<ラグビー>2024年シーズン(8月第二週)
(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
古来祭りは政りであった。パンとサーカスのサーカスは、見世物や娯楽ではなく祝祭の意味であった。しかし、現代の大衆向けのイベントは、ネガティヴな側面としての祭りの代替物であり、見世物・娯楽としてのサーカスそのものとして、政治の主催者によって「政りのための祭り」として利用されているだけである。それは本来の祭りとしてのサーカスではなく、そこに祝祭=神事としての祭りはない。
神事としての祝祭となる現代の真の意味でのサーカスは、大衆的な見世物・娯楽の世界にはないが、どこにあるかと言えば、大衆という大きな枠ではなく、ベクトルを逆方向に向けて、個人の芸術作品の中にこそ見つけられるのではないか。それは極端に孤立した、内部世界であるが、その世界は限りなく広く深い。つまり、個人の無意識を入口として、祝祭としての集合的無意識に向かえる場所なのだ。
その集合的無意識の世界に、古来の祭りがある。それは神事と政務が同一であった時代の祭り=政りが消えずに残されている世界なのだ。
1.ザ・ラグビーチャンピオンシップ第一週結果
WRの試行ルールを採用して行うこととなった。その概要は、以下のとおり。
(1)レッドカードが出されてから20分後に、当該選手以外の選手を補充することができる。
(2)スクラム、モール、ラックの周辺でSHへのタックルが制限される。
(3)ラインアウトがノットストレートになっても、相手側が競り合っていない場合は、プレーオン(プレー継続)となる。
(4)PK及びコンバージョンのゴールキックは、60秒以内に行う。60秒を経過した場合、PKは相手側のスクラムに、コンバージョンの場合は、センターからの相手ボールによるリスタートとなる。
(5)スクラム及びラインアウトは30秒以内にセットする。遅延させた場合は、相手チームにフリーキックが与えられる。
オーストラリア7-33南アフリカ
南アフリカは、ポルトガル戦の圧勝から17人を交代させた。22歳で4キャップの新鋭サッシャ・ファインベルグンゴメルズルをSOで、エルリッヒ・ロウをNO.8でそれぞれ初先発させ、リザーブ19番ベンジェイソン・ディクソンは初キャップとなった。キャプテンは6番FLシヤ・コリシで、23番のリザーブにSOアンドレ・ポラードが入っているが、SHファフ・デクラークは怪我で欠場した。なお、南アフリカは、2013年以来となるブリスベンでの勝利となった。
オーストラリアは、2人の初キャップとなる選手を入れた。怪我のフレイザー・マクライトに代えて7番FLカルロ・ティザアーノを入れ、20番のリザーブに入ったルーク・レイマーとともに初キャップとなった。また、1番PRアイザック・カレアがセットプレーの強さを評価されて初先発した。SHはジェイク・ゴードン、SOはノア・ノレシオとなり、ワラビーズのHB団は、この二人で固定している。また、前監督エディー・ジョーンズに嫌われていたトム・ライトは、ジョー・シュミット監督になってから信頼を取り戻し、先発FBの地位を保っている。22番SOトム・ライナー、23番WTBディラン・ピーチのプレー振りが期待された。
試合は、キックオフ早々から南アフリカがゲームを支配して、前半を一方的に攻め、0-21とリードする。後半も66分までに2トライを追加して、0-33と早々にゲームを決めた。この後は気の緩みが出たのか、連続してシンビンをもらってしまい、数的有利の状況でオーストラリアが何とか1トライを返す結果となった。南アフリカは、オックス・ノッチェとフランス・マルアーブの両PRがスクラムで圧倒した他、SOサッシャ・ファインベルグンゴメルズルが良いプレーを見せ、アンドレ・ポラードの後継者争いへ向けて大きくアピールした。また、11番WTBカートリー・アレンゼが2トライを挙げ、良い決定力を見せた。
負けたオーストラリアは、アイザック・カレアとアラン・アラアラトアの両PRがスクラムで圧倒された他、HOマット・ファエスラーはディフェンスでチームの足を引っ張ってしまった。さらに、SHジェイク・ゴードンのキックが不調だった他、14番WTBアンドリュウ・ケラウェイは、前半にシンビンとなるなど精彩を欠いていた。
