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ここにいたんだ、マエボン組
「ここにいたんだ」
宇宙飛行士の選抜試験。
閉鎖空間での生活を共に過ごした仲前を前に、ムッタは胸の中でこうつぶやいた。
漫画『宇宙兄弟』の中で、私が一番好きなシーンだ。同じ言語を話していても、話が通じ合う相手って、実はなかなか見つからない。たぶん、自分に対してマイノリティ感をもっている人は特に。
心から共感しあえて、一緒にいてただただ楽しい。そんな仲間に出会えたとき、人はきっとこう思うのだ。
ムッタにとって、それは初めての経験だった。
私は人生で2度経験した。
1度目は、大学院の研究室で。
2度目が、この前田デザイン室だ。
子どものころから周りと興味関心がズレていた私にとって、心から通じ合える仲間に会える機会はそうそうない。同じ分野に興味を持ち、共感し、様々な角度から意見を言ってくれる仲間に出会えることは奇跡に近いと思ってる。
「ただの変な子」だった私を「おもしろい仲間」に変えてくれた大学院での出会い。あの仲間といたときの「無敵感」と言ったら、半端なかった。
社会に出て10年。みんなそれぞれの仕事があり、家族ができたりで、かつてのようには会えなくなってしまったのだけど。
そして、前田デザイン室。
3期生の私にとって、マエボンは初めて参加する本格的なプロジェクトだ。
そこでは、2つの記事を執筆させてもらった。
1つ目は、漫画「宇宙兄弟」の担当編集者であり、株式会社コルク代表の佐渡島庸平さんへのインタビュー記事。
もらった言葉はすべてが重たく圧倒的な力を持っていて、手を加えることにかなりの神経を使った。最強編集者の言葉を編集する。そしてそれは、本人の目にも入る。最高に緊張して、最高にワクワクする作業だった。
そして2つ目が、前田デザイン室の「童心」を想像の中で具現化する「ビジュアル遊び企画」だ。
「スカートめくり専用の手袋が開発された」という体で作るフェイク記事。テーマがテーマなだけに、下品にならないようまじめに、かつリアルな内容にする必要があった。
人からみたら「何してんの」と思われるようなことを調べまくり、文章に落とし込んでいった。
どちらの記事にしても、行き詰ったら、みんなが本気で考えて、助けてくれる。書いた文章に、反応してくれる。そしてまた、磨き上げて行く。
私はその時の高揚感と安心感を、すでに知っていた。まるで、心から満たされていた大学院時代の私だった。
「ここにも、いたんだ」
社会に出て、子どもを生んで、どこか諦めていた。でも今、私は何かを取り戻したんだと思う。こんなにワクワクが止まらないんだから。
***
人の脳はどんな時に幸福感を覚えるか。それは、心の深い部分で共感できる相手と出会った時だ。その幸福感があると、人は安心して前進しつづけることができる。
大好きな仲間と共に、ムッタは宇宙飛行士になった。そして、今、月面に立っている。
私もいつか、金ピカに輝く場所に届いたら。
そこから世界を眺めてみたい。