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10月24日に関西空港の飛行機の搭乗締め切りに全力で間に合わせてくれたタクシーのおっちゃんへ。

「よしよし、完璧。」
私はそう思いながら朝の準備をする。

久しぶりに関西に帰省し、会いたい人に会って堪能した次の日の朝は足取りも軽く、住んでいる仙台に久しぶりに帰るのも楽しみだった。

飛行機は7時20分に出発。
実家から空港は3時間離れているので、事前に空港近くのホテルも取った。
ホテルも快適で、よく眠れたし、空港まで電車で調べたら13分だし、6時20分頃の電車に乗れば充分間に合いそうだ。

準備ができて、なんなら少しゆっくりして、ホテルを出る。

歩きながら電車で行き先を調べる。

「関西空港」

ふと頭を何かがよぎる。

あれ、私、何ターミナルに行けば良いんだっけ。

急に汗が出てくる。

これ、まずいやつかも。

これまでに自分のどんくささで4回は飛行機を逃してきたことのある私は、まずい予感に敏感だ。

急いで調べる。どうやら私が行かなければならないターミナルの到着が、かなりギリギリらしい。7時20分出発で、搭乗締め切りが30分前。6時50分には空港に着いていなければならない。予定していた電車では間に合うか、かなり怪しい。今日は午後から大事な対面の仕事が仙台である。何が何でも、到着しないといけない。

焦りに焦って、頭をフル回転させる。
なんで私は準備したあとくつろいでたんだ?
いやいやそうじゃない、行き方を調べなければ。
車で行けば目的のターミナルまで12分で着く。
今、6時25分。締切の50分まであと25分。

タクシーを呼ぶしかない。

GOアプリを起動させて、タクシーを呼ぶ。
しかし早朝のため、なかなか捕まらない。
もうこれはいちかばちかで、電車で向かうしか方向はなさそうだ。

重いスーツケースを必死で引っ張って、駅に向かう。焦る気持ちを落ち着けるため、「大丈夫、私は運が良い。大丈夫、私は運が良い。」と必死に心の中で唱える。

この時点ですでに6時36分。電車、はやくきて!

その時、電話が鳴った。GOタクシーからだった。

「もしもし。」
「あ、今どこにいやはるん!?」

ゴリゴリの関西弁のタクシーのおっちゃんが電話に出た。
藁をも縋る思いで、タクシーのおっちゃんに事情を説明する。

「とりあえずわかったから、待っときい!白と緑の車やからな!」

勢いが電話口からも伝わる。
私は半泣きになりながら、タクシーを待つ。

6時38分。あと12分で搭乗締め切りだ。
すると。ものすごいスピードのタクシーが私の目の前に止まる。

タクシーから出てきたおっちゃんはなんだか楽しそうに、「はよ乗り!いくで!」と言った。

私も乗り込んだものの、ふと、いやこれタクシーでも間に合わないのではないか、と思った。

「とりあえず爆速で向かうけど、姉ちゃんどないしたん」
「いや、私もよぉわからんのです」
「昨日はどこおったん」
「りんくうタウンの駅前のホテルに泊まってて」
「りんくうタウンの駅前に泊まってんのになんでこんなことなってん!」

私が一番そう思っている。数時間前のくつろいでいる私に蹴りを入れたいくらいだ。

ああ、やっぱり搭乗締め切りはもう間に合わないかも…..ぐずぐず弱気になっている私におっちゃんが一言。

「間に合わせたるから任しとき!とばすで!」

なんて自信のあるタクシーのおっちゃんなんだろう。救世主だ。

「え、間に合いますか!?」
「いや、わからん!怪しい!」

期待が急に萎む。気分がもうジェットコースターだ。情緒不安定すぎる。

とりあえず先にアプリでチェックインしようと試みるが、こういう時に限って、パスワードを忘れる。再設定しても、アプリの使い方がいまいちわからず、予約と紐付けできない。ああ、もうだめだ。こういう時は、何故か次々と試練が舞い込んでくる。

タクシーのおっちゃんが、「どやねん、アプリでチェックインできそうか」と気にかけてくれる。言葉は悪いけど優しい人だなあ、と思いつつ「いや、全然できません」と答えると「難儀な女やのう!」と言われる。そしてぶつぶつと、「姉ちゃん、タクシー拾う場所も全然ちゃうとこピン留めしてるし、鈍臭いやろ!」と言われる。

難儀、とはどんくさい、とか面倒な、という関西弁だ。

このタクシーのおっちゃん、コテコテの関西人や、となんだか嬉しくなった。

こういう、人の目を気にせず、遠慮しない、はっきりした人が、私は結構好きだ。「大丈夫、きっと着くよ」みたいな優しい声かけも嬉しいけれど、自分のどんくさいところに対して「あほやなー」とか「何してんねん」とさっぱり笑ってくれるのが、関西人の好きなところでもある。

「もう、チェックインもやり方わからんので、到着してなんとかします」

私はもう、アプリに向き合うより、このタクシーのおっちゃんと向き合う方が残りの時間が楽しく過ごせそうだと判断して、携帯をしまう。

「姉ちゃん、足速いんか」
「一応、陸上部でした」
「ほなついたら、思っきし走れや!」

ターミナルが見えてきた。あと3分。
これは間に合うかもしれない。

「あ、あれがターミナルですか!?」
「ちゃう、あれは工場や」

もう無理や。あかん。
諦めかけたその時、飛行機を見ながらタクシーのおっちゃんがぼそっと一言。

「姉ちゃん頑張ってるから、飛行機とばんと待っとったってや」

めっちゃええ人やんか。タクシーのおっちゃん。めっちゃ私のこと小馬鹿にするけど、優しいやん。ちょっときゅんとしてもうた。

謎の情緒で、タクシーのおっちゃんとターミナルに向かう。

「もう着くで!俺のこと気にせんと全力で走れ!」

ありがとうございました、と精一杯の声を振り絞って、受付にダッシュする。タクシーのおっちゃん、ほんまはもっといろんなこと喋りたかったわ。

搭乗締め切り1分前。

足が絡まりそうになりながら必死で走り、受付の人に「私、仙台にいきたいです!」と吠える。人に吠えたのは今年が初めてかもしれない。

と同時に、「仙台行きの搭乗締め切りを終了しました」のアナウンス。



間に合った。本当の本当に、ギリギリ間に合った。
こんなギリギリに搭乗受付したのは人生で初めてだった。


こうして、私は無事に仙台行きの飛行機に乗ることができ、この朝からの大劇場を飛行機の中でnoteに書いている。

タクシーのおっちゃん。無事に飛行機乗れたこと、直接報告できひんけど、noteで報告しておくな。

奇跡的に間に合いましたわ!姉ちゃん、やったで!

諦めずに爆速で向かってくれてありがとうって、仙台銘菓の萩の月とともにいつか直接言えたらいいなぁ。

ほんで、きっと、たぶん。あのタクシーのおっちゃんはこう言うやろうな。

「姉ちゃん、俺の爆速すごいやろ!?」




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