喫茶店のマスターと私たちの十数年
昨日は、真冬にぽこん、とやってきたなんだかあたたかい一日で、長めの外出のお仕事があったから、ありがたい日でした。
立っている時間が長かったから一休したかったし、オフィスのコーヒーが切れそうだったから豆を買い足したかったしで、最寄駅についてふらりといつもの喫茶店へ。
いつも午後は混んでいるお店だけど、17時もまわると静かな空気が流れていて、常連さんらしきお客さまがカウンターに一人。マスターと楽しそうに話し込んでいて、なんだか素敵な時間だなとしみじみ。
この喫茶店、オフィスのある街で44年間、営業を続けているそうです。
「恵比寿新聞」という地元に密着したメディアがありましてね。私はとても好きなのですが、こちらに染み入るような記事があるのです。
私は、この喫茶店に通うようになって12、3年は経ちます。
でも、マスターの名前をこの記事で知りました…。
お名前が素敵すぎて、今度呼びかけてみようと思います。どきどき。
長い間通っているのに、お名前すら聞いたことがない。
我ながら、コミュニケーション力が高いとか高そうとか言われがちなのですが、プライベートでは大変な引っ込み思案なのです。
元はと言えば、大人になってからこの街に家族で越してきて暮らしていた私のビジネスパートナーがきっかけでこのお店に通うようになりました。
この街では、めちゃめちゃ有名な喫茶店ですから。
コーヒーが好きだし、カフェや純喫茶が大好き。
そんな人がハマらないわけがないお店です。
ボランティアで某演劇系ファンクラブスタッフをしていた私とビジネスパートナーは、勤めている会社を辞めて自分たちで会社をつくろうと決めてから、より頻繁にこちらに通うようになりました。
会社をつくるとなると、資本金はどうするのかとか登記はどこにするのかとか社名はどうするのかとか、決めること・考えることがたくさんです。
私たちは決まってこのお店に集まり、ああだこうだとやるようになりました。美味しいコーヒーがあると、捗りますからね。
退職して、会社を登記したのもこの街。一旦、オフィスは借りず、ビジネスパートナーが実家近くで暮らしているマンションに登記をしたのです。
退職前の有給消化期間だったか…、やたらに平日の日中にも出没するようになった私たちに、ある日、マスターが声をかけてくれました。
「いつも二人でいるね。平日だけどお仕事はどうしたの?」
そんな感じだったように思います。
それぞれ会社を辞めて、自分たちで会社をつくることを話したら、自分もサラリーマン無理だったんだよ、なんて話をしてくれました。
そこから少しずつ、お店に余裕がある時はお話しするようになりました。何せ、お互いそんなに積極的なタイプでもなかったので、ちょっとずつ、ちょっとずつです。
いつも二人だった私たちの会社に、アルバイトさんが誕生したときには、もちろん三人で行きました。
その後も働いてくれる人が生まれたときには、社員も業務委託の人も、必ずといっていいほど、一度はこのお店に一緒に行きます。
なんだか、ずっと私たちを見守ってくれているようなマスターに報告したかったんですよね。
ある年末、お店を出ようとしたら、マスターから包みを渡されました。築地で買ったという鮭だったと思います。玉子焼きだった年末もあったな。
大変質の良い、これが日本の年末ですよという上等なもの。
さすがマスターだと思ったし、心遣いにうるっときました。
それからも、折に触れてちょっとしたお菓子やなんかを、さりげなく、すっと渡してくれるんです。
いつも本当にセンスがよくて、生活を彩ってくれるようなものたちばかり。
あちこち旅に出かけることが多い私とビジネスパートナーは、どこかに行く度に、マスターはどんなものだったら喜んでくれるかな、ちょっとこれいいなって思ってもらえるものを持って行きたいねと、考えるようになりました。
交流を通して、マスターが磨いてきたものを少しずつ教えてもらっているような、そんな時間を過ごしてます。
通い続けているから、マスターの相方さんが変わったり、スタッフさんも何代か入れ替わったりしているのも見ています。
でもいつも、ここで働く人はどこか控えめで、あったかい人なんですよね。
みんな大好き。
オフィスのコーヒーも当然、こちらで豆を挽いてもらっています。このコーヒーがないと、いまいち踏ん張れないんですよね。
弊社にいらっしゃったら、よかったら飲んでいってくださいね。
そして、わが街へいらっしゃることあれば、コーヒー好きの方でしたらぜひヴェルデへ!
時代の流れで禁煙になりましたし、PCも開けませんが、極上の濃い茶色の空間です。
そういえば、タバコの煙がとても苦手なのに、不思議とタバコが吸える時代からこのお店に通っているんですよね。
そこ我慢してもいいくらい、あの空間が好きなんだよなーと。
恵比寿駅の西口側、駒沢通り沿いの朝の時間帯には、あまりにもまっすぐなコーヒーの焙煎香が今日も漂っています。
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Yuka Shibayama
会社を経営したり、書いたり、秘書をしたりしているワーママです。