<ラグビー>2024年シーズン(10月第四週)
(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
〇 中東(オリエント)地域は、十字軍の時代からヨーロッパ人にとって文明と文化の先進地域として憧れの場所だった。何よりもキリスト教は中東で発生したのであり、またローマ文化の栄光は、長くビザンチン(現在のイスタンブール)に残されていた。それが、19世紀末以降、中東の疲弊に反比例するように、産業革命と植民地貿易で国力を増したヨーロッパが、文明と文化の力により、戦争によらずして中東を凌駕するようになった。
そして、20世紀に入ると、多くのヨーロッパ人が、中東に眠っていた文明と文化の偉大な遺産に対する考古学上の発掘を、膨大な経済力によって行っていく。その時ヨーロッパ人は、今や逆転した国力によって、中東人を金で奴隷の如く働かせ、豪華な大名旅行を楽しんでいる。それは、中東の地に、にわか成金あるいはにわか王侯貴族として君臨するだけでなく、中東の文明・文化の偉大な歴史を、ヨーロッパ人が発掘する=所有(簒奪)することで、物質的だけでなく精神的及び歴史的にも支配した感覚を抱かせたのだった。
〇 2024年10月22日午後16時頃、けっこう人が多い地下鉄の改札を出て、狭い階段を上ろうとしたとき、行列に遅れ気味の女性がいて、その女性を追い抜くのは悪いので、私はゆっくりと後ろを歩いていたが、私の後ろの人が追い上げてきて、私の居場所が狭くなった。それで、左側が上りとなっていたのだが、私の身体が少しだけ下りる人のいない右側にはみ出した。すると、突然前から駆け下りてくる男がいて、私の右肩に「ガツン!」とぶつかって、無言で改札に向かった。
私は、マイナーレベルのラグビーをやっていたので、一瞬よろめいただけで済んだが、これが足腰の弱い老人なら倒れて後頭部を打ち、死んでいたかも知れない。おそらく私にぶつかってきた男は、「上り階段から下り階段にはみ出すんじゃない!」と、自分は正義の味方であるという主張と私的制裁を込めて、私に故意に激しくぶつかったのだろう。相手が私で良かった。相手次第では、その男は殺人罪で今頃捕まっていたかも知れなかったのだから。
1.テストマッチの結果
日本19-64オールブラックス(HT12-43)
(以下、余談を書きます。試合についての記述は、***の後からです。)久々に(プロ化してからはあまり買っていないので)高額のチケットを買って、しかも初めて日産スタジアムに行った。思えば、オールブラックス戦をスタジアムで見たのは、2009年10月31日国立競技場で見た、オールブラックス32-19オーストラリアの試合以来だった。この時は、WTBシティヴェニ・シヴィヴァツとCTBコンラッド・スミスが良いトライを記録して、オールブラックスが順当に勝利したのを覚えている。旧国立競技場の電光掲示板のあるゴールネット裏の席だったが、周囲は日本人よりも欧米人が多く、国立の売店のビールがすぐに売り切れたことが話題になっていた。
今回の日産スタジアムでは、南側ゴールポスト裏の席を取った。15列だったので、グランドレベルに近いのは良かったが、いかんせん陸上競技と併用なので、トラックのスペースによりピッチとの距離が遠い。そして、ピッチの芝が悪いらしく、あちこちで激しくはがれていた。さらに、電光掲示板が意外と小さいので、近眼の私には見づらかった。せめて秩父宮ぐらいの大きさにするか、四面に付けるかすれば改善されると思うのだが。
それから、さらに余談ながら、PCやスマホに弱いおじさん三人が、一人が代表して電子チケットを買っておいたのだが、他の私を含む二人がQRコードを表示させておくのに気づかず、試合前に慌てて電子チケットの新規会員登録(しかも、数字が全角と半角とが入り混じる複雑さ)の試行錯誤を繰り返すという酷さで、国歌斉唱が終わった後にやっと席につくというあわただしさだった。次回は、「ログイン」という文字があったら、きちんと対応しよう。
