「ソンジェ背負って走れ」考察:ソンジェはなぜ”極端な選択”をしたのか
※ネタバレあります。視聴済みの方のみ読んでください。
U-NEXTで配信中の「ソンジェ背負って走れ」。
アメリカ・カナダ・フランス・イギリスをはじめ世界109カ国で6週連続1位を獲得!5月28日に本国(韓国)で最終回を迎えた後も人気は衰えず、視聴者を延々と沼に引きずり込んで現実に戻してくれません。(私もどっぷり沼に浸かっている一人)
ソルを演じるキム・へユン姫の演技力が素晴らしいのはもちろん、ソンジェ役を射止めたピョン・ウソクの初々しさとピュアな眼差し、「リアルに付き合ってるんじゃ…?」と思わせてくれる二人の最高のケミなどドラマの魅力を語り始めたらキリがない!
ベースはキラキラ眩しい王道青春ラブコメでありながら、最後までどうなるかわからないミステリー要素もあり、さらには「推し」を救う という今の時代を象徴するピュアで尊い感情が掛け合わされていてーーもうこの時点で勝ち確定!の企画なんですが、話が進むにつれて練りに練られた神業レベルの脚本に驚愕させられっぱなしでした。
ところで今回「暇なのか?」と何度も自分に突っ込みながら5,000字オーバーのソンジェ考察記事を書いてしまったのはw 一点、どーーーーしても釈然としない部分があったからです。
冒頭でソンジェが“極端な選択”をしてしまう部分ーーここだけがどうも引っかかる。
アンチによる誹謗中傷?ソルに対しての後悔や未練?ソルが自分を忘れてしまっていたことへの絶望?
そのすべてが理由かもしれないけど、でもそれほど好きだった女性と再会した直後に「今日を生きて欲しい」という言葉を贈った張本人が自ら死を選ぶだろうか。
ここがどうしても腑に落ちなくて、ぐるぐるぐるぐる考えに考えた結果、ある仮説に辿り着いたのです。
仮説:ソンジェが先に3回タイムスリップしていた!
何度も何度も見返す中で私が辿り着いた仮説はこうです。
【ソンジェの方が先に、ソルを救うため3回タイムスリップしていた】
よく考えてみれば「過去を変えたい」と最初に強く願ったのはソンジェのはずです。ソンジェは19歳の時点でソルのことが好きで、先に不幸に見舞われるのはソルなのだから。
14話の、自宅のベッドで悪夢にうなされるソンジェを思い出して欲しいんです。この悪夢の中で、ソンジェは海に沈んでいくソル(高校の制服を着ている)を見失っていましたよね。
ーーこのドラマ、ところどころでデジャブやフラッシュバックが登場しますが、それらはすべて過去の記憶の断片として描かれています。
てことは、この悪夢が意味するところはつまり、ソルを助けられなかった過去があった、という風に考えられませんか。
実は最初(ソルもソンジェもタイムスリップする前)の人生では、2008年の事故でソルは命を落としていたのでは?
腕時計はソル・ソンジェのどちらかの死後に力を宿すのだとしたら?
助けられなかった強い後悔からまずはソンジェがタイムスリップしたんじゃない?
こじつけのように思われるかもしれないけど、こう考えると色々辻褄が合っうのです。
漢江の橋で車椅子に乗ったソルを見つけたソンジェが妙に落ち着いていたことも(まるでそこにいることがわかっていたかのよう)、デビュー直後のソンジェがソルの電話番号を知っていたのも、薬漬けになるほど精神的に参っていたことも、「引退しても後悔しない」と言い切っていたことも。
しかもこの時点で、もうソンジェの手元に時計がない=過去を変える術がありません。
さらに言うなら、3回タイムスリップする中で、ソンジェはこの日自分が死ぬ運命にあることも知っていた可能性が高いです。ホテルの部屋のチャイムを鳴らしたのは確実にキムヨンス。ソルの命を助けた際に揉み合いになって完全に顔を見られているのでヨンスは報復に来るし、どちらにせよ自分の命がここまでだと知っていたのではないかな。
ソンジェは自殺してない、ヨンスに殺されたんだという見方もできなくないですが、部屋が荒れていない・外傷ないことを考えると、少なくとも争っていないですよね。ヨンスの犯行はすべて突発的で計画性はないから完全犯罪という説は考えにくいし、仮に自殺でなかったとしても「諦めた」と考えるのが自然な気がします。
しかしそれも、3度のタイムスリップで過去を書き換えたにもかかわらず結局ソルを守れず、さらにはソルの記憶から自分が消えてしまっていて、まもなくヨンスが報復に来るとわかっていたとしたならーー腑に落ちます。
ただソンジェにとって予想外というか奇跡だったのは、失くしたはずの腕時計を熱烈ファンのソルが300万ウォンでゲットしていたことですよね。
ソルの事故を防げず記憶からも忘れ去られてしまったけれども、ソルを想って作った「夕立」で歌手デビューし、ソンジェはずっとソルにメッセージを送り続けていたんだと思う。そしてあの日、望みをかけるようにしてラジオから語りかけた言葉がソルに響き、ソルがソンジェの熱烈ファンになったからこそ腕時計がソルの手元にあったーーそう考えたら、ソンジェのしてきたことも無駄じゃなかったんですね。(泣ける)
そしてこの奇跡によって、今度はソルがソンジェを救うためのタイムスリップがスタートするわけです。
ソンジェ1回目のタイムスリップ ?(2008年8月某日:チュヤン貯水池)
私が「これって、未来ソンジェ?」と感じた最初のシーンは、酔っぱらいに絡まれてチュヤン貯水池に落ちてしまったソルを助けに来たところです。
ソルを助けようと水中に飛び込んだソンジェの腕時計が光っているんですよ!
