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<ラグビー>2024年シーズン(3月第二週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 1993年のマースリヒト条約によって、現在の27ヶ国まで拡大したEU(欧州連合またはヨーロッパ連合)は成立したが、その成立に先立って、日本人の中には、第一次世界大戦及び第二次世界大戦という二度の世界戦争、及び19世紀までに度重なったヨーロッパ各国同士の戦争の歴史から、「つい最近まで戦争にあけくれていた国同士が、いきなり統合するなんてできるのか?」と見なす人が一定数いた。
 
 これは、「ヨーロッパの国々」という概念を、例えば極東の国々―日本、中国、台湾、韓国、北朝鮮、ロシア、モンゴル―と同列と捉え、こうした極東の国々が戦争を経ることなく統合することが不可能であるように、ヨーロッパの国々も戦争による以外(つまり、古くはローマ帝国、その後はナポレオンやヒットラーのように)統合はできないと考えているからだと思う。
 
 しかし、ヨーロッパ(ルーマニア)に実際に長期間住んだ実感としては、ヨーロッパの国を極東の国と同列に理解することに間違いがある。私の実感は、ヨーロッパの国は、日本で江戸時代まであった藩と同じものだと思う(ちなみに、英国はイングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドという「国」から構成されているし、アメリカ合衆国の「衆」=「州」は日本の都道府県ではなく、「国」として連邦政府を構成している)。そして、明治になって廃藩置県を行うことで、それまでの藩=国であったものが大日本帝国として近代国家に進化したように、ヨーロッパの国が統合してEUになることも、そうした歴史の流れからみた必然だったのだ。 


1.リーグワン(第9節)結果

スピアーズ東京ベイ・浦安27-31トヨタヴェルブリッツ


 スピアーズの元オールブラックスHOダン・コールズは休場のため、見どころが少なくなっているが、ヴェルブリッツはアーロン・スミスとボーデン・バレットのオールブラックスHB団がプレーする。ゲームは、前半は8-7とスピアーズがリードしたが、後半に入りヴェルブリッツが逆転。そのまま最後までリードして逃げ切った。FB高橋汰地が2トライ。ヴェルブリッツは、SHスミスとSOバレットの高度なスキルにチームが合わせられてきて、それが得点につながっている。一方のスピアーズは、スミスやバレットのような高度なスキルを出せる選手がいない。

横浜イーグルス34-17静岡ブルーレヴズ


 どちらも今シーズンは勝ち切れないチーム同士の中位争い。実績からはイーグルスか。ゲームは予想どおりにイーグルスが終始リードし、実力通りに勝利した。12番CTB梶村祐介が前半に連続して2トライを記録した他、CTBとして良いリンクプレーを見せている。元々エディー・ジョーンズが好むフィジカルに強い選手なので、日本代表に返り咲くのではないか。ブルーレヴズは、クワッガ・スミスのワンマンチームであった弊害が残っていて、チームとしてのアタックが機能していないように見える。

東京サンゴリアス34-14花園ライナーズ


 サンゴリアスは、ここまでの勝利に大きく貢献してきたFLサム・ケーンとWTBチェスリン・コルビの二人を、怪我で二ヶ月程欠くこととなった。しかし、主力を欠いたサンゴリアスだが、13番CTBイザヤ・プニヴァイが前半に2トライするなど、代わりの選手たちの活躍で完勝した。サンゴリアスFL箸本龍雅は、学生時代の派手なアタックからFLらしい地味なプレーを堅実にやる選手に変貌し、非常に良い選手に成長しているので、代表入りの期待が膨らんでいる。負けたライナーズは、SOクエード・クーパーのワンマンチームになるしかないのだが、それがなり切れていないのがチームに最も足りない点ではないか。

埼玉ワイルドナイツ36-24ブレイブルーパス東京


 今週一番の注目されるゲームかつ無敗同士の対決となった。ブレイブルーパスは、FLマイケル・リーチとLOジェイコブ・ピアースが欠場、ワイルドナイツは、SO山沢拓也とPR稲垣啓太がそれぞれ欠場しているが、ブレイブルーパスの勢いがどこまで迫れるかが注目された。

