第一話:シノノメナギの恋煩い
とある収録スタジオ。
初めて訪れるテレビ局にわたしはとても緊張して手汗が止まらない。
そんなわたしのてにポン、と大きな手がのる。
「大丈夫やて、練習通りすりゃええわ」
安定の関西弁の彼のその載せた手も震えてる。
「わかってる……」
その関西弁につられてわたしの東濃弁はもともと関西弁に近いテイストだけどさらに関西弁ぽくなるけど彼が言うにはまだ違うらしい。
「すいません、本番ですー!」
呼ばれるスタッフさんたちの声。関西圏発の番組だから東京でも関西の人がいるのだろうか、関西弁が飛び交う。
「緊張するなぁ」
「さっきしないって言ってたじゃん」
「いきなりしてきたわ、梛は余裕やな」
「常田もやん」
「そうそ、そのままでええ。がんばろな」
と会話する間にスタッフさんにピンマイクをつけてもらって気付けば収録スタジオの前だ。
観客も入ってるから人の気配と声にドキドキ。
スタジオの看板
「新婚ちゃん、おいでやす」
と、老舗素人番組名見ると尚更緊張する。
そう、私たちはこの番組に出るのだ。子供の頃からテレビの前で見ていたこの番組に。
結婚したての素人カップルがタレントの司会者と対談し、面白おかしく2人の馴れ初めをテレビに晒す……そんなのに出るとは私は思っていなかった。
無理だって諦めていた。
だってこの番組は男女カップルがでるのだ。
『今日の新婚ちゃんは見た目は普通の夫婦、何ですけど……実はー』
と司会者の若い落語家が客を囃し立てる。
私たちは見た目は男女カップルなのだが、他のカップルとは違うカップルなのだ。
私は彼の手をぎゅっと握ったら彼も握り返してくれた。
そしてスタッフから声をかけられスタジオに入る。
これはわたしと彼がここにまで至る道のりのゴールいやスタートに立つまでの話である。
第二話に続く
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