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相槌には9つの機能があるというお話。
会話する中で何気なくしている相槌って、どんな機能があるか、知っていますか?
「うんうん」
「へえー」
「なるほど」
「あー」
「ほう」
大学院のとある授業で、相槌のバリエーションをたくさん持っている人に出会って、「こんなに相槌ってあるのか」と驚いたと同時に、「相槌ってどんな機能があるんだろう?」と気になって、調べてみました。
今回は相槌の機能についてまとめていきたいと思います。
参考文献
論文名:大学教育におけるコーチングと言語学の接点を考える「あいづち」を例にして/饒平名尚子さん
相槌の定義
そもそも相槌は下記のように定義されているそうです。
メイナード(1993, p.58)
発話順番の状況に関わってあいづちは考えられる必要があるとし、「話し手が発話権を行使している間に聞き手が送る短い表現(非言語行動を含む)」と定義した。
堀口(1997:42)
あいづちをもう少し広義にとらえ、「話し手が発話権を行使している間に、聞き手が話し手から送られた情報を共有したことを伝える表現」としている。
シンプルにまとめると、話している人に対して聞き手が反応する表現、と言えるかもしれません。
相槌の9つの機能
Schegloff(1982)、メイナード(1993)などによって指摘されたあいづちの機能をまとめると次のようなものがあげられます。
①「続けて」の合図
現在の話し手がそのまま話し続けるべきだという合図。話が続行中であると聞き手が理解している合図。ただし、聞き手が話し手に賛成している、とか話の内容を理解しているという意味とは限らない。
②話を修復(repair)する機会を受け流す(英語のuh-huh,日本語の「うん」など)聞き取れなかった、理解できなかったという部分は特になく、とりあえずは話を修復するつもりはない、という合図。
③情報の追加・訂正の要求 (英語のuh…you mean,日本語の「えっ?」など)
聞き取れなかった部分や間違っていたと思う部分があったことを相手に伝える合図。
④話がスムーズにいっているか、モニターする
⑤会話への関心の合図
⑥聞いているよという合図
⑦聞き手が話し手の発言の終わり部分がどこであると理解しているかを示す
⑧相手の意見、考え方に賛成の意思表示
⑨感情を強く出す表現
これを見ると、相槌には本当に多くの機能があることがわかります。私はこの論文を読むまでは、「⑤会話への関心の合図」「⑥聞いているよという合図」くらいしか想像していなかったので、こんなに多くの機能があるのか、と驚いたのが正直な所でした。
関連する理論
相手の話への関心を示す合図、聴いているよという合図、そして肯定的に聴こうとしている態度の表明として、あいづちが用いられるとき、あいづちはポライトネス(人間関係を円滑にするための言語ストラテジー)とも深く関わると言われています。
ポライトネス理論:Brown & Levinson (1987)
「フェイス」という概念を鍵概念としている。
ポジティブ・フェイス (positive face):他者に理解されたい、好かれたい、賞賛されたいという「プラス方向への欲求」
ネガティブ・フェイス (negative face):賞賛されないまでも、少なくとも、他者に邪魔されたり、立ち入られたくないという「マイナス方向に関わる欲求」ここで言う「ネガティブ」は、決して「否定的な」という意味ではなく、欲求の方向くらいに捉えておくのが妥当。
つまり、他者に「近づきたい欲求」が、ポジティブ・フェイスで、他者と「距離を置きたい欲求、進入されたくない欲求」が、ネガティブ・フェイスといえます。
コーチングにおけるあいづちの位置づけ
この論文が、「コーチング」という視点も含んでいるので、最後にコーチングにおけるあいづちの位置付けを整理しようと思います。
コーチングの代表的な 7 つのスキルとして聞く、ペーシング、質問、アクノレッジメント、フィードバック、提案、要望をあげていますが、「聞く(傾聴)」スキルの項目に、聞くためのポイントとして「『聞いている』というサインを送る:タイミングのよい相づちやうなずき、また、表情や目線で相手を安心させることで、より多くの情報を共有することができる」と述べていいます。(コーチエイ(2009,p,141))
この相槌が、コーチングにおいて実務的にどう活きるかを整理したのが、下記となります。
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相槌が対等な関係になりうる、という実務的インプリケーションは、なるほどなと思いました。確かに、面接で全く相槌打たない面接官をたまに見かけますが、あの態度って対等とは言えないですよね。(そういう態度でも堂々としていられるかを見ているのかもしれないですが…..)
相槌を適切なタイミングで打つことは、「あなたのことを大切に思っていますよ」というサインにもなる、というのが私の学びでした。
これからも相槌はバリエーションを意識しながら、大切にしていきたいコミュニケーションです。