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終わりに立ち、歩き出す

少年、ニコライは幼い頃から貧しかった。父は早くに亡くなり、病弱な母と小さな妹を支えるために、彼は学ぶ時間も惜しんで働いた。学校へ行けずとも、努力すれば道は開けると信じていた。だからこそ、彼は血のにじむような我慢を重ね、お金を貯めることだけを人生の目標にした。

神を信じ、毎日祈った。 「どうか、この手に富を。母を、妹を救えるだけのお金をください」

それでも運命は残酷だった。

貯めていたわずかな蓄えは、母の入院費に消えた。妹も体調を崩し、さらに医療費がかさむ。働いても働いても追いつかず、雇い主の都合で職を失うこともあった。

それでもニコライは信じ続けた。 「耐えれば、努力すれば、必ず報われるはずだ」

しかし——

ある日、すべてが崩れ去る出来事が起こった。 母が亡くなり、妹は遠い国にいる親戚に引き取られた。働いていた店は突然の閉店。彼には何も残らなかった。希望も、未来も、すべてをかけた努力さえも、虚しく消えた。

「神も仏もいないんだな……」

燃え尽きたように座り込むニコライ。心が砕けたようだった。

どれほどの時間が経ったか、ふと顔を上げると、目の前には一枚の古びた扉があった。今まで気にしたこともない、街角の薄汚れた小さな扉。

何気なく手をかけると、軽い音を立てて開いた。

そこは小さな工房だった。 「おや、どうした?」 店主の老人が声をかける。

ニコライは力なく微笑んだ。 「ぼくは。ぼくは……何もなくなりました」

老人は何も言わなかった。ただ、すべてを悟ったようなまなざしでニコライを見つめ、その表情には深い理解と温かさが滲んでいた。

ニコライはその日から、工房で手伝いをするようになった。初めは道具の名前も知らず、ぎこちない手つきだったが、少しずつ仕事を覚えていった。そして、木を削り、形を作り、何かを生み出す感覚に、次第に胸が高鳴るようになった。

ある日、ニコライはふとつぶやいた。 「こんなに楽しいことがあったなんて……知らなかった……」

老人は笑った。 「お金のためにだけ生きてきたんだろう?」

ニコライはハッとした。 「……そうです。ずっと、お金がすべてだと思っていました。家族を守るために、それしかないって……でも、違ったんですね。自分の手で何かを生み出すことが、こんなに楽しくて、生きる力になるなんて……」

涙があふれた。

「やっと……本当に神様に感謝できる日が来たのかもしれません。

神よ、私はこの経験全部もってあなたのところへいずれ戻ります。神よ、あなたのもとへいずれ…。その日までどんなことがあろうと私は生きる。」

ニコライは、すべてがハッピーエンドではないことを理解していた。母を失い、妹とも離れた。しかし、それでも生きる意味を見つけたのだ。

彼は静かに呟いた。 「勉強じゃ知りえない、本当の学びを私は得えたのだ。本当の価値あるものを……」

そして気づいたのだ。 彼が今まで開けようとしていたのは、一つの扉にすぎなかったことを。

世界には、無数の扉があるのだと。

終わりに見えるものほど、時に最も大切な始まりとなることがある。


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ゆか
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