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心の距離 Sep18.2025

午後、勝手口を開けたら何かに当たった。
外を見ると、穏やかな午睡から急に叩き起こされ、ポカンと立ち尽くす野良猫だった。

普段は一目散に逃げてゆくのに、よほど気持ちの良い眠りだったのか、今しがた寝ていた陽だまりが惜しいのか、こちらを見つめたまま動かない。しゃがみ込んで猫に向かって手を広げる。一瞬、食べ物を期待したのか視線が手の動きを追う。

「触らせてもらえませんか?」などと話しかける私をじっと見つめ返す目。いつもの蔑むような警戒の視線ではなく、どことなく優しい目の表情から、今日は少し気持ちが揺れているのがわかる。だが、一定の距離を保ったまま、あちらから動く気配はない。

いつか触らせてくれるかな、そんな日を夢見てそっと扉を閉めた。勝手口を開けて済ませたかった用事は後回しにして。

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yuki
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