IBSA柔道グランプリ・ハイデルベルク
2月13日から20日でグランプリ・ハイデルベルクに出場するためドイツへ行ってきました。今回はその遠征と、17日に行われた試合の振り返りです。
今回の結果はJ2,73kg級で優勝。昨年12月のグランプリ・東京に続く2大会連続の勝利でランキングを大きく押し上げることに成功しました。
また今回は自分自身の中では大きく失敗した大会となりましたが、それを補って余りある度重なる幸運に救われました。
しかしいつでも運が助けてくれるとは限りません。良かった点、そうでなかった点を明確に整理しておきたいと思います。
今回の渡航は13日昼の便で朝集合のため前泊を選択。12日の午前に大学の道場で学生に相手をしてもらって調整。夕方から羽田へ向かいました。
この時点でそれほど気にならない程度の体調不良。鼻水が少しといった具合でした。要因としては睡眠不足だろうと思われます。
11月末ごろからずっと、課題、研究、稽古、トレーニングに加えて原稿等を抱え、また課題や研究についても比較的重めのものが続いていました。
グランプリ東京の時には、それくらいの適度な忙しさの方が柔道にも集中できて良いなどと思っていましたが、忙しさの濃度は12月とそれほど変わらないものの慢性的な睡眠不足で全体的な能率が落ちていました。次第に削られる睡眠時間も増え、けっこう切羽詰まっていました。
ここが今回一番の課題で、研究や期末課題など繁忙期とはいえ、やはり夏から始めたフィジカルトレーニングが時間的余裕を圧迫していました。稽古に参加する回数も選手として公にできないくらいには減っていましたし、その質も慢性的な体の痛みによって十分ではありませんでした。
ここから試合が続く以上、体の面には場当たり的な対処しかできませんが、生活習慣や時間のやりくりにはもう少し策を検討しておかなければなりません。
体重は概ね順調。76kg程度で維持。今回は十分に食べながら落とすことをテーマにして取り組みました。よって脂質をより削った食事を長期的に心がけていました。
13日朝、羽田空港へ移動。滞りなく搭乗、出発しました。ルフトハンザ航空717便、フランクフルトまで15時間ほどの旅程です。
機内は空いているとまでは言わないものの空席もそこそこあり、運が良いことに私の席は一列他の乗客がおらず、横になって休むこともできました。
航路は北極回りのようで、窓から入る光の明るさは、昼に出発して一度暗くなり、再び明るくなって、最後には暗くなりました。しかし、到着したのは出発と同じ13日の19時。不思議ですね。
機内では概ね前半を寝て過ごし、後半はアニメを見たり、ゲームをしたりで潰しました。
今回見ていたアニメは「メジャーセカンド」。初期シリーズとは違うタイプの青春ストーリーを楽しめます。
フランクフルトへの到着はほぼ定刻。入国の手続きを終えて、ここからは車移動。大会のスタッフが運転する車3台に分乗してハイデルベルクへ。
かの有名なドイツのアウトバーンを爆走。120km程度を出し続けていましたが、その横を倍もありそうな速度で車が過ぎ去っていく場面を何度も見かけました。ドイツの車は右側通行。片側4車線ある道路の左側から順に速い車が走っていました。
調べてみればアウトバーンも速度制限区域がけっこうあるらしく、その境界ではこれらの車はどのような振る舞いをするのかが少し気になりました。
21時半ごろマリオットホテルに到着。全体の雰囲気としては古め?というか、欧風な建物。エレベーターの扉の開閉速度が一定でなく奇妙な音を立てることにやや恐怖を覚えましたが、建物自体は雰囲気のある綺麗な設備でした。
この日は就寝前にホテル内にあるトレーニングジムで少しトレーニング。と言ってもフリーウェイトなどの設備は十分にはなかったのでできるもので代用しつつ、やや軽めのメニューになりました。そしてここでもそれによって睡眠時間が削られます。到着が遅かったこと、そこから食事をとったことなどあり、就寝は1時を過ぎる頃になってしまいました。
14日は7時前に起床。睡眠が不足していますが、時差の影響は全く感じません。今回の時差調整は完璧だったようです。
調整練習は昼からとのことで、朝は外に出ました。部屋の暖房の効きが悪いこともあってこの時点で体調はやや悪化しているように思いましたが、それでも深刻な状況ではなく、いつもより少し厚着をするくらいの対策で十分に思える程度でした。
ハイデルベルクは第二次大戦で空襲の被害に遭っていない数少ない都市なのだそうで、中世の街並みを残していました。また、街の至る所まで路面電車の線路が伸びており、街中の移動の主な交通手段のひとつとなっているようでした。車もそこそこの通りがあり、バスや自転車も多く走っています。自転車専用のレーンも大きな道には整備されているようでした。レンタルの電動キックボードがところどころに放置されており、おそらくは車体のQRコードを読み取ることでレンタル料を支払い、乗ることができるようです。