オールブラックス30-38アルゼンチン
オールブラックスは、LOスコット・バレット(キャプテン)とパトリック・ツイプロツの二人が怪我で欠場するため、ツポウ・ヴァアイとサム・ダリーが先発し、ジョシュ・ロードがリザーブに入った。怪我から復帰のウィル・ジョーダンは、23番のリザーブからのプレーとなった。不調のリエコ・イオアネは、13番CTBをアントン・リエナートブラウンに譲り、リザーブの22番に入ったが、ロバートソン監督によれば「スキルに対する信頼性で選んだ」とのこと。SOのリザーブはいないが、FBボーデン・バレットと12番CTBジョルディ・バレット、さらにSHで先発のTJ・ペレナラがそれぞれSOをカバーできる。キャプテン代行は、NO.8のアーディ・サヴェアで、バイスキャプテンは、ジョルディ・バレットとHOのコーディ・テイラーが務めた。
アルゼンチンは、U20代表でキャプテンを務めたエフレイン・エリアスが20番に入り、初キャップを得た。また、7月のテストマッチでプレーしなかった、NO.8ファンマルティン・ゴンザレス、13番CTBルキオ・チンチ、FBファンクルーズ・マリアが、それぞれ先発に入った。16番HOには108キャップのアガスティン・クレヴィイが入っている。キャプテンは、6番FLで101キャップを持つパブロ・マテーラ。
試合は、オールブラックスは、深いキックオフレシーブに対応できなかった他、ラインアウトとブレイクダウンで劣勢となった一方、ハンドリングエラーやパスミス(トライにつながるインターセプトを含む)を連発した結果、アルゼンチンに見事な逆転勝ちを献上した。アルゼンチンは、これで対オールブラックス3勝目となった。最初の勝利は2020年のアルゼンチンでのゲーム、次は2022年のNZのゲームであり、今回を含めてアウェイで2勝していることは、アルゼンチンの実力を証明するものとなった。
個々の選手では、キャプテンの6番FLパブロ・マテーラが近年では最高のプレーを見せた他、7番FLマルコス・クレメール、NO.8ファンマルティン・ゴンザレスのFW3列が活躍した。BKでは、12番CTBサンチャゴ・チョコバレスが良いプレーを見せていたが、後半の逆転勝利につながるトライを挙げた、大ベテランである16番HOアガスティン・クレビイの貢献が評価される。
オールブラックスは、怪我人対応で急遽先発した5番LOサム・ダリーがトライを記録するなど奮戦したが、6番FLイーサン・ブラカッダーと7番FLダルトン・パパリイが良いプレーを見せられなかった。BKでは、SHのTJ・ペレナラの調子が戻っていない上に、SOダミアン・マッケンジーは、トライにつながる良いプレーも見せたが、パスミスを連発するなど不本意な結果となった。また、12番CTBジョルディ・バレットがこれまでのようなプレーを見せられなかった。特に14番WTBセヴ・リースは、今回のチャンスを生かすことが出来なかったので、次の試合ではウィル・ジョーダンに先発の座を返すことになるだろう。
ウェリントンのオールブラックスは、なぜか成績が悪く、2018年以来勝てていない。しかし、来週は圧倒的に強いイーデンパークでの再戦となるので、オールブラックスらしい素晴らしいラグビーで、今回の敗戦のうっ憤を晴らす勝利を期待したい。試合後のコメントでも、サヴェアが繰り返し来週での巻き返しを述べていた。
2.その他のニュースなど
(1)トウィッケナムが、9月からアリアンツ・スタジアムに名称を変更
アリアンツグループは、世界70か国に1億2500万人の顧客を持つ有数の保険及び資産運営の企業グループだが、この度イングランドのみならず世界のラグビーの聖地とされているトウィッケナムラグビー場の命名権を獲得したことを発表した。トウィッケナムは、アリアンツの名称を付けた8番目のスタジアムになる。また、今年9月からの複数年契約としているので、今後しばらくはアリアンツの名称を使用することになった。アリアンツ及びイングランド協会ともに、この契約は、女子ラグビーを含めたラグビーの発展に寄与するためとコメントしている。
しかし、トウィッケナムの名が消えることに対して、多くの関係者が否定的なコメントをしており、ラグビーの聖地である由緒あるスタジアムの歴史に大きな衝撃を与えることとなった。
