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善意ではいられない「ふるさと納税」の商才

 資産運用やポイ活と並ぶ節税の代名詞となっている「ふるさと納税」(厳密には税金自体は減らないので節税でもないが)。豪華な返礼品や、ワンストップ特例という、確定申告不要な手続きの手軽さから利用している人も多いだろう。2008年から始まった制度で、元々は生まれ育ったふるさとでも、働き手になった際の自治体が異なればふるさとに税金を納めることが出来ない、という悩みの解決策だった。

 2023年10月の返礼品ルール厳格化に続き、2025年10月からは、仲介サイトで付与される「ポイント」にも規制がかかる。本来の制度から過熱しすぎた印象だったので、個人的には賛成したい。
 ふるさと納税の策定前に、寄付金控除を利用していた人はどのくらいいるんだろう。コンビニ横の得体のしれない募金に入れるくらいなら、寄付金控除の出る国や市町村が認定した団体にした方が有益な気がする。それが、「物がもらえる」のが前提になってしまったことで、ユーザーの囲い込みが過激になってしまった。
 ふるさと納税を活かした良い一面もある。熊本地震では、いち早く寄付金控除としての募金受付が始まり、利用も経験のあるサイトからだと協力しやすい。こうした災害の支援金の新しいルート構築となった。

 私自身は都内で生まれ育ち、一般的な「田舎の祖父母の家」のような場所もなったので、ふるさとと呼べる場所がない。小学校などで夏休み明けにクラスメイトが話している「田舎のばーちゃんちで田植えを手伝った」話に、かなり憧れていた。
 ふるさと納税の返礼品に入っていた観光パンフレットに惹かれて、何度か寄付を行った場所に行ってみたことがある。目的は全く別のことだったけれど、自分の意志でお金を払った場所は少しだけ親近感を抱いた。
 返礼品を通して、その地域のことを知るきっかけになるのはうれしい。

 行政は、儲けることを考えなくてよい。だからこそ、儲けたい誰かに都合よく扱われてしまう。自治体の運用にはお金が必要で、「税金」という義務になっているものだからこそ、市場原理という商才相手でも揺るがない制度設計が必要になってくる。

 私は私の意志で、今年はどこのふるさとに納税しようかな。

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