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銀魂作者が語る自信の本質:努力と成長の原動力

多くの人が「自信」を成功の鍵だと考えています。しかし、人気漫画「銀魂」の作者、空知英秋氏は、この常識に挑戦する興味深い見解を示しています。

ある読者から空知氏に次のような質問が寄せられました:

私には夢があります。ですが、マイナス思考ゆえに「他の人より劣っている私が夢を叶えられるのか」など、マイナスのことをたくさん考えてしまい、自分に自信が持てません。空知先生はどのようにして自信をつけていますか?

空知英秋 銀魂69巻 集英社

この質問に対する空知氏の回答を通じて、自信の本質と成功への道筋について考察してみましょう。

1. 自信は必要ない?新しい視点

空知先生は冒頭で衝撃的な一言を投げかけます。

自信なんて持つ必要ないと思いますよ。

空知英秋 銀魂69巻 集英社

これは一見、従来の自己啓発論と矛盾するように見えます。しかし、この言葉の背後には深い洞察があります。

心理学者のアルバート・バンデューラが提唱した自己効力感理論によれば、自信は行動の原動力となります[1]。しかし、空知氏の主張は、自信そのものよりも、努力の継続性や適応能力に焦点を当てているのです。

2. 比較の力:成長のための燃料

空知氏は続けてこう述べます。

人より劣っている自分が勝つためにはどうしたらいいかという考えは夢をかなえる前でも後でもずっと持っていた方が良いと思います。

空知英秋 銀魂69巻 集英社

この考え方は、社会心理学者レオン・フェスティンガーの社会的比較理論[2]を独自に解釈したものと言えます。通常、自分より劣っている人と比較する「下方比較」は自尊心を高める効果があるとされますが、空知氏はむしろ「上方比較」を動機づけの源として活用することを提案しています。

3. 成功者の不安:イムポスター症候群との関連

第一線を走る方ほど自分の作品の人気やアンケートに敏感だし、そこに関してだけはいつもビクビクしているし、大変臆病に見えます。だから努力を惜しまないんです。

空知英秋 銀魂69巻 集英社

この指摘は、心理学で「イムポスター症候群」[3]と呼ばれる現象と関連しています。成功者でも自信がなく、常に不安を抱えているというのです。しかし、空知氏はこの不安を否定的なものとしてではなく、努力の原動力として肯定的に捉え直しています。

4. 思考より行動:認知行動療法の視点

肝心なのはプラス思考だろうとマイナス思考だろうとそのあとの行動「努力」に必ず結びつける事で

空知英秋 銀魂69巻 集英社

この見解は、認知行動療法[4]の基本原理と一致します。思考パターンの変容よりも、行動の変容に重点を置いているという点で、最新の心理療法の潮流とも合致しています。

5. ネガティブ感情の再評価:レジリエンスの鍵

じぶんより結果を出している人への嫉妬や妬みだったり将来への不安や恐怖だったり、そういうカッコ悪い思考だって努力するための原動力にはなるでしょ。

空知英秋 銀魂69巻 集英社

この視点は、心理学者ジェームズ・グロスの感情調節理論[5]における「認知的再評価」戦略の独自の応用と言えます。ネガティブな感情を単に抑制するのではなく、それを成長の機会として再解釈する能力は、心理的レジリエンス[6]の重要な要素です。

6. エネルギー変換の哲学:成長マインドセットへの道

空知氏は最後にこう締めくくります。

マイナスでもカッコ悪くてもなんだってエネルギーに変換する術を覚えましょう。燃えたらもうバレません。ちゃんとした焚き木でおこしていようがエロ本でおこしていようが火は火です。でっかく燃えた奴が勝ちです。

空知英秋 銀魂69巻 集英社

この比喩的な表現は、心理学者キャロル・ドゥエックの成長マインドセット理論[7]と通じるものがあります。困難や失敗を恐れるのではなく、それらを学習と成長の機会として捉える姿勢が重要だというのです。

結論:新しい「自信」の形

空知氏の回答は、従来の「自信」の概念を超えた、より実践的で持続可能な成功へのアプローチを提示しています。自信そのものよりも、努力の継続性、ネガティブな経験の再評価、そして常に学び続ける姿勢が重要だというメッセージは、現代の心理学研究とも整合性があり、多くの人にとって励みになるでしょう。

私たちに必要なのは、揺るぎない自信ではなく、あらゆる経験から学び、成長し続ける能力なのかもしれません。それこそが、真の意味での「自信」と言えるのではないでしょうか。


参考文献

[1] Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191-215.

[2] Festinger, L. (1954). A theory of social comparison processes. Human Relations, 7(2), 117-140.

[3] Clance, P. R., & Imes, S. A. (1978). The imposter phenomenon in high achieving women: Dynamics and therapeutic intervention. Psychotherapy: Theory, Research & Practice, 15(3), 241-247.

[4] Beck, A. T. (1979). Cognitive therapy and the emotional disorders. International Universities Press.

[5] Gross, J. J. (1998). The emerging field of emotion regulation: An integrative review. Review of General Psychology, 2(3), 271-299.

[6] Bonanno, G. A. (2004). Loss, trauma, and human resilience: Have we underestimated the human capacity to thrive after extremely aversive events? American Psychologist, 59(1), 20-28.

[7] Dweck, C. S. (2006). Mindset: The new psychology of success. Random House.

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