街の中心駅まで足を伸ばしましたが、パン屋をよく見かけました。すぐ近くに何店舗も並んでいます。残念ながらこの遠征中にドイツパンをじっくり味わう機会はありませんでしたが、とても良い匂いが漂っていました。
買って食べようかとも思いましたが、試合まで小麦はなるべく控えるようにしていることと、朝食後の体重が77kgとちょっとまずいのでやめておきました。
昼前から調整練習へ。車で10分ほどのところにある「OLYMPIASTÜTZPUNKT」と記された建物へ。おそらくはドイツのナショナルトレーニングセンター的な建物のひとつなのだと思われます。
調整はいつも通りのメニューに加えて、東京グランプリの時から取り入れたサーキットメニューをやや高強度で。
体の動きとしては全体的に力があまり入っていない感じで、やや疲れやすい。いつも到着して最初の調整はこんなものだとは思いますが、疲れがけっこう溜まっているように感じました。体調のことがあるのでやや危機感。そこそこの量の汗をかいたので体重はやや落ちたでしょう。
午後は体調が思わしくないので長めに昼寝をすることにしました。効きの悪い暖房を最大にして浴槽に湯を張り温度と湿度を上げて眠ります。
寝て起きるとややすっきりはしたものの怠さは変わらず。
その後は体重がちょっとまずいのでとりあえず水抜き。目標としては74kgくらいでしたが、頑張ったものの届かず74.3kg。水を戻しますが、ここで困ったことに汗が止まらない。風呂を出ても十数分かなりの量の汗が出続けました。体重的には良いのですが明らかにこれは異常。この時点で体調不良が思いの外深刻であることを悟りました。
この時点でコーチ陣に15日の調整練習を休むことも選択肢として考えている旨を伝えました。
15日も同じように7時前に起床。起きた時こそはやや良い感じに思われましたが、時間を経るごとにどんどん体調は悪化。
昼前にはクラス分けが控えていましたが、少しでも寝ていようと思い朝食後は部屋で再度就寝。1時間半ほど寝たところでクラス分けがやや早く進行しているという電話をもらい、準備。
クラス分けは宿泊していたホテル内で行われています。
クラス分けについては紆余曲折ありましたし、その他思うところもたくさんあるので、いつか別でまとめようと思います。今回は詳細を割愛。
二度目のパネルでJ2/review-2026が確定しました。
かなり時間がかかっておりこの時点で13時半を過ぎていました。体調も思わしくないのでその場で調整練習を休む旨をコーチ陣に宣言。昼食へ向かいました。
食欲もあまりなく、また食べれば軽い吐き気がすることもあり、ちびちびと食料を飲み込み部屋に戻って連盟クラス分け担当の辻先生に連絡。クラス分けの現場状況の報告をしました。その場でどうやらカザフのオラザリューリー選手がCNC(Clacification Not Completed)の判定を受けたようだと聞かされました。その次の日にはなりますが、アゼルバイジャンのアバスリ選手もクラス分けでNE(Non Eligible)の判定。フランスのペティット選手は怪我で欠場とインスタグラムで報告していましたので、今回の試合は強豪が軒並み欠場ということになります。
今回のクラス分けでは各階級の有力選手が何人も引っ掛かっており、色々と思うところはありますが、日本人選手にとっては今回がかなり狙い目の大会となっているようでした。
なぜかは明言は避けますが()、それらの選手もおそらくは次回以降の大会で再度受検して通ることになるでしょうから、パリ本番にはそれほど影響はありませんが、もしこのまま出場することができないようであれば、どうやらドーピング違反だったらしいイランのジェッディ選手と合わせて私の階級は有力選手が何人も脱落することになり、私としてはかなり助かります。
その日はそのまま夜まで眠り続けました。再度目を覚ましたのは20時半ごろ。これはまずいと21時に終わってしまう夕食の会場へ出向き、料理をいくらか皿に盛って部屋に持ち帰ってきました。それをまたちびちびと齧りましたが、やはりあまり食欲はなく、かなり少なめの夕食となりました。もはやこの時点で、今回のテーマであったしっかり食べながら減量というのは成り立たなくなってしまいました。体重は75.5kg程度。まぁギリなんとかなるでしょう。
昼頃よりはややマシになった体調でしたが、風呂に入るとやはり汗が止まりません。
