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ごめん、眼科教授 第87回 月刊中山祐次郎

こんにちは、皆さんお元気ですか。僕はまあまあです。

今回は私が南日本新聞で連載させてもらっている「朝の文箱」より、許可を得て転載させて頂きます。

それでは、どぞ。驚きのあとがきも添えて。 

2005年、僕は鹿児島大学医学部5年生になり病院実習が始まった。それまでずっと教科書で勉強していた内容が、ついに現実のものとなるのだ。今はない霧島リハビリテーションセンターから始まった僕らの病院実習は、約1年半もの間続いた。 実習は、内科・外科がそれぞれ4週間ずつと長く、それ以外の科はだいたい2週間ずつになっている。慣れぬ白衣を着、聴診器をポケットに入れて、班のメンバー四人で指定された集合場所に行く。朝早い科では7時集合という科もあったが、だいたい9時くらいであった。

その頃興味があったのは産婦人科、外科、小児科、精神科だったが、実際に実習をするとそれまでのイメージが大きく変わった。 産婦人科では学生も宿直があり、病院に泊まり込んで真夜中のお産を見学させてもらった。背の高い美人の女性医師が、初めて見るお産に目をうるませる僕らに言った「産婦人科って良いでしょ。ここはね、病院のなかで唯一、心から『おめでとう』って言えるところなの」を今でも覚えている。確かにそうかもしれない。病院というところは、平常時よりも病める人が、あるいは、社会が求めるよりも機能が低下した人が集まる場所だ。そこから復帰することをもって、おめでとうとは心からは言えないのかもしれない。とにかく僕は産婦人科に強く興味を持った。 

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