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将来的な社会での成功や幸福度が高い非認知能力の獲得に貢献できる「そろばん」教育

公益社団法人全国珠算教育連盟(本部:京都府京都市/以下、全珠連)は、「令和のそろばん意識調査」の結果を、迎える中学受験シーズンを前に発表しました。

昨今、そろばんを始める子どもの低年齢化が進んでいます。また、現代の進学事情において、中学受験に有利な習い事に、計算力を鍛えるそろばんが注目されています。算数の配点の高さや、算数一科目入試の導入校の増加から、「算数を制する者が受験を制する」と言われています。このように昨今、珠算業界を取り巻く環境が、一昔前とは大きく変化しています。

研究集会の様子

そうしたなか今回、東京23区のそろばん教室に通う小学生以下の子どもを持つ親を対象に、そろばんに関するアンケート調査を実施。首都圏では近年、中学受験率が上昇しており、中学受験と珠算教育の関係性等を調査しています。

回答数は348人で、調査は当連盟東京都支部に所属するそろばん教室の協力を得て実施しています。調査期間は2024年4月9日(火)~6月21日(金)です。全珠連としてこうした取り組み(意識調査)は初めてで、状況を詳しく把握することで、今後のそろばん教育の普及等に役立てていきます。

4人に3人が「小学1年までにそろばん学習を開始」

そろばんを習い始めた時期は小学1年が最も多く、そろばんを習う子の43.7%を占めます。小学校入学前から始める子も多く、全体の31.6%に上ります。それらを合計すると、小学1年までに習い始めるのは、4人に3人(75.3%)という高い結果となりました。

1960年代は小学2年時に学習する九九を覚えてから習い出す子が多く、また現在も小学校では3年と4年時にそろばん授業があることから、中高学年で習い始めるイメージが強い一方で、実際は低年齢化が進んでいます。

そろばんを習う利点の一つが、計算能力の向上です。小さい頃から始めれば始めるほど、珠算式暗算(頭の中にそろばんを描いて計算する方法)が身につく傾向にあります。中学受験における珠算式暗算を習得するメリットの一つが、問題を解く時間に余裕が生まれることです。同受験に有利となるキーポイントと言えます。

その他には、脳の発達も利点として挙げられます。計算能力に加えて、集中力や忍耐力、判断力等を向上させる効果が期待できます。

中学受験を予定する約9割が「小学1年までにそろばんを開始」

調査は、子どもの「中学受験の予定」についても聞いており、「はい、その予定です」と回答した親(77人)に絞り、開始時期を集計したところ、88.3%が小学1年までに習い始めていることが分かりました。

「受験させるかどうかを検討しており、おそらく受けさせる方向で進んでいる」と回答した親(52人)を含めても、同じく87.6%が小学1年までにそろばんを始めさせています。中学受験への意識の高い親ほど、子どもが小さいうちからそろばん習わせていることが分かりました。

83%が「計算能力がつく」、約4割が「集中力がアップした」と回答

そろばんを習わせる理由は「計算能力の向上」が85.6%と最も高く、実際に習わせた結果「計算能力がついてきた」と回答した親も8割を超える良い結果(82.8%)となりました。

習わせる理由と習ったメリットで2番目に多いのは、ともに「集中力アップ」でした。そろばんの実力を試す検定試験や競技大会は、非常に高い集中力が求められます。問題に一心に向き合う経験と習慣づけが、実際の集中力アップという結果につながっていると考えられます。「手は第二の脳」と言われます。当連盟では「目で見て頭で考えて指先を動かすという一連の流れは、子どもの能力向上に重要」と考えています。

また、「中学受験に有利」という理由で、そろばんを習わせる親も12.1%と一定層いました。

算数が得意でない子ども、そろばんで成績アップ、日常生活にも好影響

そろばんを始めて「計算能力がついてきた(288人)」と回答した親で、「もともと算数の成績が良かった(66人)」子どもと無回答(11人)を除いた場合の、算数の成績などについても分析しました。

その結果、「算数がもともと得意でない子(211人)」の6割弱(56.9%)が「算数の成績が向上」してきており、さらにその8割強(80.6%)が「日常の買い物や会話、学校生活など、日々の生活で好影響を及ぼすようになった」と回答しました。

そろばんを習わせる親の56%が子どもの中学受験意向あり

実際に「中学受験をする予定」があるか聞いたところ、明確に「その予定」と回答したのは22.1%で、「おそらく受けさせる方向」を加えると37.1%が、その方針であることがわかりました。また「どうしようか検討しており、どちらにしようか迷っている」という層まで含めると、55.7%が受験意向を示しています。

東京都教育委員会(令和4年度公立学校統計調査報告書)によると、公立小学校から私立中学へ進学する割合は19.8%(過去10年の最高値)です。民間企業が行った、首都圏に住む親を対象にした中学受験等に関する調査(2022年10月発表)によると、「子どもの中学受験を考えているか、それとも高校受験を考えているか」に対して中学受験の意向は全体の21.1%でした。