前提として、この日は9月1日(事故の日)ではありません。それより前、8月某日です。
ソルはテソンの誕生日祝いをしている最中にソンジェがオーディションに行ったと知り、歌手の道を阻止しようとオーディション会場に駆けつけた帰りのバスで寝過ごしてチュヤン一里のバス停に降り立っています。ソルは学校帰りではないので私服です。
……あれ、待って?ソルのフラッシュバックでもソンジェの記憶でも、池に落ちるソルはいつも制服を着ていませんでした?
ということは、酔っ払いに絡まれて池に落ちたのは、ソル2回目タイムスリップ時の変更点だと考えられます。
実際、酔っ払いが現れたせいで、キムヨンスと思われる一台のタクシーが方向転換して去る描写がありました。そして後日、チュヤン貯水池でこの日に何者かが(ソルの代わりに…?)殺されていたことが発覚しますよね。
これって、元々(ソルもソンジェもタイムスリップする前)の人生では、ソルは9月1日よりも前に、チュヤン貯水池でヨンスの犠牲になっていたという暗示に捉えられませんか。
そしてその瞬間、腕時計が光ったとしたら……?
ソンジェはソルを救おうと、絶対にタイムスリップしたはずです。
ソンジェ2度目のタイムスリップ? (2009年5月:丹浦里の崖)
上記の通り過去を変えて、これで事故防げた!一安心!と思ったのに……なんと15年後、2023年にキムヨンスがソンジェを襲う事件が発生。
(しかもようやく気持ちを確かめ合った直後に……涙)
この時のニュースをよく聞くと「キムヨンスは2009年に殺人事件を起こして服役していた」「2009年5月に自身の犯行を目撃し逮捕に協力したソンジェに恨みを持ち、出所後に報復した」と言っています。
ソルがキム刑事にお願いして見せてもらった調書によると、(ソルが2度目のタイムスリップを終えて未来に戻った後の)2009年5月10日、ソルは再び自宅前でヨンスに誘拐され廃墟ビルに連れ込まれたところを機転を効かせたソンジェに助けられている、ということがわかりました。
なるほど、そうだったのね…..。でもちょっと待って、2009年の殺人事件って何だ?
5月10日にソンジェがソルを助けてヨンスの逮捕に協力した。でもこの日、ソルは殺されていない。殺人事件ではありません。
けれどもヨンスは殺人罪で服役したーーということは、ヨンスは5月10日より前(直前)にどこかで殺人事件を起こしていたということになりますよね。
ーーここで思い出されるのが、ソル3度目のタイムスリップ時、2009年5月7日早朝に起きた丹浦里の崖の悲劇です。
ソルのフラッシュバックでは、キムヨンスに追われて崖っぷちに立たされているところに、ソンジェが走ってくる……というシーンが描かれていました。(ちなみにこのフラッシュバックシーンでも、ソルはイニシャルSのネックレスをつけています!)