16日は朝8時から調整練習ということで、6時ごろ起床。前日よりは明らかに回復していますが、やはり食べると気持ち悪くなりそうなので、練習前ということもありゼリー類を朝食の代わりに流し込みます。体重もやや心配でした。出発前に水抜きで73.8kgを見たのが最も軽く、こちらに来てからは74kgをまだ切れていません。
バスで移動して調整練習。思いのほか体は動くようで、初日に比べればかなり良い動きができました。力もきっちり入るし、スタミナこそ保ちませんが、動きのキレは問題ない程度にはありました。サーキット、打ち込み、投げ込み、スピード打ち込みといつも通りのメニューをこなして調整終了。疲労感は否めませんが、昨日は一日動いていないわけですから体に十分な刺激を入れておかなければ試合で動けなくなってしまいます。
ホテルに戻ると10時過ぎ。とりあえずシャワーを浴びて体重を測ってみると74.0kg。思いのほか落ちていました。
これならばと昼食へ。重さや体調回復を考えて内容は十分に気をつけて、またよく噛みながら時間をかけて食べます。水は少し多めに飲んで、75.0kg。うん、ちょうどいい。
14時半から柔道着コントロール、計量は本計量が18時半ということで、間があるので鍼治療を受けた後ストレッチへ。ホテル内のフィットネスにストレッチ用のスペースがあったのでそこを使ってローラーとボールをコロコロ。脚を中心にやはり疲労や筋肉の張りがあったのでじっくりほぐします。
ダラダラとコロコロしていると時刻は14時20分を回っていました。慌てて部屋に帰り道着を持ってロビー階へ。毎度お馴染みの柔道着コントロールの大混雑。
ただ、今回は多少マシでした。特に東京グランプリの時に比べればかなり良かったです。通路も狭くはなく、運営スタッフが徹底して選手を一列に並べていましたし、基本的には国名アルファベット順に部屋へ通していました。それでも待ち時間があることには変わりなく、1時間近くを要しました。
コントロールをギリギリでパス。体が大きくなったのに道着は同じものを使い続けているわけですから、ギリギリなのは当たり前です。道着を新調しようと試みはしたのですが、いろいろとうまくいかず…まぁ、現状困ってはいないのでヨシ。
部屋に戻って計量に向けていざ水抜き。アミノ酸を飲んで、少し糖分をとって、ビタミンも少し、スマホとBluetoothスピーカーを準備。湯船に湯を張って、さぁスタート。開始時点で74.8kg。使える時間は2時間弱。いつもなら余裕の重さ。ただ今回は初めて74kgを切らないままのぶっつけ本番。
消化が追いついていない今期放送のアニメを見ながら汗を出します。VPNって本当に便利ですね。
アニメを3話分ほど見たところで経過時間は1時間と少し。汗の出は良好。体感でなんとなくそろそろな気がしたのでここで一旦風呂を出ます。体重計に乗ると73.0kg。素晴らしい!
しかも、どうせしばらく汗は止まらんだろうからいくらかリカバリーできる!
案の定、水を少し戻しつつアミノ酸などのリカバリーをしても汗が止まったころに体重計に乗ると73.0kg。
頃合いを見て再びロビー階へ。コーチの畑山先生と合流して計量会場に設定された会議室へ。またもそこそこの混雑。仮計量は72.9kg。ヨシ!
そのままその場に留まります。
18時半になって計量スタート。まずはJ1から。体重計が2つ用意されており、それぞれ60kg級と73kg級で2つの列を作っていました。計量順も国名アルファベット順で呼ばれるためスムーズ。その間、J2の選手は部屋の外へ出ていろと運営スタッフがかなり厳しく選手を追い出していました。
部屋の隅にいた私はさもそこにいるのが当然の如く立っていたためか追い出されず。ルールに従わないのは私自身のポリシーに反しますが、混雑する廊下で待たされるのは勘弁願いたかったし、周りを見れば知ってる顔ばかり。私だけではないようだったのでそのまま隅で待たせてもらうことにしました。
J1が終わってようやくJ2の計量が開始。やはりその場にカザフのオラザリューリー、アゼルバイジャンのアバスリ、フランスのペティットの姿はなく、相変わらずいかついヒゲを生やしたカルダニがやや不機嫌そうにしていたり、ニコライさんが自国だからか陽気に計量係員と雑談していたり、キムが壁際でキョロキョロしていたりなどの様子しか見られませんでした。
本計量の結果は72.8kg。まぁ、ヨシ。
部屋に戻りながら水をがぶ飲み。部屋に戻ってからは水、塩分、クレアチン、アミノ酸、プロテイン、ゼリー、出汁湯などを飲んでリカバリー。ただ、体調不良もあるのかいろいろ飲みすぎたせいで腹がタポタポ。すぐに夕食を食べたかったのですが、しばらく時間を置くことにしました。
夕食がやや遅くなったので、食べているうちに21時からのドローが始まりました。ランキング上位の欠場者がいたためランキング5位の私にもシード権が回ってきました。しかも第2シード!