こうしたデータと比較すると、そろばんを習わせる親の中学受験意識が相当高いことがわかります。

理系を希望する親が文系を希望する親の約6倍、興味を抱いてほしい分野2位にAI・人工知能

子どもの将来、「理系」か「文系」かに関する進学意向について、「どちらにも当てはまらない」も含めて聞きました。

「理系」と答えた親は全体の48.0%で、「文系」と答えた親の7.8%より40.2ポイント高い結果となりました。人数ベースでは理系167人に対して文系が27人と、6.2倍の差が開いています。

「文系」以外を選択した方を対象に、「将来、興味を抱いてほしいと期待する分野」を聞いたところ、「医薬系」が42.5%とずば抜けて高く、今話題のAI・人工知能をはるかに凌ぎました。

都内の中学受験率の上昇続く、「算数を制する者は中学受験を制する」

東京都の直近5年間の調査によると、10年間、都内の私立中学進学率は、上昇傾向にあることが分かります。2023年3月に東京都の公立小学校を卒業した9万8,518人のうち、都内の私立中学校に進学したのは1万9,521人で、昨年よりも496人増加しました。私立中学への進学率は19.8%となり、約5人に1人は中学受験をしている計算となります。

中学受験界隈では、「算数を制する者は中学受験を制する」と言われています。中学受験で算数が重要視される理由は、
<1>配点が高いため  <2>得点の差が付きやすいため です。

算数を受験科目に含まない中学校は稀であり、かつ多くの場合、社会と理科の配点に比べ、国語と算数の配点は高く設定されています。得点の差が付きやすいのは、算数は他の科目に比べて全体の問題数が少ないため、一問あたりの配点が大きいことに加え、大問ごとにそれぞれの問題に連動性があるためです。大問の最初の問題を落とすと、その他の問題を正解できる可能性も低下します。

近年は「算数一科目入試」を導入する学校が増えているほど、算数の得点が合否に与える影響は大きくなっています。また問題自体の難易度も上昇しています。与えられた問題を機械的に計算し、情報を処理させるだけでなく、論理的思考力を問う学校が増加しています。答えの数字を書かせるだけでなく、解を導いた経緯を説明させる問題はその一例です。複雑な問題に対応するには計算力という土台が欠かせません。

IT先進国スウェーデン、アナログ学習回帰の動き

IT先進国のスウェーデンでは近年、「脱デジタル=アナログ学習への回帰」の動きが出ています。ICT教育を大規模に推進してきた同国は、2006年から学習用端末の「1人1台」配備が広がり、教科書を含めデジタル教材への移行が進みました。

しかし経済協力開発機構(OECD)による2022年の国際学習度到達調査(PISA)では、「読解力」と「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の全てで、2018年の前回調査から順位を下げるなど、子どもの学力を測る国際調査で、成績の落ち込みが見られるようになりました。

OECDの調査における数学の授業に関するアンケートでは、「デジタル機器で、よく注意散漫になる」と答えた生徒は36.9%に上り、OECD平均より6.5ポイント高い結果となりました。

そうした状況を受けて、昨年(2023年)8月から始まった学期では、タブレットを使用したオンライン調査やキーボードの操作スキル獲得にかける時間を減らし、紙の本を静かに読む時間や手書きの練習にかける時間を増やしました。

そろばん根強い支持、「習わせて良かった」の実感値も高い傾向

そろばんに関しては、各所が調査データを発表しています。

例えば、東京大学と大手の教育研究所が行った調査(2023年)では、習い事をしている小学生のうち、そろばんを習っているのは全体の9%で、運動系を除いた習い事ランキングの4位との調査があります。

また民間会社の調査(2024年)によると、「子どもに習わせて良かった習い事」の4位にそろばんが入っています。運動系を除くと2位の順位で、広く支持されていることが分かります。

公益社団法人全国珠算教育連盟 研修学教委員長 前田珠樹 (まえだたまき)氏

全珠連が2024年11月20日(水)に行ったオンライン記者発表会において、研修学教委員長の前田珠樹氏は、「最近、非認知能力という能力が注目浴びています。学力検査など数値化できる認知能力に対して、数値化できない能力が非認知能力なわけですが、最近の研究ですと、この非認知能力が高いほど、将来的な社会での成功や幸福度が高いと言われています。具体的に、自分を高める意欲、我慢力、それから協調性、共感性、コミュニケーション能力など、人間力の拡大を図る能力です。

この非認知能力の獲得ですが、まさにそろばん学習が適していると思います。そろばんというのは自分のペースで達成感を味わうことができますし、それは自己肯定感に繋がります。検定試験や協議会、これはやる気意欲を高めますし、ときに味わう挫折感というのは、忍耐力や継続力に繋がっていきます。

それから、そろばん教室というのは、違う学年のお子様が同じ場所に集うという、学校とは違った特別な空間なわけです。画一的に偏ることのないコミュニケーション能力、それから上級生に対する尊敬ですとか、下の学年の子に対する思いやり、そういった社会性も共感性も育まれると思います。こうした様々な能力が、そろばん教育によって培われるのではないかと思います」と語りました。

このように、そろばん教育の重要性が認められる今、大切なお子さんの習い事のひとつとして、そろばんを検討してみてはいかがでしょうか。

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