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どのような夢を描けば良いのか?

自分が少年だった1960年代、「未来社会のイメージ」といえば、車が空を飛んだり、ロボットが友だちになったり、空中都市ができるようなことだった。あとは宇宙旅行とか、タイムマシンとか‥。1970年の大阪万博(エキスポ 70)では、そういう夢の世界(ロボットとか宇宙船とか月の石とか)がパビリオンに出展され、僕たちはコーフンして会場を駆け回ったものだ。
そういうワクワク感、夢の青写真を今の子供や若い人たちが抱いているか‥‥というと、多分まったく抱いてないんじゃないか。

例えば今、アメリカで世間を騒がせている人物、イーロン・マスクが掲げる未来ビジョンはどんなものか?
このnoteの中に「AIを活用して作成したnote」というものがあり、そこに「イーロン・マスクの夢と現実、資産はやりたいことに追いついているのか?」という記事がある。それによると彼の未来計画は次のようなものらしい。(以下引用)

◉火星移住計画::人類を地球外で生活可能にするため、2030年代までに火星への有人移住を実現しようとしている。
◉ 完全自動運転車: 地球上のすべての車を自動運転に切り替え、交通事故をゼロにする未来を目指している。
◉再生可能エネルギー普及:太陽光エネルギーを効率的に利用することで、地球規模のエネルギー問題を解決。
◉脳とAIの融合:人間とAIをつなげることで、認知能力の拡張や治療の新たな可能性を開拓。
◉ハイパーループ:時速1,000kmを超える高速移動手段で、都市間の移動を劇的に短縮。

これは、さっき述べた1970年の大阪万博の頃の子供たちの夢と、感覚的にそっくりだ。当時の僕ならこれを聞いて大いにワクワクしたに違いない。
しかし60を超えた今の僕は、これらの夢のラインアップにまったく心を動かされない。それは精神が老化したからだろうか?それもないとは言わないが、問題の本質はもっと深いところにあると思う。

最初に書かれている「火星移住計画」がその典型だと思うが、現在の火星には水も空気も食べ物もないので、もし火星に移住しようとするなら、当面の間、人が生きるための資源は地球からの「持ち出し」になる。無論、将来的には火星に内在する資源をテクノロジーによって人間が生きるための資源に変換し、それを使って人類が火星上に定住する時代がやって来るかもしれない。しかしその実現は早くても数十年先の話になるだろう。
それまでの間は地球にある資源の「持ち出し」になるので、そのことは必然的に生態系の破壊をこれまで以上に促進し、僕たちの生活に大きな打撃を与えかねないと思う。

このような時代錯誤な発想が大手を振ってまかり通るとしたら、空恐ろしいことである。その夢の計画が、イーロン・マスクの個人事業だけで完結するのなら、まあ個人の自由だと放っておくこともできるが、彼は昨年末からトランプ政権の中枢に参画し、すでに様々な発言をし始めている。これから彼がアメリカ社会に大きな影響力を発揮する予感がある。このような事態に警鐘を鳴らす文明批評を形成し、議論することが喫緊の課題ではないかと思う。

僕に言わせれば、イーロンは「遅れてきたSFマニア」であって、SFの世界では普通に行われている「火星への移住」や「惑星間移動」を実現しようとする彼の野望は、実に1960年代的だ。僕たちが「地球人」であることの自覚にあまりにも乏しいし、もっと言えば「地球愛」が不足している。
かつて欧州人は、北米、南米、アジア、豪州などに多くの植民地を形成し、その地の資源を手当たり次第に収奪し、森林を伐採し、現地の人々を強制労働に駆り立てた。イーロン・マスクは、このような植民地支配の発想をそのまま火星に持ち込もうとしているように(少なくとも僕には)見える。
もし彼がその資産の半分を「植林」や「野生動物の保護」や「飢餓に苦しむ人たちへの食糧配布システム」に投入すれば、今とはまったく異なる政治的風景が生まれるのではないか?

じゃあ改めて、僕たちはどのような未来社会の「夢」を描けば良いのだろうか?
これは簡単ではないが、時間をかけてじっくり考えてみたいと思っている。
(写真はエキスポ70のアメリカ館の内部)

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