研修をやりっぱなし、学びっぱなしにしない。「研修転移」とは何か?
私は、現在立教大学大学院リーダーシップ開発コースに通っている修士2年生です。
大学院では組織開発・人材開発を実践・研究しています。
学んでいる中で耳にタコができるくらい言われることは「研修というものは学んで終わりだと何の意味もない」ということです。
研修というものは、学ぶだけではなく行動を変容するところまでが重要。
今回は以下の本を参考に、行動まで変容させるために必要な研修転移とは何か?についてまとめていきます。
参考文献:研修開発入門「研修転移」の理論と実践
学んでも行動に移す人はほぼいない
カナダの企業258社で行われた調査(Hugues &Grant 2007)でも、研修を受けた従業員の47%が研修で学んだ内容を職場で実践すると研修直後では考えていますが、半年後には12%、1年後には9%に減っているという結果があります。
私自身、その時はめちゃくちゃ感銘を受けた研修の場でも、次の日には日々の忙殺に飲まれ、すっかりあの気持ちや想いを忘れてしまった…なんてことがあります。
それほど、学んだことを持続させて行動に移すということが難しい、ということがわかります。
研修転移とは何か?
そんな、「学びだけ」「やりっぱなし」という研修の状態を防ぎ、研修後の職場実践を促そうとする試みが「研修転移」研究を通じて行われてきたそうです。
研修転移とは、「研修で学んだことが仕事の現場で一般化され、役立てられ、かつその効果が持続されること」(中原2014)を指します。
この本では、一般化とは、「研修で学んだことが現場で適用されること」であり、持続とは「現場に適用された内容効果性が直ちに失われるのではなく、持続すること」と記されています。
研修転移がどのようなメカニズムによって駆動するのか、については「トランスポート」と「類似度」という概念を使って、以下の図で説明されています。
転移(Transfer)の「Trans」には「2つの状況の間の通路」という意味があり、転移とは2つの状況を運ぶこと、と考えることができます。
Rousselによれば、研修転移はこの2つの状況の間の「類似度」こそが、転移の基層になることを指摘しています。
類似度が高いものを「近転移」、類似度が低いものを「遠転移」と呼んでいます。(Roussel2014)
研修転移を高めるためには?
研修転移を高めるためには、「近転移」が重要であることがわかります。
学んだ内容やスキルを、適用する場所や状況に近づけていくこと。とはいえ、研修や講義って、どう頑張っても「職場」とイコールにはならない。ここが難しいところですよね。
私自身も、いろいろな研修や講座を担わせてもらうのですが、現場の声に寄り添えていないのではないか、私が話したいことを話しているだけではないか、と葛藤することが日々起こっています。
今回は「研修転移とは何か」ということを書いたので、次回は、研修転移を高めるための工夫についてまとめていきたいと思います!