 ホームのワイルドナイツは、ブレイブルーパスSOリッチー・モウンガの個人技でいきなりトライを先行されたが、風上を利してすぐに取り返し、その後はSO松田力也のPGで前半を19-10で折り返す。後半も終始リードを保ち、66分と70分にブレイブルーパスに連続トライを許して5点差まで迫られたものの、80分にトライを挙げて最後に突き放した。ワイルドナイツの強さがさらに証明された結果となった。

 ワイルドナイツは、目立った特定の選手が出てこないくらい全員が良いプレーをしていたが、ブレイブルーパスでは、HO原田衛、LOワーナー・ディアンズ、NO.8シャノン・フリッゼル、SOリッチー・モウンガが目立つプレー振りだった。特にディアンズは、試合を重ねる度に加速度的により良い選手に成長し続けている。

三重ヒート14-24ブラックラムズ東京


 ブラックラムズはここで勝利を得ておきたいが、ヒートも勝利を得られるチャンス。ヒートはミッチェル・ハント、ブラックラムズはアイザック・ルーカスのともに正SOをリザーブに下げており、二番手SOの出来が勝負に影響しそうだ。試合は、お互いに拙攻が目立つ中、終始リードしたブラックラムズが勝利した。ヒートは数度あったアタックチャンスに取り切れない決定力の無さが敗因となった。

相模原三菱ダイナボアーズ14-43神戸スティーラーズ


 ダイナボアーズは連勝の勢いをスティーラーズ相手にも発揮できるか?一方のスティーラーズには、オールブラックスNO.8アーディ・サヴェアの先週に続く大爆発を期待したい。そして、ダイナボアーズでサヴェアに対抗するのは、元オールブラックスのNO.8ジャクソン・ヘモポとなる。

 ゲームでは、風の影響もあったダイナバーズがこれまでの勢いを出せなかった一方、スティーラーズは、反則が多かったものの強固なディフェンスを基盤に力強い試合ぶりで圧勝した。特にSOブリン・ゲイトランドは、元々キックが得意な選手であったが、日本に来てからランプレーの良さを発揮しており、彼にとって新たなプレーの可能性を見つける良い機会になっている。先週はアタックで大活躍したサヴェアは、今週はディフェンスで素晴らしい活躍をした。彼のプレーを間近に見られる日本のファンは幸せだ。

2.スーパーラグビー第三週結果

 今シーズンは、スーパーラグビーのTV中継が日本でまったくないのが寂しすぎる。世界最高のラグビーを見る機会は、ラグビーファンのみならずラグビーを学ぶ中高生の最高のお手本になるものだ。そして、もしTV中継をしない理由として、日本のチームや日本人選手がプレーしていないということであれば、サンウルヴズを復活させるしかない。しかし、復活できない理由にスポンサー(経営母体)ということがあるのであれば、その代わりにワイルドナイツとサンゴリアスの2チームが、安定した実力と経営母体から、スーパーラグビーに参入できるのではないか。また、そうなって欲しい。

モアナパシフィカ23-29レベルズ


 先週ドルアに勝利したモアナは、レベルズ相手に連勝したかったが、惜しくも6点差で敗れた。モアラは、61分に20-19と逆転したが、その後シンビンを出したことも影響し、レベルズに連続トライを喫して逆転負けした。モアラのジュリアン・サヴェアは、イズラエル・フォラウの記録を超える通算61トライを挙げ、スーパーラグビー史上の最多トライ保持者となった。

ワラターズ21-23ハイランダーズ


 クルセイダーズに勝利して自信をつけたワラターズに対して、ハイランダーズが良いゲームで勝利したい。そしてハイランダーズが、12番CTBサム・ギルバートの成功率の高いGKにより66分までに16-23とリードした後、ワラターズにトライを返されたものの、SOテイト・エドモンドのコンバージョンとPGの失敗にも助けられて、接戦を勝ち抜いた。この勝利は大きい。

