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“人類に宇宙を解放する” SONY発の宇宙プロジェクト


ついに
あのSONYが宇宙へエンターテイメントの域を広げようとしている。

SONYといえば、テレビやカメラ、ゲーム機といった家電製品から半導体、映画、音楽、金融…
非常に多岐にわたる事業を走らせる名の知れた大手大企業だ。

しかし、そんな多事業をこなすSONYでも
これまで ”宇宙” に手を伸ばすことはなかった。

宇宙をプラットフォームにする事業というのは、周知の事実として大規模なコストと挑戦的なリスクを負うことが、現段階の宇宙産業レベルでは必須。
しかしそんな中、SONYは野心的で ”SONYらしい” 宇宙プロジェクトを始動させた。


その名は 「STAR SPHERE」

©︎sony/star sphere



SONYが見出す「感動 × 宇宙」の可能性


STAR SPHERE


宇宙をすべての人にとって身近なものにし、みんなで「宇宙の視点」を発見していくプロジェクト ー
quote: sony / star sphere

こちら、SONY STAR SPHEREプロジェクト公式HPより引用した本プロジェクトの存在意義。
本文の中に、「宇宙の視点」というユニークなワードが挿入されているが今回のプロジェクトが見せてくれる宇宙の視点とはどのような視点なのか。同HPよりこの様な記載がある。

宇宙は、個人の生活を豊かにし、悩みを振り払ってくれる視点、人生を切り拓く指針を与えてくれる視点、地球環境の保護や人類の普遍的な価値観を提示する視点など、社会の変革につながる視点まで、様々な気づきをもたらします ー
quote: sony / star sphere

抽象的で神秘的な表現がなされているが、ここで重要なことは上記の視点をSTAR SPHEREが届けたい訳ではないということである。

では、我々の様な宇宙産業従事者でもましてや、宇宙飛行士でもない地に足をつけ暮らす人間に一体何を届けてくれるのか。

それは、「目」である。

STAR SPHEREでは、人間一人の力では到底届きやしない宇宙という新世界に我々の新たな ”目” となる人工衛星を送ることで、「宇宙を通じて物事をみる」という新たな視点を我々に届けるという内容のプロジェクトなのだ。
そして、本プロジェクトの意義を説明する上で、非常に重要なことをSONY CTOである北野宏明氏が ”宇宙感動体験 × 杉本博司 対談シリーズ” の動画内で語っていた。

宇宙というのは無限の存在故に、人の受け止め方は無限通りある。
だからこそ、SONYが持つ技術を使いアイデアを提供しながら様々な可能性を一緒に探していく ー
SONY CTO  北野宏明

我々が実際に宇宙を目にした時に、どのような思想、アイデア、気づき、視点が生まれるかは無限通りある。そこにこそ、この本プロジェクトの真価が表れてくる。



そして、STAR SPHEREプロジェクトの主人公であり、我々の目となり新たな視点を開眼させてくれる人工衛星の名は、


”EYE”

©︎sony/star sphere




小さな衛星が魅せる大きなロマン



本プロジェクトでは、3つの組織がタッグを組み運用している。

東京大学 × SONY × JAXA

それぞれの大まかな役割として以下のような分担がなされている。

・SONY
→衛星のミッション部(カメラ部分)の開発、全体のシステム構築を担当
・東京大学
→衛星の基本機能(バス部)開発を担当
・JAXA
→事業・研究開発計画の支援を担当

EYEのスペック図解
©︎sony/star sphere

この役割分担は各組織が持つ長所を生かした立ち位置であると考えられる。
SONYは、イメージングやセンシング技術を有しながらもこれまで衛星開発に関しては経験がないため、そこを補う形で東大、JAXAのタッグが必要であった。また、東京大学が開発担当するバス部には推進系の開発が含まれている。
そして、ここを今回担当したのが東大発ベンチャー企業「Pale Blue」である。



持続可能な新エンジンを手掛ける Pale Blue

©︎Pale Blue HP

小型人工衛星EYEの推進系として搭載された水蒸気式推進機(通称:水エンジン)がPale Blueより提供された。
この水エンジンの特徴は、人工衛星はやぶさにも搭載されていたプラズマ式推進機の弱点である消費電力の大きさ、酸化耐性の弱さを克服するマイクロ波を用いた超低電力プラズマ生成技術である。
また、公式HPよりこの水エンジンを利用する上でのメリットを以下の3軸にまとめ記載している。