シード権をもらったのはアジアの大会を除けば約1年前のグランプリ・アレクサンドリアの時の第4シード以来。単純に嬉しいというのもありますし、試合間で道着を着替える回数が減るので大変ありがたいです。
決勝までに対戦の可能性が高い選手で警戒するところとしては、スペインのイバニェス、ジョージアのカルダニ、ウズベキスタンのクランバエフあたりです。イバニェスは東京パラの66kg級銀メダリスト。対戦経験はまだありませんが、合宿等で乱取りをした感じ手足が長く引き込み系の技が多いためやや厄介。カルダニは言うまでもなく、現時点で私が最も苦手と感じている選手。クランバエフは東京パラ66kg級の金メダリスト。直近の対戦では勝っているものの最近の試合を見ると少しずつレベルアップしてきているように思います。
それぞれの対策を考えつつも、まずは初戦。ブラジルのロザ選手。試合の動画を畑山先生と確認します。
初戦はもちろん、全体を通して今回のテーマは速攻。体調からして長期戦は不利。とにかく先に攻めて投げる。作戦も何もあったものではありませんが、そもそも柔道というのは先に投げた方が勝ちですから当然の戦い方です。そのために気をつけることとしては引き出す向きと技をかけた後や相手の技を受けた後の警戒。自分の強みを活かすことと自分の弱点をしっかりカバーすること。
いつもそうなのですが、試合前日の夜はそれほど緊張などはなく、むしろいつもより寝つきが良いくらいです。この日もぐっすり眠れました。
試合当日の朝は5時起床。
ゼリーなどを少し体に入れてホテル内のフィットネスへ。体操とストレッチを念入りに。最後にランニングマシンでウォーキング、ジョグ、短時間のラン、そしてウォーキング。朝に一度心拍数を上げておくというのをここ1年くらい試しています。効果のほどはよくわかりませんが体感としては良いような気がします。
部屋に戻ってシャワー。
体調は前の日よりもさらに少し良くなっているようでした。それでも、水を一気に飲むと気持ち悪かったので、朝食は気持ち少なめに、よく噛んでゆっくり。
ゆっくり食べているとかなり時間を食ってしまいました。前の日に荷物の準備をしておいて正解でした。大会を経るごとに試合に携行する荷物が増えていきます。必要な捕食や水を詰めてロビー階へ。
バスが案内された時刻通りに来ないのはいつものこと。時間にうるさそうなドイツでもそんな感じなんですね。7時45分出発の予定でしたが、結局ホテルを出たのは8時ごろ。ただ会場までは近く、到着はすぐでした。
到着後はいつも通りのウォーミングアップ。アップ会場が狭く、また、今回クラス分けに引っかかり試合に出れない選手が暇なのか早々に乱取りを始めてしまい、やや危険な状態。
同様に混雑している試合会場も活用しつつ、空いているスペースを見つけては移動を繰り返しなんとか準備運動終了。
私の試合までは十数試合あるのでざっと1時間以上は余裕があります。ですのでいつも以上にゆっくりストレッチ。
途中、審判でいらしていた小志田先生と平野先生にお会いしました。調子を聞かれたので体調がちょっとまずいです、と答えたところ、後から小志田先生が私のところまで来てくださり、体調が悪い中でどう戦うかというのを試す良いチャンスであると助言をくださいました。
私の試合までは想定よりもさらに長い時間がかかりました。というのも、途中、試合が中断した時間があったためです。
どうにもアップ会場が狭いにも関わらず、畳の上に荷物を広げ、動きもしないのに寝そべってスペースを占拠している選手がいる状況に警告を発しているようです。各国のコーチが集められ通達、またアナウンスでも警告。今日試合がない選手はアップ会場から出て観客席へ行け、アップ会場の畳の上に荷物を広げるな、動かない選手はレストエリアを使え、守れないようならば大会を中止する、というかなり過激な内容でした。
アップ会場には畳が敷いてありますが試合場2面分にも満たない面積で、その周囲も狭く非常に窮屈な感じ。その横にアップ用の畳の半分より小さいくらいの面積でまた別の畳が敷いてあり、試合の様子を映すモニターなどが設置されています。こちらがレストエリア。動かない選手や横になる選手はこちらを使えということのようです。
この警告に最後まで抗っていたのは予想通りウズベキスタンとカザフスタンのチーム。特にウズベキスタンは大量の荷物を広げ、選手全員が厚着をして身を寄せて畳の上で横になっています。そうやって体を暖める民族性なのかどの試合でも、特に寒い時期には良く見かける光景です。