これはつまり、ソルは2009年5月7日の早朝、ヨンスに殺された過去があるという示唆ではないでしょうか。
そうだとしたら、ここでもソンジェはタイムスリップしたはずです。過去を変えるため、2度目のタイムスリップをしたに違いない。
結果、ソルはソンジェのおかげで2009年5月7日に命を落とさず済みました。しかしおそらく同日(ソルの代わりに)他の誰かが犠牲になっているーーそれが、ヨンスが起こした2009年の殺人事件です。
(チュヤン貯水池でソルがソンジェに救われた日も、別の誰かがヨンスに殺されてしまっていたのと同じように)
ただこの過去の改変が2009年5月10日の誘拐、そして2023年の報復に繋がってしまうし、しかも助けてもらった20歳ソルは「あなたを見ると事件を思い出して怖い」「だから会いたくない」と言ってソンジェを突き放してしまうわけですが……。(可哀想すぎる)
そして、この過去改変をきっかけとするヨンスのソンジェに対する報復を避けようとしたソル3度目のタイムスリップは、ソンジェの死という最悪の結末を迎えてしまいます。
このシーンは本当に辛かった……けれど、一歩引いて俯瞰で見てみると、ソンジェはソルを救うことで本来は巻き込まれずに済んだ人を2人もヨンスの被害者にしてしまっているので、ここでソンジェが犠牲を払うのはバランスのとれた脚本だよなと冷静に思ったりもしました。
「ソルを助けて死ぬなら、俺は平気だ。死んでもいい」
「結末がわかっていても選ぶことがある。気持ちには抗えない」
ソンジェタイムスリップ説を前提にすると、ソンジェの言ったこのセリフがより一層愛情深く感じられてグッときます。
ソンジェ3度目のタイムスリップ? (2008年9月1日:再びチュヤン貯水池)
ソンジェ3度目のタイムスリップは、1話冒頭のとおり幸せな結末にはなりませんでした。
考えてみたらソル3回目のタイムスリップも悲劇に終わっていて、なんていうか、過去を変えるなんてことはそう簡単に(って、ぜんぜん簡単じゃないけどさ)できないのだと言われているようです。
言わずもがな、ソンジェ3度目のタイムスリップはXデーである2008年9月1日前後であったはず。
私がソンジェタイムスリップ説を推す大きな理由の一つ、注目すべき箇所が7話冒頭にあります。
ソンジェがバスで寝過ごしているソルを見守っているシーンです。
この時、インヒョクから電話で「今日こそ話しかけろ」と言われていることから、ソンジェは9月1日よりも前からソルの後をつけていたことがわかります。元々(ソンジェがソルを救う前)のXデーは8月某日だったから、その付近から警戒してソルを見守っていたんでしょうね。
チュヤン一里のバス停が近づく前に「そろそろ起こす」と言っていることからも、この日、9月1日以外はソルがチュヤン貯水池に近づかないよう阻止していたはずなんですよ。なのにこの日だけ筆箱を落としてソルを見失った。
それでも元々のXデーは過ぎているわけだし大丈夫だよなと言い聞かせつつ、不安で雨の中ソルを探すソンジェ、ヨンスに追われているソルを見つけて駆けつけるソンジェ、水中から助け出し「ソルごめん」と泣いて謝るソンジェーー。
ソルを守りたくて3度目のタイムスリップしたはずが、筆箱を落としたせいで事故を避けられず、両足の感覚を無くしたソルから罵声を浴びせられてしまう。こんな結末、後悔しか残りませんよね。
「死なせればいいのに、どうしてこんな目に遭わせるの!」と叫ぶソルの残酷さよ……。
病室の外で泣き崩れるソンジェは、壊れた腕時計を握りしめていました。ヨンスと揉み合いになって草むらに落ちたはずなのに、わざわざ探して拾ったんだな……という点も、ソンジェがこの腕時計の力に気づいていた=ソンジェタイムスリップ説を裏付けている気がします。
ところで最後に残る謎は、ソンジェがいつの時点で、なぜ3度目のタイムスリップを決行したのか、ですよね。
なぜもう一度、2008年に戻る必要があったのか?
その理由は、おそらくソルと同じーーキムヨンスとの悪縁を最初から断ち切ろうとしたのではないかと推測します。
どこまでもしつこい(なんであんなにしつこいの?)ヨンスが2023年に出所し、また何かの形でソルを狙ったのではないかと。もうこれは「最初」から変えなくてはーーそう思って2008年に戻り、ソルとヨンスが出会わなくて済むよう見守っていたのではないかな。結果、失敗に終わってしまったけれど……。
「変えられない運命があるとすれば、ソルを愛することだ」
「人はどうせいつか死ぬ。だったら、死ぬ運命であっても愛する人と一緒の時間を過ごしたい」ーーソンジェには、ソルと出会わないという選択肢はなかったんですよね。
一方、ソルは4度目のタイムスリップで「最初から出会わないこと」を選択しました。ーー「たとえ自分を忘れてしまっても、愛する人に長く生きて欲しい」から。
深く相手を想うがゆえにすれ違う二人。でも互いの深い愛が時空を超えて運命を変えたわけです……!
これほどまでに美しい愛の物語がかつてあったでしょうか?作品に携わったすべての関係者に感謝を叫びたいです(笑)。
わお、気づいたらもう5,900字に到達しそうです。長文を最後まで読んでくださりありがとうございました。
ここまでつらつら綴ってきたソンジェタイムスリップ説はただの私の仮説です。正解は知らないし、ドラマ描写と食い違っている点や認識の相違があるかもしれません。ご容赦ください。
「そうだったらより一層ロマンチックだよね」くらいの気持ちで楽しんで読んでもらえたら嬉しいです^^