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「そうだ、クラファンやろう」〜出版までの道〜 中山祐次郎
(前回までのあらすじ)
晴れの日は耕し、雨の日は読書をして暮らしていたぼく。ある会社からきた本の執筆依頼を受けたところ、今年の8/5に出ることに決まった。印税は72万8千円で、売れなければこの額で終わり。ぼくは、この本の「目的」について思いを馳せた。
***
この本の目的・・・それを考えていたぼくと、編集者Sかぐちさんとのやりとり。
なお、このメールからぼくはSかぐちさんのことを「Sかぐち様」ではなく「Sかぐちさん」と呼び変えていた。ちょっとでも彼との距離を詰めて、この連載でボロクソに書いても怒られないようにしたかったのは内緒だ。
それに加え、本を作るというのは筆者と編集者の共同作業だ。お互いの信頼があり、お互いがどんな人か知り、お互いに譲れないものが何かをわかっていなければ絶対に本作りはうまくいかない。
そう、手術のときに執刀医と第一助手の意思疎通がなければオペの難易度が跳ね上がってしまうように。
「伝説の編集者」見城徹さん(幻冬舎社長)も、筆者と編集者の関係については
内臓と内臓を擦り合わせて
という表現を使っている。
その意味では、Sかぐちさんと早くサシ飲みをすべきだ。でも、幸薄そうなSかぐちさんは物静かで丁寧だから、ぼくの退廃的で世紀末的な(つまり箕輪さん的な)飲み方にはそぐわないかもしれない。でも早めに飲みに行く必要がある。
そしてSかぐちさんからの返事はこうだ。
冷静。圧倒的冷静。
しかし、「親世代へのプレゼント購入」なんて需要があるんだな。
・・・そういえば、ぼくの前著「幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと」も、かなり多くの方が二冊以上買ってくれて「親にプレゼントしました」と教えてくれた。嬉しかったなあ。
ターゲットは決まり、いよいよぼくは本の目的を考えたのだ。さおだけやの柿内さんに、本当に感謝だ。危うく本質を見失うところだったから。
そして次にぼくが送ったメールはこれだ。
…正直言って、あんまりまとまっていない。
もっとバシッと「一言で」言えるものがいい。そう思っていたら、やはりSかぐちさんもこんな返事を返してきた。
相変わらず丁寧なメール。
「旗」。
なるほど。ホリエモンのゼロでいうところの
「なにもない自分に小さなイチを足していく」
か。
うーん、じゃ、
「なにも知られていない医者に小さなキズをメスで足して行く」
・・・。
あかん、あかんて。
これじゃあ傷害罪だ。
悩んだぼくは、ひとまずこの「本の目的一言で言えない問題」を先送ることにした。
もしぼくがサイバーエージェント社員だったら、クビだろう(詳細は第二回参照)。
そしてそんなことを考えていたある当直明けの朝6時ごろ、ぼくはずっと読み損ねていたある本をkindleで読んだのだ。もしかしたら今回の企画にプラスになるかも、と思い。
それが、これ。
キングコング西野さんの本。
これを読んだぼくは、たしかに聞いたんだ。
頭のなかに鳴り響く、ファンファーレを。
ドラクエのレベル上がったときのような、あのファンファーレを。
沸騰した。血が沸騰した。
ぼくは、早朝からSかぐちさんにメールを送った。
そうだ。
クラファン(クラウドファンディング)やろう。
ぼくは完全に前のめりになっていた。
(第六回につづく)
※この連載は、2018年8月に出版した「医者の本音」(SBクリエイティブ) の、執筆依頼を頂いたときから出版までのいきさつをリアルタイムに記録したものです。アマゾンリンクは↓こちら。kindle版もあります。