どれくらいの時間を消費したのか覚えていませんが、ウズベキスタンがようやく荷物を撤収して試合再開。この間控え通路で待たされていた選手は気の毒でした。
出番まであと数試合というところで呼ばれたので、ブドウ糖を摂取して控え通路へ。これは今回から取り組み始めたことで、試合前に糖分を摂取して最初からエネルギーを燃やしやすくするという目的。前回のグランプリ東京の際に、いつもより多めに塩分チャージタブレットを摂取していたことが好調の要因のひとつと考え、塩分はもちろんのこと、糖分が重要だったのではと思い当たりました。
特に今回は試合前に食べ物を入れられるような状況ではなかったので非常に有効な取組になりました。
これも効果のほどはわかりませんが、感覚的に悪い感じはしなかったので今後も続けようと思います。
初戦となる2回戦、相手はブラジルのデニス・ロザ選手。対戦経験はありませんが、ランキング的には格下の選手。身長は低めですが肩幅が広くガッチリした体格の選手です。背中を掴んでくることは承知していたので、その際のパワーに注意するよう心がけました。
いざ向き合ってみるとかなり年齢を重ねている選手に見えます。後から調べてわかりましたが79年生まれだそうです。
組手はケンカ四つ。最初の組み方は相手をうまく誘い下から組むことができました。足で崩して絞めを狙いましたがうまく入らず。
次はこちらから組み相手は下から釣手を入れてきました。しかし動きの中で背中に持ち替えてきたのでこちらの釣手は自由に。引きつけもそれほど厳しくはなかったのでやや強引でしたが背負。微妙な感じに肩が着いて技あり。抑え込みはいつもの如く逃してしまいました。
正直なところ私の寝技がさほどうまくないのはあるかもしれませんが、投げた形そのままで体で抑えつけただけが抑え込みになってしまうのが問題だと思います。そのせいで毎回抑え込みを逃す寝技下手なやつみたいな印象が持たれてそうなのは非常に心外です。
再度組み方。一向に持ちにきません。ちょっとアピールしても審判も何も言いません。ちょっと誘っても最初のことがあるからか相手も警戒しています。仕方なしとアピール気味に先に組み、釣手は上からに。
得意な方へ引き出しつつ、足などをかけ強引に動かしているとまた背中。ここはあまり意識なく体が動きました。背負で一本。
時間はあまりかけずに初戦を終えることができました。戻ってすぐ水、塩分、βアラニンを摂取。試合が近くなってからだとまた気持ち悪くなるので、なるべく試合まで時間があるうちに飲んでおきます。
その後次の対戦相手を決める試合、ニコライさんとイバニェスの試合をモニターで観戦。客観的な強さで言えばイバニェスの方が勝ちそうなのですが、どうやらここは相性があるらしく私が記憶している過去2,3度の対戦はニコライさんが勝っています。
今回もゴールデンスコアの末ニコライさんが指導3で勝利。
一方私はイバニェスは苦手ですが、ニコライさんには非常に相性が良く、ラッキーな展開。
ということで3回戦の相手はドイツのニコライ・コルンハス選手。これまでの対戦成績は2勝0敗。警戒するところとしては巴投と内股、足も上手いのですが、比較的正統派な柔道で私としては得意とするタイプ。
組手は相四つ。釣手で引きつけて相手をコントロール。相手の足技を流して体勢が崩れ、体を起こしたところに低い背負。やや外されましたが、そこから足を立てることができ、うまく手で相手の体を引きつけロックできていたために捻り込んで一本。開始20秒ほどでここも体力を消費しないまま勝つことができました。
自国開催だったからかいつも以上に気合が入っているように見えたニコライさん、かなりがっくりきているようでした。敗者復活戦を勝ち上がってほしいと思いながら握手しました。
同じように水、塩、βアラニンを摂取して、今度はカルダニとバレイキスの試合を観戦。
バレイキスは2回戦でクランバエフに勝って上がってきています。バレイキス対クランバエフはグランプリ東京でも対戦があり、その時は長時間の延長の末バレイキスが勝っていました。今回もバレイキスが勝ったようで、ここも相性があるのかもしれません。
そして、カルダニ対バレイキス。ここも客観的な実力で見ればカルダニの方が強いように思えるのですが、ここにも相性があるらしく、東京パラの3位決定戦や世界選手権など、私が記憶する2,3度の過去の対戦ではバレイキスが勝っています。バレイキスは対カルダニでかなり対策をしているようです。
