『こないだの1人散歩』
知らない街で降りたくて、板橋で降りてみた。
代々木公園は、どうしても「ハッピー」だなんてぼくには言えなくて、ざわざわしちゃって、だからひとりで歩くことにした。ハーフカメラを片手に持って、スマホはカバンの中にしまって。
何も知らない街で、何故かこっちだ、と思って進んだ道にはぽつんとコーヒースタンドがあって、そこにはとても素敵な、ぼくが仲良くなったらさぞ楽しいだろうなと思うような店主がきゅるっとした目で佇んでいた。
いつもは通りがかりでたまたま買うなんてことは少ないのだが、なぜか気づいたときにはお財布を探していた。予定調和ではない出会いに惹かれたのだろう。
店主はコーヒーを淹れながら、
「ここ実は火曜日にオープンしたんです、この間の」
すごく嬉しそうな顔をされていて、冒険した自分をとても褒めた。
店主はなんと同郷な上に、実家がカメラ屋さんでぼくの持っているハーフカメラのファインダーを覗きながら懐かしみ、胸が高鳴ると話した。
小説なら、運命の出会いできっとその方は主人公と最高の友愛を築き、家族のような関係になるのだろう。きっと、恋愛に回収されずに友愛を深めて家族になる、そんな感じがした。
ちなみにぼくだったら恋人になってほしいなと思うかもしれないが、夫がいるとのことで血迷って素敵な方の生活を壊さぬよう、ときめきは心にしまっておいた。
また、何かの機会に寄りたいと思うが、その時はただの必然なのでこんなトキメキはないのだろうな。
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#小説 #ほとんどフィクション #お店は本当 #運命 #必然 #コーヒー
#板橋 #お店の名前が思い出せない #コーヒースタンド
#素敵だから応援してます
epilogue
店主はぼくの帰りぎわ、ヘッダー画像のプライドブーツを「玉虫色なんですね、かわいい、とっても素敵です」と褒めてくださった。ぼくは玉虫色という語彙がある貴方が素敵だと思った。