垂直型リーダーシップが共有リーダーシップに及ぼす影響について
組織や企業は、この数十年間の間にかなり変化しています。これまではトップダウン型やヒエラルキー型の組織で、指示命令系統のコミュニケーションだったものが、ティール組織やホラクラシー型組織(社内に役職や階級のないフラットな組織形態)など、多様な組織形態があらわれ始めました。
それに伴って、リーダーシップ研究の動向も変化してきています。
今回取り扱う論文に出てくるのは、垂直型リーダーシップと、共有リーダーシップです。(分析等に興味がない方は、考察をお読みください!)
垂直型リーダーシップとは、公式に任命されたチーム内またはチーム外のリーダーによる垂直方向のリーダーシップを指します。
共有リーダーシップとは、リーダーシップの役割を共有することで集団を方向づける集団成員の相互作用と定義されています(Hiller et al.,2006)。
この研究の目的は、垂直型リーダーシップが共有リーダーシップに与える影響を検討することです。
一見、並列的な関係に見えるリーダーシップですが、垂直型リーダー
が共有リーダーシップに影響する可能性を探っていきます。
論文名:垂直型リーダーシップが共有リーダーシップに及ぼす影響/井奥智大
さん、釘原直樹さん
先行研究
そもそも、垂直型リーダーシップが、共有リーダーシップに影響を与えたという先行研究があるのかについて、見ていきましょう。
これらの先行研究を踏まえ、垂直型リーダーシップが共有リーダーシップに与える影響を検討しています。
調査対象者
2016 年 2 月~4 月に調査を実施した。関西における塾5校から協力を得て、計87名の生徒に回答を依頼。
質問項目
共有リーダーシップ
生徒の共有リーダーシップ測定項目(Ioku, Kugihara, & Uchida, 2016)で検討された下位項目である計画と組織因子6項目、問題解決因子6項目、サポートと配慮因子7 項目、発達とメンタリング因子7項目を用いた。
垂直型リーダーシップ
学級担任の垂直型リーダーシップを測定するに当たり、Ioku et al.(2016)の共有リーダーシップ測定項目の中の下位項目である計画と組織因子6項目、問題解決因子6項目、サポートと配慮因子7項目、発達とメンタリング因子7項目を修正したものを用いた。
結果
簡易的に分析結果を示します。より詳しい分析結果は、ぜひ、論文をお読みください。
考察
以上の分析結果から、下記のことが考察できると論文では述べています。
要約すれば、垂直型リーダーシップは共有リーダーシップを促進する働きがあることが明らかとなったといえます。
垂直型リーダーシップのサポートと配慮行動は共有リーダーシップのサポートと配慮行動、計画と組織という2つの側面を促進することが示され、垂直型リーダーシップの計画と組織行動は共有リーダーシップの計画と組織行動を促進することが見出されました。
そして、垂直型リーダーシップと共有リーダーシップが適切に組み合わさることで、チームのパフォーマンスが向上することも示唆されました。具体的には、明確な指示とコントロールが必要な場面では垂直型リーダーシップが有効であり、柔軟性と創造性が求められる場面では共有リーダーシップが有効であるとされています。
垂直型リーダーシップと共有リーダーシップは、相反する概念として捉えられがちですが、状況に応じてこれらを使い分けることが重要であると、この論文を読んで気づきました。
リーダーシップスタイルは一つに固定するのではなく、柔軟に適応させることで、チーム全体の効果性を高めることができますね。