**********
オールブラックスは、日本戦に備えて若手(といっても、多くは来シーズン以降のオールブラックスの中心となる選手)を加えた23人を揃えてきた。キャプテンのLOスコット、SOボーデン、CTBジョルディのバレット三兄弟、FBウィル・ジョーダン、HOコーディ・テイラー、PRタイレル・ローマックス、PRイーサン・デグルート、LOツポウ・ヴァアイ、NO.8アーディ・サヴェア、SHコルティス・ラティマ―、CTBリエコ・イオアネ、WTBケイリヴ・クラークらはメンバーから外れ、直接イングランドに向かった。これらのメンバー外となった選手は、イングランド戦の23人に入る可能性が大きい。
5番LOパトリック・ツイプロツが82人目かつサモア系としては7人目(タナ・ウマガ、アーディ・サヴェア、ケヴィン・メアラム、ミルス・ムリアイナ、ロドニー・ソーイアロ、ジェリー・コリンズ)のキャプテン(7番FLサム・ケーンと12番CTBアントン・リエナートブラウンがヴァイスキャプテン)となり、SHには怪我から復帰のキャメロン・ロイガード、13番CTBにビリー・プロクター、FBにスティーヴン・ペロフェタがそれぞれ先発した。20番FLピーター・ラカイと23番FBルーベン・ラヴは、初キャップとなった。また、10年に一度の逸材であるロイガード、プロクター、ペロフェタ、ラカイ、ラヴらは、来シーズン以降のオールブラックスで中心選手となることが期待されている。
一方迎え撃つ日本は、相変わらず経験値の極めて低いメンバーながら、怪我から復帰の姫野和樹が7番FLに入った。SOは選択肢のない中で引き続き立川理道が務め、怪我をした場合は、23番のFBをプレーする初キャップとなる松永拓郎に任せるしかない(実際、後半は松永へ交代した)。この他、18番PRオペティ・ヘルは初キャップとなり、そのサイズは武器になっていた。15番FBに、大学生の矢崎吉高が戻って来たが、オールブラックスの才能あふれるBK相手にどこまで戦えるかが楽しみだったが、大差の試合結果からは苦い経験となった。
試合は、おそらくこの試合がオールブラックスとして最後になると思われる、TJ・ペレナラのリードによるハカ(カマテ)で始まった。
しかし、開始早々の5分に、SH藤原忍からの内返しのパスを受けた14番WTBジョネ・ナイカブラが約35mを独走するトライを挙げ、日本が先制する。すぐにオールブラックスは、12分に11番WTBマーク・テレア、16分に5番LOパトリック・ツイプロツとトライを返したが、
日本はよくアタックし、19分にNO.8ファウルア・マキシが、SH藤原からのゴール前ラックからの逆サイドへのパスを受けて見事なトライを挙げ、SO立川理道のコンバージョンは失敗したが、12-14とゲームを振り出しに戻した。
続く20分には、SOダミアン・マッケンジーにNO.8マキシが良いタックルを決め、こぼれたボールをキックした5番LOワーナー・ディアンズが、すぐに追走して拾い、そのまま独走してタッチダウンしたが、TMOの結果マキシのノッコンが確認されて、ノートライとなった。しかし、SHキャメロン・ロイガードのボックスキックへのチャージとともに、このプレーは、ディアンズが既に世界最高のFWの一人であることを証明するものであったと言える。もしディアンズがNZに残っていたら、同じプレーをオールブラックスとして見せたかも知れない、それぐらい秀逸なものだった。
しかし、日本がラグビーをまともにできたのはここまでだった。オールブラックスは、22分にスクラムからのブライドンサイドへのアタックで、まるでアタック練習のように14番WTBセヴ・リースが大外をラインブレイクし、リターンパスをもらった13番CTBビリー・プロクターがあっさりと逆転トライを決めた。その後は、25分に7番FLサム・ケーン、31分に6番FLサミペニ・フィナウ、
34分に3番PRパシリオ・トシ、40分にHOアサフォ・アウムアと、オールブラックスが連続トライを決めて、前半で勝負を決めた。
後半に入ると、次代のスターであるSHロイガードが、タックラーを振り切る力強いトライを挙げたが、その後オールブラックスは、最近の悪癖であるガス欠状態に陥ってしまう。その間に日本は良く抵抗し続け、68分に18番PRオペティ・ヘルガ、ラックサイドでこぼれたボールを拾い、味方選手がオフサイドの位置にいるのを利用して初キャップでのトライを記録した。なお、オールブラックスのキャプテンであるツイプロツが、レフェリーにオブストラクションをアピールしていたが、レフェリーは認めなかった。
