)
息子にかけられた「赤い糸の呪い」
気付いてからそれを解くまでの家族の物語。
自分用にメモしていたものを編集してます。
-
続き
しばらく彼女の悲しみを感じながら、わたしは泣き続けた。
寂しさ、心許なさ、自分ではどうすることも出来ない、誰かにすがりたい気持ち…
そのうちふと、これは彼女のお母さんもそうなのではないかと思った。
-
二人の嘘を巡って、わたしが彼女に強く言った後すぐ、彼女のお母さんから怒りのメールと電話が来た。
彼女は沢山の酷い言葉を使い、自分勝手な言い分を怒りで吐き散らして去っていったけど、
ポルトガル語で普段、そんな言葉を使わないわたしにはいまいちピンと来なくて…
ビックリはしたけど、感情的に動揺することはなかった。
でも少し思い当たることがあった。
彼女にも色々事情があって、そうゆう風にしか生きられなかった何かがあるんだろうなと勝手に思っていた。
-
彼女の悲しみがお母さんの悲しみになった。
子供時代に大人に酷いことをされた、傷つけられた、でも誰も助けてくれなかった、泣いても誰も自分に気付いてくれなかった、
大人は嘘つき、自分で自分を守らなければ生きていけなかった、絶望と諦め、回りは全て敵、世の中は悪意に満ちている、
(多分)赤い糸の黒魔術で繋ぎ止めている旦那さんが、本当に自分を愛してくれてるか今さら知りようもない、
一人で鎧に身を固め、黒魔術に頼って、自分(娘も含め)を傷つけるモノと闘っている…
そんな風に感じた。
-
お母さんが傷付き悲しんでいるから、そのお母さんを助けたいと生まれてきた彼女は、
お母さんのために自分を捧げ、自分自身を生きていなかった。
それはとても悲しいけれど、それは彼女の愛だとわたしは思った。
-
わたしは二人の気持ちを感じ続け、二人のために泣いた。泣きながら、二人を許し、二人が自由になることを願った。
どんなに他人に酷いことをされようと、その時の状況で傷つこうと、結局はどう感じ、どう生きるかを選ぶのは自分…
辛かった過去を否定する必要はない。
でもそこに縛られている以上、自分で自分を縛り付け、いつまでも本当の自分自身を生きることは出来ない。
苦しみ続けるのも結局は自分なんだ。
わたしは二人の悲しみ、痛み、理不尽な悔しさ、絶望、諦め、寂しさ、ホントは甘えたい、助けて欲しい、そんな心許なさを感じ切るまで泣き続けた。
どうせわたしなんて、誰も気付いてくれない、みんな嘘つき、誰も信じない…
そんな風に思いながら、
ただひたすら泣いていた。
-
ふと顔を上げたら、ヒカルドがこっちにやってきた。わたしの様子を見に来てくれたのだ。
儀式の前に、息子と黒魔術のことを相談していたので、気にかけてくれていたんだと思う。
ヒカルドに大丈夫だと合図した後、
わたしは彼女たちに話しかけた。
「ほら、一人ぼっちに思えてもわたしたちのことを心配して気にかけてくれてる人がいるよ」
その時たまたま誰もいなくて、気付いてもらえなかったとしても、必ず誰かがわたしたちのことを知っていてくれる。
悲しい気持ちを受け止めながらも、ここから抜け出すのは本人の意思でやるしかない。
「あなたたちには愛、幸せ、平和がふさわしい。あなたたちにはその価値がある( ポルトガル語でvocê merece )。
だから辛くて悔しいけど、悲しみも怨みも絶望も恐怖も全てここに置いて、次に行こう」
そうわたしは2人に話しかけた。
-
途中、息子の存在を感じた。
彼は愛そのもの、とてもピュアで、嘘偽りなく相手のために尽くし、自分を捧げた。
そんな彼に二人はしがみついていた。真実の愛に飢えていた。そうとは知らない息子は疑うこともなく、彼女たちに心からの愛を与えていた。
あ、だから彼なのか…
わたしは彼の中に愛そのものを感じて、
急に彼のことが愛しくなった。
朦朧としながら横を向くと本物の彼は割りとしっかりしていて、わたしの顔を見てニコっとした。
わたしは思わず両手で彼の頭を挟んで微笑み、そしてまた自分の世界に戻っていった。
続く