今回も一本背負の技あり2つでバレイキスの勝ち。
一方私はカルダニは大の苦手ですが、バレイキスはおそらく非常に得意なタイプで、またしてもラッキーな展開。
ということで、準決勝はリトアニアのオスバルダス・バレイキス選手。東京パラの73kg級銅メダリストで、その際の敗者復活戦では日本の永井選手を倒しています。相四つで体は同じくらいのサイズ、引手を深く握って引き込み系の技、逆の一本背負が得意な選手。初対戦ですが、おそらくは非常に相性が良い柔道のスタイルを持つ選手です。
さすがにパワーはありますが、予想通りやりやすい。開始早々の背負や待ての後の再開際の背負はかわされましたが、こちらの迂闊な動きに対しても脅威となりうる技は打たせることなく展開できました。
最終的には引手を脇の近くまで持たれて肘が自由になったタイミングで低く背負投。完全に横に逃れられていましたが、手を固めてコントロール、勢いを落とさず転がすように投げ切ることができ一本。ここも1分かからず終えることができ、決勝まで体力を温存することができました。
一安心したからか、昼になって頭痛が出てきました。とりあえず暖かい格好に着替えて昼食へ。最近の大会ではアスリートラウンジ的なものが用意されている場合が多く、今回も選手向けに温かい食事を提供してくれていました。ライス少しの横にパスタ用のソースを少しもらってまたちびちびとよく噛んで飲み込みます。エネルギー量としては明らかに足りませんが、体調に関わらず、試合の日の昼休憩はあまり食べられないものです。試合までかなり時間が空くと予想できた今回でもそれは同様です。
決勝ラウンドは16時半開始。3面あった畳のうち1面を表彰台として使うため試合は2面で行われます。
3位決定戦2試合は同時、決勝は1試合で。今回もJ2,73kg級は最後なので、試合まで1時間半は確実にあるでしょう。
とりあえず、道着の下だけ着替えてアップ会場の方へ歩いていると試合場との境のところに佐藤伸一郎強化委員長が座っていたので雑談。「相手に恵まれたとはいえこの状況でようやっとるでしょ?」から始まり、「明日は部屋で休みます」「決勝勝ったらな」「負けた時の方がしんどいと思うんですけど」のようなやりとりをした後少し真面目な話。今後ランキングをどのように調整していくか、誰をターゲットにシード権を考えていくべきか、そのためにアンタルヤ、トビリシはどうすべきか、簡単にですがそんな皮算用的な話をしていると決勝ラウンドが始まりそうな雰囲気になったのでストレッチを開始。
入念にストレッチをして回転運動。間間に長めに休憩を入れながらいつも以上にダラダラとアップ。
順子さん、工藤さんが私より前に決勝、3決を控えているので、私の打ち込みなどはとりあえず後回し。
いつもの如く撮影係としての職務を遂行します。
今回は私が撮影した写真を若林先生に送信して連盟SNSに投稿してもらったので、私が写った写真が全く上がらず一部にご心配をおかけしてしまいました。撮影係の勢力拡大にも努めてまいります。
2人の合間を見つつ、少しずつ牧野先生を相手に体を動かします。まず工藤さんを見送り、順子さんを見送って間もなく、工藤さんの3決、そして順子さんの決勝を遠目に観戦(全然見えません)。終わったところで呼び出しがかかりますが、ここから最後の仕上げとしてスピード打ち込み。いつもより少なめ。ブドウ糖は午前より多めに口に放って控え通路へ。
柔道着コントロールを通ってサイドフの後ろにスタンバイ。
前回同様に試合前に絡んでくるのかなと思いきや、今回は一切こちらに目もくれず、コーチとなにやら話したりあるいは深呼吸したり、体を伸ばしたりとかなり集中を高めている様子。前回と違っておそらく今回の彼は万全なのでしょう。気合が入っているように見えました。
J2,73kg級の3位決定戦、それぞれクランバエフとバレイキスが勝って、いよいよ次は決勝。青の私から名前がアナウンスされたので、サイドフの横をすり抜けて畳に向かいます。
決勝の相手はフェルズ・サイドフ選手。東京パラの73kg級金メダリストで、去年の世界選手権も準優勝。今日唯一のランキング上位の相手ですが、これまでの対戦成績は2勝0敗。
イランが消えた今、J2,73kg級で最も強いのは彼かと思いますが、私は相性が良いらしく。比較的得意な相手。今回も背負投を中心に攻めていく計画でした。
