“ひらめき“には2種類あるらしい。
先日、NHKのテレビ番組「ヒューマニエンス」を見ていたら、「天才のひらめき」について解説していました。
人類は他の哺乳類に比べて、脳の外側を覆う「大脳皮質(=言語、計算など知的な働きをする部位)」を大きく発達させてきたのですが、「ひらめき」は、この大脳皮質とは関係のない場所で起こっているということでした。そして「ひらめき」には2種類あるのだと。
1つ目の「ひらめき」が起こる場所は、大脳基底核(だいのうきていかく)といって、大脳皮質の内側にあるかたまりです(下図の緑色)。これは爬虫類から備わっている脳の原始的な部分で、情動をも司っています。
古代の人類は、大脳皮質が今ほど発達していなかったため、オオカミなど外敵に襲われた場合、この大脳基底核を用いて瞬時に次の行動(逃げる、助けを呼ぶ、戦うなど)を選択し、生き延びてきました。今の時代でいえば、サッカー選手がゴールに向かってシュートを打つか、それとも隣の選手にパスするかを一瞬で判断する時。あるいは将棋の棋士が、数ある候補手の中から最適な一手を瞬時に選択する時。こういった時にこの「ひらめき」が勝負の行方を左右します。
これはいわゆる「当てずっぽう」とは違います。当てずっぽうは、過去のデータの蓄積がない状態での未来予測ですが、この大脳基底核のひらめきは、大脳皮質に記憶された過去の豊富なデータの中から最良のものを選択することを意味します。熟練した棋士の場合、これを「一番心地良い手」と表現したりします。論理的に次の一手を計算して割り出すのではなく、イメージで正解にたどり着く。プロの棋士はこの直観をよく使い、例えば詰め将棋を瞬時に解くテストでも正解率は70〜80%に達するそうです。一方、アマチュアはこの直観があまり発達していないため、毎回計算脳を使って次の一手を論理的に考える人が多いようです。それだと瞬時に答えを出すことは難しい。彼らのテスト正解率は40〜50%。プロとの間に大きな差が出ます。
もう1つの「ひらめき」の主役は、“デフォルトモードネットワーク(DMN)“と呼ばれるものです。DMNとは、脳が(本を読む、暗算をするといった)意識的な活動をしていないとき、つまり、ぼんやりしているときに活性化する神経回路です。DMNは、脳の「内側前頭前野」「後帯状皮質」「楔前部(けつぜんぶ)」「下頭頂小葉」といった部位で構成されています。(下図参照)
これらの部位が活性化するときには、大脳皮質はアイドリング状態になっており、そこに溜まっている情報を整理(断捨離)できるようになっています。これによって脳をスッキリさせ、空きスペースを作ります。すると本来別のカテゴリーに所属する情報が、この空きスペースで出会い、結合します。これが“思いもよらぬひらめき“につながるわけですね。近年流行している「マインドフルネス」は「いま、ここ」に意識を集中することで大脳皮質の活動を低下させ、相対的にこのDMNを活性化させる効能を持つと思われます。番組に登場したある学者は、アイデアを得るために毎日2時間の散歩を欠かさないそうです。
以上、番組の受け売りでしたが(^^;)、しかし我が身を振り返ると、確かにピンチに追い込まれた時に、一か八かで選択したことが功を奏することがありますね。いわゆる直感で決める、ということ。そしてそれとは別に、風呂に入っている時などにすごいアイデアが閃くことがあります(←実は大したことなかったりもするのですが(笑)。これも直感なんですが、両者は別の現象なんですね。自分ではごっちゃにしてましたので、大変勉強になりました。どちらも大切な人間の資質ですね。