これで少しは停滞していた気分が覚めたオールブラックスは、日本のミスにつけ込んで、リースに代わって右WTBに入ったルーベン・ラヴが、73分と81分に連続トライを決め、オールブラックスのデビューを二つのトライで飾った。しかし、最後のトライの後、ラヴがゴールキッカーのマッケンジーにすぐにボールを渡さなかったので、コンバージョンキックの時間が無くなりそうになるアクシデントになったが、マッケンジーは落ちついて決め、オールブラックスの圧勝劇は閉じた。
日本の選手では、スーパープレーを連発した5番LOディアンズと、アタックで奮戦した13番CTBディラン・ライリーの活躍を、これまで同様に高く評価したい。しかし、他の選手は、特にディフェンスで度々穴があくプレーやミスが目立ち、オールブラックスに得点される契機にされていた。総キャップ数やテストマッチを含む試合数の少なさという、日本とオールブラックスには大きな差があるのだが、さらにコーチングの部分でも、大きな差があったと言える。
NZのメディアが、日本代表の選手よりも監督のエディー・ジョーンズにより注目し、オーストラリアで失敗した若手中心のチーム作りの状況を確かめようとしていたが、この試合ぶりからは、「オーストラリアと同じ失敗をしている」と判断されても仕方ないのではないか(最も、日本のメディアはとても優しいので、決してこんな報道をしないだろうが)。
2.主なニュース
(1)ウェリントンが、NPC(NZ州代表リーグ)に優勝
ウェリントン26-23ベイオブプレンティ
80分を終えて、23-23の同点となり、20分間の延長の末、ウェリントンがPGを決めて優勝した。雨中のホームゲームで、SOジャクソン・ガーデンバショップが活躍した他、元オールブラックスWTBジュリアン・サヴェアも2トライを挙げ、このレベルではまだまだ通用することを証明した。また、決勝のPGを決めた22番SOカラム・ハーキングスは、来シーズンのハリケーンズでも活躍しそうだ。
(2)オーストラリア・ワラビーズのスコッド更新
秋の北半球勢との対戦に備えた、NZ人監督ジョー・シュミットによるオーストラリア・ワラビーズの34人(FW19人、BK15人)のスコッドが更新された。NRL(リーグラグビー)から鳴り物入りでユニオンに移籍した、WTBジョセフ・スアアリイが初めて加わった他、海外でプレーしているLOウィル・スケルトンとCTBサム・ケレヴィが復帰した。また、SOテイン・エドマンドとWTBハリー・ポッターの二人が、初選出となった。一方、WTBマリカ・コロイベテは、パナソニックでのプレーを選択しているため、対象外となっている。
なお、これからイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの英国四協会と対戦する代表チームと同時に、代表予備軍であるオーストラリアXVも編成し、ブリストル及びイングランドAと対戦する予定となっている。
FW Forwards: アラン・アラアラトアAllan Alaalatoa, アンガス・ベルAngus Bell, マット・ファエスラーMatt Faessler, ニック・フォレストNick Frost, ランギ・グレーソンLangi Gleeson, アイザック・カイレアIsaac Kailea, フレイザー・マクライトFraser McReight, ブランドン・パエンガアモサBrandon Paenga-Amosa, ビリー・ポラードBilly Pollard, トム・ロバートソンTom Robertson, ラッカン・サラカイアロトLukhan Salakaia-Loto, ウィル・スケルトンWill Skelton, ジェイムズ・スリッパーJames Slipper, カルロ・ティザーノCarlo Tizzano, タニエラ・ツポウTaniela Tupou, セル・ウルSeru Uru, ロブ・ヴァレティニRob Valetini, ジェレミー・ウィリアムスJeremy Williams, ハリー・ウィルソンHarry Wilson