組手はケンカ四つ。開始早々、巴投、潰しますがそのまま下から寝技を仕掛けてきました。しかしこれは守りを堅めて待ちます。
待てから組み直して相四つ。ここから先最後までサイドフは相四つに組んできました。これには正直驚き。初対戦の際に相四つになった瞬間を背負で狙い撃ちしたことから、両方できるサイドフは今後一切相四つには組んでくれないだろうと踏んでいました。実際、先のグランプリ東京では終始ケンカ四つでした。
予想外とはいえ私からすれば助かります。足はややケンカ四つ気味のスタンスを取っていましたが、組手が相四つならば背負は決めやすい。得意な方へ引き出して満点に近いタイミングでの背負投。しかしかわされてしまいました。入ってからうまく固めた状態で体勢を上げることができませんでした。
背負を見せたところで次は開始際の大内。ところがこれは対応が容易だったらしく、密着され後ろを取られてしまいました。持ち上げられて危ういところをなんとか腹這いで着地。この時相手の足を触ってしまいましたが、審判は気づかなかったようです。密かに反省。
その後お互い巴投と背負投が不発。
次に低い体制から煽って相手の腰を引かせたところから背負の形を見せつつ不十分だったために足をかけて大内へ方向転換、追うも外したので体勢の悪い背負い。これも易くかわされます。ここで背中を掴まれますが、審判の「待て」の声に脱力。されるがまま帯取り返しを喰らってしまいました。
スタミナを消費できないために省エネモードで戦っていたのがこういったところで仇となるところでした。結果として待ての方が早かったためにポイントにはなりませんでしたが、もしビデオチェックで主審の「待て」より技の入りが早いと判断されれば技の効果は有効になります。実際にアジパラで私はそれでクランバエフに勝ったわけですから、本来は「待て」と聞こえても油断は決して許されません。ここは大いに反省。
互いに組み手を嫌う一幕を挟んで、開始1分20秒ごろ。「はじめ」から互いに上体は引きつけつつも体に間合ができている体勢。右足を前にした状態から上体を沈めて戻りながら一歩前へ、その波に合わせて釣手を振りながら相手が腰を引き気味に後ろに下がるところに背負で潜り込みました。ここまでの流れはたぶん無意識。長年やって染み付いてきた動きです。タイミングはほぼ完璧。釣手も十分効いており、相手の上体を下に落とすことにも成功。ただ向こうも背負は警戒していたのかこちらの引手とは逆向きに体を落としながら引手を切ってきました。
ただ、ここで非常に良かったのは強みであるところの釣手。きっちり相手をこちらの体に引きつけることができていたため大きく逃すことはなく、背中〜首あたりの左後方に相手を乗せる形に。そのまま左前方へ逃げようとする相手に対して前方に力の向きを変えて押し込みました。判定は一本。
ここがうまくいった要因としては状況に応じて力の向きを変えることができたことが一つ。これは最近体で覚えてこれてるように思います。相手が逃げる方向へ引きつけた状態で押していく。もう一つは体勢自体が潰れていたところから最後まで押し込めた足の力。これは最近の下半身強化の成果だと思います。先のグランプリ東京のカルダニ戦でもそうでしたが、潰れたところから立ち上がれるというのは背負投を得意とする者にとっては非常に大きな武器です。
判定こそ一本でしたが体感では技ありでしたし、後から映像を見ても技ありでした。実際その時にもビデオチェックが入りました。
このパターンはまた技ありにダウンするやつだ、と直感した私は気持ちを切り替えるべくまずは足を一通りバシバシ。これは22年の世界選手権の際の反省から、気持ちが切れそうな時にチェックが入る場合にはルーティン化しようと心がけています。本来は気が抜けたところで足に刺激を入れるため強めに叩きますが、今回はあまり強く叩くとフラフラな足にダメージを蓄積するだけなので、優しく。試合前にも同様のバシバシをしますが、今回は常に優しく。イメージはパシパシ。
その後は体を左右に揺らして足腰を動かし続けながら頭の中で「今のは技あり」を唱え続けます。
苦しい試合は特にですが、どうしても「勝った」と思うと集中がプッツリと切れてしまいます。そうなると私はポンコツと化すので、なんとか気持ちを再度入れ直さなければなりません。