1. Safe(安全)
・推進機を複数組み合せたデザイン(クラスタリング)により、幅広い衛星のサイズや推力要求を満足
2. Affordable(低価格)
・他の推進剤(ヒドラジン、キセノン等)に比べて調達価格が安い。安全性に伴い、搭載・運用コストも低減可能
3. Sustainable(持続可能)
・地球だけではなく、宇宙環境でも豊富に実在するエネルギー資源であるため、需要が大幅に拡大しても対応可能
quote: Pale Blue HP

そして、この推進機をEYEが活動をしていく中で、高度の減少に伴い軌道維持の手段として使用することで、活動寿命を約2.5年間まで引き延ばす予定でいるそうだ。


SONYの前に立ちはだかる壁

SONYの開発担当であるカメラ部は、SONYのお得意の分野で心配ないと思う人は少なくないと思う。
しかし、宇宙となればこれまでの常識は無情にも裏切ってくる。
宇宙空間でも確実に動く技術というのは、これまでSONYが蓄えてきたノウハウの倉庫には一つも該当するものがないのだ。だからこそ、東大、JAXAといった宇宙分野の玄人から様々な教授を得て一つ一つ、壁を超えていかなければならなかった。


ここで、一社紹介しておきたい企業がある。
それは、スウェーデンのカメラブランド HASSELBLAD である。
そしてこの写真を見てほしい。

©︎NASA, HASSELBLAD

この写真はアポロ計画時に行われた船外活動(EVA)を行う宇宙飛行士を、HASSELBLADのカメラが ”宇宙空間から” 捉えた一枚である。
アポロ計画というのは、アメリカの国家計画として運用された宇宙開発事業で当時は1961年〜1975年の間で動いていた。
そして、この年代の技術力でHASSELBLADは、宇宙空間でも確実に動いてみせるカメラを作り上げたのだ。この企業技術というのは語り継がれるべき誇りでもあり、現代では他社のLeicaといった様な高級カメラブランドとして、カメラユーザーから憧れの的の立ち位置を手にしている。


サービス


STAR SPHEREでは、大きく分け2つのサービス提供を行う予定である。

・宇宙撮影体験ツアー
地球一周旅行をツアー仕立てで届けるパッケージ。
ツアー中には自由に撮影が可能であり、撮れた一枚はあなたがシャッターを押した、唯一無二の写真となる。

・プレミアム宇宙撮影体験
上記の貸切版パッケージ。
しかし、参加者の希望により寄り添うために「どんな軌道で」「どんな被写体を」「どのようなカメラワークで」「どのように表現(カメラのパラメーターを設定)するか」などを自身で決定することが出来る。まるで、EYEが自分のもう一つの目の様に、宇宙空間を見渡してくれる魅力とロマンが詰まったプランである。



これからの展望


では、最後にSTAR SPHEREプロジェクトが照らすこれからの展望を述べることで、本記事のまとめとさせて頂く。
本プロジェクトは、頼もしいチームメイトがついているとは言え、主催者のSONYにとって初々しい宇宙産業本格デビューである。
だからこそ、このプロジェクトを遂行することで得られる知見は計り知れない。これをキッカケに多岐に渡る事業展開をするSONYは、また新たな“宇宙”をプラットフォームした事業を展開していくスタートラインに立つことになるだろう。
ここからSONYが魅せる「感動 × 宇宙」のエンターテイメント事業がどのように進化していくか、一ファンとして非常に期待したいところだ。


本日のサムネ


本日のサムネは、以下の3枚のフリー画像から制作しました!

Before

After

宇宙という大海原を人類に解放するということで、海の画像のバックに宇宙と合成しました。
宇宙飛行士でもない我々が、宇宙という新世界にEYEを通して飛び込むという意味から宇宙服を着ていないカジュアルな格好で海を泳ぐ格好の人物の画像を探すのに少し手間がかかりました(汗)




WRITER: Yuji TAKAHASHI

宇宙工学を専攻する大学生。
宇宙ビジネスの分野を独学で学び、そのアウトプットを兼ねた情報発信でNoteでの投稿を開始。
SNSでも、様々なニュースを自分の意見と共に発信。

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