<個人的見解>
日本では、秩父宮の移転やドーム型と人工芝化だけで、大騒ぎになったので、もし命名権を売却したら大変なことになるだろう。そもそも、故秩父宮殿下のお名前を頂いているのだから、それを勝手に、しかも商業利益のために変更することは、政治的にも許されないだろう。同様に、花園ラグビー場の名前が変わるのは想像できないし、野球でいえば、甲子園球場の名前が変わるのは認められないだろう。一方、後楽園球場が東京ドームにあっさりと変更されたことを考えれば、プロ野球の世界ではスタジアムの名称変更への抵抗感は少ないようだ。
なお、トウィッケナム以外の、世界各地のラグビー場はすでに名称が変わっている。特に南アフリカのラグビー場はしばしば変更されていて、所在地の名称から「ああ、あのラグビー場か」とわかる場合が多い(例:エリスパーク→エミレーツエアラインパーク)。
<訂正:このトウィッケナムの本の書評は書いていないと思っていたが、根のため調べたら、投稿していたので、参考までリンクしておきます。なお、大したことは書いていません。>
(2)ハリー・プランマーが、オールブラックスのスコッドに追加招集
ブルーズのSO及びCTBとしてプレーするハリー・プランマーは、アルゼンチン戦に備えたオールブラックスのスコッドに、怪我のスティーヴン・ペロフェタに代わって追加招集された。26歳のプランマーは、U20代表歴を持つが、オールブラックスに選ばれたことはなく、もしプレーすれば初キャップとなる。(8月3日のウェリントンのゲームではメンバーに入らなかった。)
(3)日本代表カナダ遠征のメンバー
パシフィックネーションズカップの、バンクーバーで行われるカナダ戦に備えた日本代表スコッド35人(FW19人、BK16人)が発表された。キャプテンのマイケル・リーチは休養のため、またフランスの所属クラブからリリースされなかったテビタ・タタフと斎藤直人が、それそれスコッド外となっている。初キャップとなる可能性を持つ選手は、FWの松岡賢太、エピネリ・ウルイヴァイティ、アイザイア・マプスア、BKの村田大和、海老澤琥珀、ニコラス・マッカラン、マロ・ツイタマの7人。最多キャップは、立川理道の56キャップ。相変わらずに、若手かつ経験値の低い選手中心による試行的なスコッド構成となっている。なお、FWアマト・ファカタバは、リハビリテーションとして合宿に参加する。
FW19人 ( )内の最後の数字はキャップ数。
岡部 崇人(イーグルス/29歳/2)、三浦 昌悟(ヴェルブリッツ/29歳/9)、茂原 隆由(ブルーレヴズ/24歳/3)、坂手 淳史(ワイルドナイツ/31歳/44)、原田 衛(ブレイブルーパス/25歳/3)、松岡 賢太(戸スティーラーズ/27歳/0)、木津 悠輔(ヴェルブリッツ/28歳/5)、竹内 柊平(D-Rocks/26歳/6)、為房 慶次朗(スピアーズ/22歳/3)、エピネリ・ウルイヴァイティ(ダイナボアーズ/28歳/0)、桑野 詠真(ブルーレヴズ/29歳/1)、サナイラ・ワクァ(ライナーズ/29歳/5)、ワーナー・ディアンズ(ブレイブルーパス/22歳/14)、サウマキ アマナキ(スティーラーズ/27歳/5)、下川 甲嗣(サンゴリアス/25歳/6)、ティエナン・コストリー(スティーラーズ/24歳/2)アイザイア ・マプスア(ヴェルブリッツ/23歳/0)、山本 凱(サンゴリアス/24歳/1)、ファウルア・マキシ(スピアーズ/27歳/8)
BK16名
小山 大輝(ワイルドナイツ/29歳/2)、藤原 忍(スピアーズ/25歳/2)、村田 大和(京都産業大学/19歳/0)、松田 力也(ヴェルブリッツ/30歳/39)、李 承信(スティーラーズ/23歳/14)、海老澤 琥珀(明治大学/19歳/0)、根塚 洸雅(スピアーズ/25歳/2)、立川 理道(スピアーズ/34歳/56)、長田 智希(ワイルドナイツ/24歳/10)、ニコラス・マクカラン(ヴェルブリッツ/28歳/0)、ディラン・ライリー(ワイルドナイツ/27歳/20)、マロ・ツイタマ(ブルーレヴズ/28歳/0)、ジョネ・ナイカブラ(ブレイブルーパス/30歳/11)、矢崎 由高(早稲田大学/20歳/3)、山沢 拓也(ワイルドナイツ/29歳/9)