ケガをしないためのスパイクフォーム
皆さんは自分のスパイクフォームを認識しているでしょうか。スパイクフォームはしばしば、アリー・セリンジャー氏の著書である「セリンジャーのパワーバレーボール」を元に、「ストレートアームスイング」「ボウアンドアローアームスイング」「サーキュラーアームスイング」の三つに大別されます。
フォームは人それぞれ、打ちやすいフォームで、というのは半ば当たり前でしたが、様々な分野で研究が進んできた現代バレーでは、それぞれのフォームの問題点が指摘されています。
まず、ストレートアームスイングです。このフォームの定義は「両手を振り上げた後、肘を前に向けて残したままテイクバックを行いスイングする」です。このフォームは胸が開かないので、スイングに体軸の回転を利用できません。上体の後屈(反り)とそれに続く前屈(戻し)で打つので、腰に大きな負担がかかります。また、スパイクの威力を上げようとすると肩や肘の負担が大きくなります。ミドルブロッカーや初心者にこのフォームを教える指導者が多いですが、やめた方がいいです。
次にボウアンドアローアームスイングです。「両手を振り上げた後、肘を後ろに引いてテイクバックを行いスイングする」がこのフォームの定義です。肘を後ろに引くことで胸が開くため、体軸の回転を利用でき腰の負担は少なくなりますが、両手を上げてから肘を引くため、テイクバックの完成に時間がかかります。肘が高い位置で動いているので素早くスイングできるように思えますが、実は高いジャンプ力が求められるフォームなのです。
最後にサーキュラーアームスイングです。「肘が円のような軌道を描く」フォームです。このフォームは体への負担が最も少ないと言われていますが、それは定義による動作の制限が少ないためだと思われます。このフォームの問題点はスイングそのものではなく動作の意識と定義の逆転です。「合理的にスイングした結果肘が円を描いているように見える」のが本来のサーキュラーアームスイングなのですが、「肘を円を描くように動かそうとするために合理的な動きを逸脱している」スイングが多く見られます。
人体の構造的に合理的なスイングの内であれば、フォームは人それぞれで良いと思います。スパイクのスイングにおいては、「テイクバックで肘が肩のライン以上の高さにあること」「スイングに体軸の回転が利用できていること」が重要です(肩のラインとは、肩と肩を結んだライン)。サーキュラーアームスイングはボウアンドアローアームスイングに比べてジャンプの段階で打つ手を頭上まで振り上げないという違いがあり、これによってテイクバックの完成が早くなるメリットがありますが、肩のラインの高さまでは振り上げてからテイクバックに移行することで肩の故障のリスクを軽減できます。体軸の回転の肝は「テイクバック完成の段階で胸が開いているかどうか」です。多くの場合は肘をしっかり後ろに引くことで胸を開くことができます(肘が肩のラインの高さに達してから引くように!)。
以上の合理的な動作を満たしつつ、意識もしやすいのが「D型サーキュラーアームスイング」だと考えています。石川祐希選手などはこのフォームです。ストレートアームスイングから成長に応じてフォームを変えるのではなく、フォームは人それぞれだとしてもその分岐の大元として「D型サーキュラーアームスイング」があるのが理想的なのではないでしょうか。数あるフォームの内サーキュラーアームスイングをしろというよりは、合理的なスイングをするならサーキュラーアームスイングしかないのではないか、というお話でした。
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