フィジードルア20-10クルセイダーズ


 連敗のクルセイダーズとしては、ここはマストウィンのゲーム。しかし、クルセイダーズは前半を10-10と同点で終えた後、後半はドルアにトライ・コンバージョン・PGを決められた一方、自身は無得点に終わってしまい、史上初となるまさかの開幕3連敗となってしまった。この結果は、NZのみならず世界中のラグビーファンが心配している。

ブランビーズ22-19フォース


 ブランビーズは格下相手の取りこぼしは避けられたが、意外な接戦となり3点差の辛勝だった。フォースは、格上相手に善戦したが、勝利は遠かった。

ハリケーンズ29-21ブルーズ


 先週レッドカードになったハリケーンズのジョルディ・バレットは、3週間の出場停止処分となった。これに対しては様々な意見が出ているが、現状のルールでは致し方ない。また、バレットに代わって12番にはリレイ・ヒギンズが入った一方、久々の復帰となるTJ・ペレナラがリザーブに入った。

 ブルーズLOサム・ダリーは、膝の怪我で6週間の欠場となり、ブルーズはキャプテンのパトリック・ツイプロツに続き先発LOを長期にわたって失うことになってしまった。一方、アキラとリエコのイオアネ兄弟など、数人のオールブラックスがメンバー入りしている。

 ゲームは、ハリケーンズが前半を17-7とリードし、後半も72分のトライでブルーズに8点差まで追い上げられたものの、そのまま逃げ切って勝利した。この開幕3連勝はチームにとって大きいものとなった。ハリケーンズ14番WTBジョシュ・ムービーが、キックオフから27分までに連続して2トライを記録した。

レッズ25-19チーフス


 この試合がスーパーラグビーのデビューとなる、チーフスのリザーブSOジョシュ・ジェイコブズは、これからの活躍が期待されている選手だ。一方、レッズのリザーブPRには、元オールブラックス及びハリケーンズのジェフェリー・トゥマガアレンが入っている。また、レッズのSOは元ワラビーズSOマイケル・ライナーの次男で、ワラビーズSO候補であるトム・ライナーがプレーしており、親子二代の代表SOとなることが期待されている。

 チーフスは、前半を15-11とリードされた後、後半も25-19とレッズにリードされ続け、最後は時間との戦いとなってレッズに逃げ切られてしまった。開幕から連勝したチーフスだが、ここでレッズにまさかの敗戦を喫したのは痛い結果となった。

3.シックスネーションズ第四週結果

イタリア31-29スコットランド(HT16-22)


 スコットランドは、CTBシオネ・ツイプロツが怪我で欠場し、CTBはヒュー・ジョーンズとキャメロン・レッドパスのコンビとなった。WTBデューハン・ファンデルメルヴァは、「スコットランド版ジョナ・ロムー」と称されるほど、今シーズンは好調だ。一方のイタリアは、元ワラビーズSOマイケル・ライナーの長男ルイスが14番WTBで先発し、イタリア代表のデビュー戦となった。イタリア生まれのルイスは、イングランドのクラブ(ハーレクインズ)でプレーしていることもあり、父のワラビーズでなくイタリア代表を選択した。

 イタリアがローマで11年ぶりにスコットランドに勝利した。ルイス・ライナーもトライを記録するなど、ゴンサロ・ケサダ監督の新チームは、シックスネーションズで良い試合を重ねており、その成果がこの勝利につながった。一方のスコットランドは、トライ数は4対3と優勢だったが、反則が多く、イタリアSOパオロ・ガルビシにPGを確実に決められたことが負けにつながった。イタリアは、惜しくも勝利を逃したイングランド戦とフランス戦に勝利していれば、シックスネーションズ優勝候補になっていたくらいに今シーズンは実力を伸ばしているので、これからが楽しみだ。

イングランド23-22アイルランド(HT8-12)


 イングランドは先発3人を交代し、リザーブには怪我から復帰のSOマーカス・スミスが戻った。一方アイルランドも、怪我で欠場していたFBヒューゴ・キーナンが先発に復帰した。またアイルランドは、リザーブをFW6人+BK2人にしている。イングランドがアイルランドの連勝を止められるかが注目された。

