20年越しの未練が終わりを告げた日。

光陰矢の如しとはよく言ったもので。
20年て、こんなに早く経ってしまうし
わたしにとって事実上、初恋と呼べる出来事からそんなに時間は過ぎていったのだなぁと驚いている。

わたしが初めて恋というものを、
それに通ずる感情を知るきっかけになった人と出会ったのは、わたしが15歳の時、何気なく文字でのやり取りで気があった、当時30代のお兄さん。
その人と出会ったのは、松本梨香さんの当時あった公式サイトが縁で、これまたその当時存在したJAM Projectのファンサイトのチャット機能がきっかけだったような気がする。
お互いに好きなアニメの話や梨香さんの話、色んな話をするうちに、ウマが合うねなんて言いながら、メッセンジャーと呼ばれる個別にチャットが出来るソフトでずっと話すようになっていって、もし良かったら電話しませんか?なんてことにもなり、いろんな話をし過ぎてビックリしてしまったことを覚えている。
もちろん、未成年と成人男性なのでマナー的な礼節はきちんとあって(最初の電話の時に親に変わってもらったが、信頼を勝ち得たほど)、わたしにとって頼れる優しいお兄さんで、1番信頼出来る人だった。
前述の通り、年齢差が17歳差であるが、決してやましい誘いを受けたり、変な風に唆されたりするようなことはなかったと、ただのネット友達の延長での間柄であったことをご本人の名誉の為に記しておく。

そんな信頼出来るお兄さんといろんなやり取りをしていくうちに、わたしは16歳、17歳…18歳と歳を重ねて、気がつけば19歳になった日に、お兄さんから告白を受けたのだ。
自分の年齢的にもこんな事を告げてしまい、すまないが、成人したら、将来を見据えたお付き合いをして欲しいと。
正直、それを聞いたとき、とうとう来たかと思ったのは今だから言える話。
わたしに対する接し方が恋人のそれであったから、薄々気がついていた。
……本当は二つ返事でOKしていたかもしれない。
お兄さんは、その時のわたしにとって兄であり親であり支えで、恋人になっても幸せをくれると、あげることが出来るとしっかり理解していたから。
けれど、わたしもまだ若く、片思いしていた人が別にいたり、別の人から告白されていたりと、ある意味青春真っ盛りであったから、答えづらかった。
というようなことで済めば良かったが、大きな大きな問題があった。
1つはお兄さんとわたし、2人の年代差が大きいということ。
わたしが19歳ということは、お兄さんは30代半ば
わたしが20歳代になれば、お兄さんは40代。
精神的にもずっと大人なお兄さんを支えることが出来るのか、不安だった。
2つ目は、わたしが先天性の身体障害者であること。
3つ目は、お兄さんが家業の跡取りであり、北の大地と呼ばれる地域に住んでいること。
わたしが障害者であることもそうだが、あまりに年代差が大きいことや。お兄さんの家業がライフラインに繋がる事柄であることも、お兄さんが後ろ指をさされることになるのではと悩んでしまい……
結局、わたしが悪態をわざとつく形で傷つけて、告白されていた人のところへ走ってしまい、二度と会えなくなってしまった。
その時の事を今でもはっきり覚えている。
お兄さんの事が好きだったから。

お兄さんにとっても、葛藤がありながらでも本気の恋だと思ってくれたのかもしれない。
だが、10代の小娘には、その想いを受け止めきれなかったのだ。

疎遠になってから、付き合った人が原因で精神的な病気になってしまい、正気の境目がなくなり、20代のすべてを薬を飲み、朝に眠り夜に起きるという生活に捧げてしまっていた。
その影響もあったからなのか、未練によるものかここ数十年は異性に対して不信になりだらしのない関係を続けたり、自己肯定感を全く持たず、自分を傷つける行動を繰り返していた。
さすがに年齢的にもそんな事を続けるのもみっともなく、苦しいし、関係性も綺麗に片付けてしまいたいと思っていた時、共通の友人から吉報かつ朗報が届いた。

お兄さんが結婚するよ、と。
気が付いたらわたしもお兄さんの歳に追いついていた。
ということはお兄さんは50歳代。
待ち続けた春だったのだろうと、愛する人に出会えたのだなと嬉しさで胸がいっぱいになって、報せを聞いた時に涙が止まらなかった。
と同時に20年間持ち続けていた未練が、やっと断ち切れると気が抜けた。

お兄さんは今、どうしているのだろうと片時も忘れたことはなく、立場上誰にもどうしているか尋ねることが出来ずに過ごしていた月日が終わるのだと。

お兄さんはわたしの事などもう覚えて居ないかもしれない。
恨んで憎んでいるかもしれない……。
自分が犯罪になることをせず済んだと思っているかもしれない。

だけどわたしにとっては、人生を揺るがすほどの初恋になったよと、ここに記すことにした。

幸せになってくれてありがとう、おめでとう。

次はわたしにも春が来るかな?