今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり今のは技あり…ようやく「よしまだいけるぞ」と思えてきたころにビデオチェックが終わったようで、こちらに勝名乗り。ほっとした気持ちで礼。
サイドフさん、握手、そっちのタイプで来るなら先に言っといてもらわないと
急には対応できませんよ…
次にまた当たった時に覚えてたら私もその上からのカッコイイやつで対応しますね。
表彰式。J2,73kg級表彰式のプレゼンターは小志田先生。メダルをもらう時に慢心しないようにか釘を刺されました。もちろん私自身、今回の試合には全く満足いっていないので、驕るつもりはありませんが、それでも難しい状況での優勝ということで心に隙ができていないかと気をつけてはいる次第です。
表彰式でやや残念だったのは、時間が決まっていたのか君が代を最後まで流してくれなかったこと。ちょっとがっかり…
別の階級の表彰式で他の国の国歌が途切れていたので、時間で決まってるのか、とは理解していましたが、君が代は短いから最後まで流れるだろうと思い込んでました。うちの国歌、短いようでいて、ゆっくりだから意外と時間使ってるんですかね?
表彰台を降りた後クランバエフに写真撮影に誘われました。どうやらウズベキスタンのコーチが撮ってくれるそうで、4人で撮影、真ん中に入れてくれました。この写真はサイドフがインスタのDMで送ってきてくれました。
そして、当然というかなんというか、その後はドーピングコントロール。この日表彰台に登った日本人3人は全員ドーピング検査に当たりました。これは意図的な何かがあるだろうと皆で疑っています。日本人なら文句言わず大人しく検査受けるだろうとか、どうせ日本人は薬物の反応出ないから後の手続きが楽だろうとか、そんな意図がありそうなほどの高確率。検査に呼ばれるのが一番最後だったこともあって、検査を終えたのも私が一番最後でした。
今回の大会は、試合だけ見ると細かな反省点はあれど、試合全体として結果、内容ともに非常に良いものだったと思います。ただ、準備を含めた全体を通しての自己評価は今回はあまり高くありません。というのも、まずはやはり体調管理。これは22年の世界選手権の時からずっと注意して取り組んでいるにも関わらずまたも失敗してしまいました。今回の要因は先述のとおりそもそもの生活サイクル。これを書いている時点でさえどう変えていけば良いのかは正直明らかではありませんが、万全の状態で試合に臨もうと思った時に、現状はあまりにもひどすぎる。客観的に見れば、試合に勝とうと思っている人間の生活ではありません。日頃の時間の使い方、限りあるリソースの振り分け方というのを改めて考え直さなければならないと思います。
そしてもう一点満足できない要因として、今回の勝ちの大部分が相性による影響が大きかったこと。本番でもこんな運の良い組み合わせになるなんてまずあり得ません。であるから、今回の結果は謙虚に受け止めなければならないと思います。また、イバニェスやカルダニとはパリ本番で当たる可能性が十分にあります。予選ならば負けて良いとは思っていませんが、まだ失敗できるうちに対戦をしておきたいというふうにも思います。残り2大会でその機会に恵まれるかはわかりませんが、どうであっても彼らへの対策というのを十分に考えておく必要があります。
今回の大会を経てパリパラ予選ランキングは3位まで上昇。シード権内に入ることができました。今後の残る予選2大会でももちろん勝つことを目指して戦っていくつもりですが、目標はパリでの優勝。あくまでも今回やアンタルヤ、トビリシは予選。今後考えていくべきは、誰と対戦しておかなければならないのか、そしてなにより、本番のシード権は何番目を持っておくべきなのか。シード順によって、シードの4人は準決勝で当たる相手や決勝まで当たらない相手というのが確定します。相性やどのタイミングで対戦するのが都合が良いかなど、さまざまな要素を総合的に考えて可能な限りランキングを調整していく必要があります。
4月のトルコ・アンタルヤ、5月のジョージア・トビリシ。パリパラリンピックまで半年を切って、予選もいよいよ佳境です。目指すところがどこなのかというのを見失わないよう、改めて気を引き締めて歩いていきたいと思います。
引き続き応援よろしくお願いします!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?