メンバーに安心を与えるセキュアベース・リーダーシップが、メンバーの挑戦を引き立てる。
セキュアベース・リーダーシップという言葉をご存知ですか?
セキュアベースとは、安全基地、と訳されます。
安全基地とは愛着理論に基づいており、「守られているという感覚と安心感を与え、思いやりを感じる存在であると同時に、ものごとに挑み、冒険し、リスクをとり、挑戦を求める意欲とエネルギーの源となる存在」とも言えます(Coombe, 2010).
セキュアベース・リーダーシップ理論とは、メンバーにとってリーダーが「安全基地(セキュアベース)」となることで、メンバーは守られている、安心できるという感覚を抱き、それを基盤として、未来への挑戦やリスクテイクが促される機能を持つものです。
リーダーとメンバーとの新しい関係性を築くことを目指して、リーダーがフォロワーに対して安心感と安全性を与えるセキュアベース(安全基地)となり、そしてそれによって未来に向けた挑戦的行動を促すセキュアベース・リーダーシップに着目した論文を今回はまとめていきます。
論文名:セキュアベース・リーダーシップ論の展開: 過去から「安全基地」の関係を築き、未来への 挑戦を促すリーダーシップ/池田浩さん、 縄田健悟さん、 青島未佳さん、 山口裕幸さん
セキュアベース・リーダーシップ
セキュアベースの重要な特徴とは「安全(安心)」 と「探索(リスクテイク)」という2つの機能を併せ持っているとも言われています。
安全があるから、探索ができるんですね。そもそも安全がなければ、人は挑戦することも恐怖に感じる可能性もあります。
この2つの機能について、従来のリーダーシップ論では、LMXやサーバント・リーダーシップは前者の機能と、他方、変革型リーダーシップなどは後者の機能と関連するものの、両方の機能を併せ持つ理論は看過されてきています。
また、セキュアベース・リーダーシップが、LMXとは異なる効果を持ち、かつ心理的安全性やリーダーシップ効果性と関連することが明らかにもされています。
ちなみに、セキュアベース・リーダーシップの基盤となっている愛着理論はこのように説明されています。
セキュアベース・リーダーシップは条件付きではない、「愛」を重要視しているリーダーシップなのかもしれません。
研究目的
以下、論文から抜粋しています。
セキュアベース・リーダーシップの可能性と独自性に着目している。セキュアベース・ リーダーシップが、安心感や思いやり(安全)と 挑戦やリスクテイク(探索)の 2 つの機能を併せ持つとすれば、上述のようにそれぞれの機能と関連するサーバント・リーダーシップ(e.g., Greenleaf, 1970)と変革型リーダーシップ(e.g., Bass, 1985)との関連性と差異を明らかにする必要があると考えられる。
さらに、セキュアベース・リーダーシップと変革型およびサーバント・リーダーシップとの機能の違いを明らかにするため、チーム風土としての心理的安全性、さらにはチーム成果として「新規課題への取り組み」および「目標達成」に及ぼす影響について対比的に検討する。
仮説
仮説 1
セキュアベースおよびサーバント・リーダーシップは心理的安全性と正の関連性を示すだろう。
仮説 2
セキュアベースおよび変革型リーダー シップは、チーム成果の「新規課題へ の取り組み」と正の関連性を示すだろう。
仮説 3
セキュアベース、変革型、サーバン ト・リーダーシップのいずれもチーム成果の「目標達成」と正の関連性を示すだろう。
調査対象
3 つの企業組織に質問紙調査を実施し、107 チーム(合計 847 名) から回答を得ています。3つの企業のうちA社は航空関係の業務を営む企業(18 チーム,89 名)、B 社は精密機器メーカー(47 チーム,382 名)、C 社は機械製品製造を営む企業(42 チーム,376 名) 。
尺度
セキュアベース・リーダーシップ尺度の因子構造の確認、リーダーシップ変数間における弁別可能性の検討、各尺度のチームレベルへの集約化検討と変 数間の関係性、階層的重回帰分析を経て、結果を見ていきます。
尺度の詳細はここでは割愛しますが、この研究で使用している尺度は以下になります。
セキュアベース・リーダーシップ
変革型リーダーシップ
サーバント・リーダーシップ
心理的安全性
チーム成果
結果
仮説 1
セキュアベースおよびサーバント・リーダーシップは心理的安全性と正の関連性を示すだろう。→支持された
仮説 2
セキュアベースおよび変革型リーダー シップは、チーム成果の「新規課題へ の取り組み」と正の関連性を示すだろう。→部分的に支持された
仮説 3
セキュアベース、変革型、サーバン ト・リーダーシップのいずれもチーム成果の「目標達成」と正の関連性を示すだろう。→支持された
これまで安心 (安全)と挑戦(探索)の2つの機能を併せ持っているリーダーシップは看過されていましたが、研究結果から、心理的安全性やリスクテイクを促すリーダーシップを明らかにしました。
セキュアベース・リーダーシップは、安心 (安全)と挑戦(探索)の 2 つの機能を併せ持ち、メンバーにとって安全基地となることで、メンバーは挑戦することができるようになることから、心理的安全性を醸成される役割を持つ理論と言えます。
Coombe(2010)は、セキュアベース・リーダーシップを、a)メンバーに対して価値を認め、 受け入れ、感謝することで安全を提供する、b) 成長や発達、潜在性を強調することで探求心を提供する、そして c)前向きな方法で課題や状況に対処する、などの 3 つの要素を含む理論であると定義しています(Coombe, 2010, p24)。
私の持論になりますが、本当に安心感を与えてくれる人は、自分の感情に振り回されず、その時の気分や調子で言うことが変わったりしないな、と思います。そして、いつもあなたを大切に思っているし、役に立ちたいと思っている、ということを態度や言葉からも感じ取れる人だな、と思います。
そういう安心感があって初めて、何かに挑戦したり、意見が言えるようになると言うのはまさにだなと思います。
私もセキュアベース(安全基地)になれる行動を、意識していきたいと思います。