 イングランドは、20-22の2点差で迎えた81分、アイルランド陣ゴール前に攻めこみ、SOマーカス・スミスの値千金のDGで劇的な逆転勝利を挙げた。ここまで好調だったアイルランドは(「スプリグボクスやオールブラックスの全盛期より強い」と豪語する関係者もいたが)、57分にシンビンを出した後にイングランドにトライを返されるなど、ディシピリンが結果に影響してしまった。しかし、ここは手負いのイングランドが意地を見せた結果となった。

ウェールズ24-45フランス(HT17-20)


 フランスは、主要メンバー数人を所属クラブのプレーに戻したことに加えて、怪我人や出場停止処分もあり、NZ生まれでオーストラリア国籍のエンマヌエル・メアフォーを5番LOに入れるなど、3人のテストマッチデビューとなる選手を入れた。またSOは、マチュウ・ジャリベールの怪我により、FBが本業のトマス・ラモスがプレーするが、リザーブはFW6人+BK2人でSO選任がいないため、ラモスの責任は重い。

 一方ウェールズは、CTBジョージ・ノースをメンバー外にするなど、大幅な交代をしており、ワレン・ゲイトランド監督によれば「多くの選手に出場機会を与えるため」としているものの、実情は波に乗れないチームに刺激を与えるためと思われた。

 しかし、不調のウェールズは同じく不調のフランス相手に、後半42分に24-20と逆転したものの、その後フランスに連続得点を許して完敗してしまい、シックスネーションズでの連敗が止まらない。ショックを隠せないワレン・ゲイトランド監督としては、来週のイタリア戦はなんとしても勝ちたいゲームとなってしまった。もし全敗となった場合は、ゲイトランド監督の去就に影響する可能性が出てきた。

 一方のフランスは、アントワーヌ・デュポン不在の穴を埋められなかったSHに、若手のノラム・ルガルレオが良いプレーを見せるなど、主力不在の危機にチーム全員の奮闘が勝利につながった。またフランスは、来週イングランドに勝ち、アイルランドがスコットランドに負けた場合、優勝できる可能性を残すこととなった。

4.その他のニュースなど


(1)ステイシー・ワアカがリーグへ移籍


 女子ラグビーのブラックファーンズ及びブラックファーンズセヴンズのトライゲッターとして大活躍している28歳のステイシー・ワアカは、今年7月のパリオリンピックのセヴンズに出場した後、オーストラリアラグビーリーグのブリスベン・ブロンコスに移籍することを発表した。

 ワアカは、15人制では2回(2018年と2023年)の女子ラグビーWC優勝、2020年オリンピックセヴンズの金メダル、2018年のコモンウェルスゲームのセヴンズの金メダルと、既に多くの栄誉を獲得した女子ラグビー界有数の名選手だ。

 なお、ブラックファーンズセヴンズからは、2022年にゲイル・ブロートンがリーグに移籍しており、ワアカはブロートンに続く移籍で、リーグ優勝3回の強豪でのプレーを楽しみにしている。

(2)セヴ・リースがモンペリエーと接触?


 クルセイダーズの切り札WTBとしてでなく、オールブラックスで23キャップ、15トライを記録しているセヴ・リース、27歳が、今シーズン終了後にフランスのモンペリエーに移籍するとの報道が流れている。オールブラックスのWTBには優れた人材が多くいるため、リースは新たな活躍の場を海外に求めていると思われる。

(3)ウェールズが、7月のオーストラリア遠征でスーパーラグビーチームとも対戦


 ウェールズは、7月にオーストラリア遠征して、6日と13日にワラビーズとテストマッチを行うが、その後の19日にレッズと試合をすることになった。レッズは、20年前に遠征してきたスコットランドに41-5で勝利しているが、久々のトップレベルの単独の他国代表チームとの試合となる(注:2013年にブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズとの対戦あり)。また、レッズとウェールズとの対戦は1991年が最後となっている。

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