BK Backs: ベン・ドナルドソンBen Donaldson, テイン・エドメッドTane Edmed, ジェイク・ゴードンJake Gordon,レン・イキタウ Len Ikitau, マックス・ジョーゲンセンMax Jorgensen, アンドリュウ・ケラウェイAndrew Kellaway, サム・ケレヴィSamu Kerevi, ノア・ロレシオNoah Lolesio, テイト・マクダーモットTate McDermott, ハンター・パイサミHunter Paisami, ディラン・ピーチDylan Pietsch, ハリー・ポッターHarry Potter, ジョセフ・スアアリイJoseph Suaalii, ニック・ホワイトNic White, トム・ライトTom Wright
(3)南アフリカ・スプリングボクスのスコッド更新
ラッシー・エラスムス監督は、スコットランド、イングランド、ウェールズと対戦するスプリングボクスの34人(FW18人、BK16人)の更新したスコッドを発表した。今回初選出となる選手はいないが、FBダミアン・ウィルムゼ、CTBアンドレ・エスターハイゼン、LOフランコ・モスタート、LOのRG・スナイマンがスコッドに復帰している。一方、SOサッシャ・フェインブルグムゴメズル、LOサールマン・モエラット、PRスティーヴン・キッショフ、LOルード・デヤーガーは怪我により対象外となっている。
この他、SHファフ・デクラークは引き続き選考外となり、ジェイデン・ヘンドリクス、コブス・ライナッハ、ヘラント・ウィルアムスの3人がSHに、そして、SOはマニー・リボック、アンドレ・ポラードが入っている。
FW Forwards: トーマス・デュトイThomas du Toit, ヴィンセント・コッホVincent Koch, フランス・マルアーブFrans Malherbe, オックス・ノッチェOx Nche, ゲルハルト・スティアーカンプGerhard Steenekamp, マルコム・マルクスMalcolm Marx, ボンギ・ムボナンビBongi Mbonambi, ヤンヘンドリクス・ウェッゼルズJan-Hendrik Wessels, エベン・エツベスEben Etzebeth, フランコ・モスタートFranco Mostert, ルーアン・ノッチェRuan Nortje, RG・スナイマンRG Snyman, ピータースティフ・デュトイPieter-Steph du Toit, シヤ・コリシSiya Kolisi, エルリッヒ・ロウElrigh Louw, クワッガ・スミスKwagga Smith, マルコ・ファンスタッデンMarco van Staden, ヤスパー・ウィーゼJasper Wiese
BK Backs: ジェイデン・ヘンドリクスJaden Hendrikse, コブス・ライナッハCobus Reinach, グラント・ウィリアムスGrant Williams, マニー・リボックManie Libbok, アンドレ・ポラードHandre Pollard, ルッカンヨ・アームLukhanyo Am, ダミアン・デアレンデDamian de Allende, アンドレ・エスターハイゼンAndre Esterhuizen, ジェッシー・クリエルJesse Kriel, カートリー・アレンゼKurt-Lee Arendse,アフェレレ・ファッシ Aphelele Fassi, チェスリン・コルベCheslin Kolbe, ウィリー・ルルーWillie le Roux, マカゾレ・マピンピMakazole Mapimpi, カナン・ムーディーCanan Moodie, ダミアン・ウィルムゼDamian Willemse
(4)北半球勢のスコッド更新
イングランド、アイルランド、ウェールズ、スコットランド、フランスのスコッドが、いずれも更新された。
イングランド
数人の怪我人を抱えており、SOジョージ・フォードの怪我からの復帰が待たれている。
アイルランド
2人が初選出となり、NO.8ケイラン・ドリスがキャプテンを担う。
ウェールズ
2人が初選出となり、HOドウィ・レイクが引き続きキャプテンとなる。
スコットランド
CTBシオネ・ツイプロツがキャプテンとなり、5人が初選出となった。
フランス
オリンピックのため外れていたSHアントワーヌ・デュポンが復帰した。8人が初選出となり、SOロメイン・ヌタマックは怪我のため選考外となった。また、アルゼンチン遠征で訴えられたFBマチュウ・ジャリベールは、懲罰期間を終えてスコッドに戻っている。
(5)ウェイン・スミスは、リザーブの削減に賛成
現在NZ男女代表コーチの総括的役割を果たしているウェイン・スミスは、WRの試験的ルールについて賛成しており、NZはもともとパイオニア精神にあふれるラグビーを志向しているので、こうした改革には早期に適合できるメリットがあると述べている。
一方、WR会長を間もなく退任するビル・ビューモントが、ザ・タイムズ紙とのインタビューで、自分が最もやり残した仕事の一つにリザーブの人数削減があったとして、「ゲームの勝敗が最後の20分間(のリザーブ選手)だけで決まってしまう」と批判しているが、これにスミスは同意する。しかし、リザーブ人数削減については、これまで削減を進めるための良い材料が出ていないこともあり、改革へ進まないのが現状だ。
この現行のリザーブ8人制は、それまでフィジカルの強さからフィットネスが足りずに、後半60分以降失速していた南アフリカが、最大の利益を受けている。南アフリカは、この制度を利用して、FW8人のうち7人を交代させる「ボンブスコッド(爆弾スコッド)」によって、RWC連覇という成果を得た。ビューモント会長は、このリザーブ数の多さが南アフリカのラグビーに適合していることを認める一方、その影響が長くまた強くなりすぎていると指摘している。
また、前スコットランドのコーチであるマット・ウィリアムスも同意見で、「南アフリカのFW偏重のリザーブ起用は、BKの存在をないがしろにし、(怪我人による交代という)安全のためのルールを悪用している」と批判する。さらに、前アイルランド代表HOキース・ウッドも、リザーブ人数の削減に賛成している他、レフェリーとして長年活躍してきたウェールズのナイジェル・オウウェンスも、「リザーブの人数を検討(削減)すべき」と主張している。
オウウェンスによれば、「リザーブの人数が多すぎる。8人から4-5人に減らすべきだ。または、テストマッチレベルでは、選手が怪我した場合の交代に限定し、戦術的交代は認めないようにする(のが良い)」、「(リザーブの人数削減は)ゲームを改善できる。後半残り20分で戦術的交代をして、15人中8人が新鮮な選手になるということは、チーム全体が変わるのに等しい。80分をプレーしている選手がいるのに対して、わずか20分のみプレーしている(のは不公平だ)」と批判している。
ところでスミスは、今秋の南北対決で適用される試験的ルールのうち、スクラムやラインアウトの時間制限や、SHに対するディフェンスの制限は、ゲームのスピードアップに大きく貢献すると賛成しており、コーチや選手が、ゲームのスピードアップをするためのよい刺激にすべきと高く評価している。
<参考>
南アフリカは、元々強く大きいフィジカルでオールブラックスに勝ってきたが、ラグビーの進化に伴い、そのフィジカルの大きさ故のフィットネス不足により、後半はディフェンス力が落ち、オールブラックスのアスリートたちに走り回られて負ける試合が続いた。しかし、リザーブの人数が8人に増え、さらに怪我人でない場合も交代できるように変更された(戦術的交代)後、とりわけ現在のラッシー・エラスムス監督は、リザーブ8人中FWを7人にし、FWの選手の大半は80分の試合時間のうち40分だけプレーすれば良いように運用して、RWC連覇を果たした。
従って、現行ルールの最大の恩恵を受けているのは南アフリカであることに間違いない。一方、高いアスリート性でラグビー界をリードしてきた、オールブラックスやオーストラリアなどは、南アフリカに代表されるフィットネスよりもフィジカルでプレーするラグビーに勝てなくなってしまった。これは、勝つためには「フィットネスは無視して、単純にでかくて強い選手を揃えれば良い」という、ラグビーの進化に逆行することとなってしまい、ラグビーが世界的なエンターテイメントに発展するための阻害要因になっていると見なすのが、異論のない現状だと思う。また、フィジカルで劣る日本にも大きく影響している。
ラグビーは、何よりも走って、パスして、トライをするスポーツだ。ここにスクラムなどのセットプレー、ラックやモールの集団技術、タックル・ステップ・キックの個人技、そしてチーム全体としての戦略や戦術が組み合って構成されている。この基本から外れている以上、リザーブ人数の削減は必須であると言わざるを得ない。