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活字弱者がレビューする名作小説【青の炎】

 僕は活字を読む習慣が無い教養浅めメンですが、バチバチと音を立て、燃え広がっていく真っ赤な炎より小さく静かに燃える青い炎の方が実は温度が高い、なんてのはギリ知ってます。

今回レビューする小説はまさにそのタイトルにピッタリ、、、、いや、自らを青の炎だと必死に言い聞かせて行動する高校生が主人公のお話です。



あらすじ

秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹の三人暮らし。その平和な生活を乱す闖入者がいた。警察も法律も及ばず話し合いも成立しない相手を秀一は自ら殺害することを決意する。

【青の炎】の様に犯人視点で進むミステリーを
       倒叙ミステリー
と呼ぶみたいですね。
複雑な謎解きが醍醐味のミステリーですが、謎解きが苦手な方でもハラハラ感を楽しめるのが倒叙ミステリーの魅力ですね。

 余談ですが、子どもの頃は家のトイレに赤川次郎の小説が何冊か常に置かれていて腹痛で籠る際は気を紛らわせる為に読んでました。
内容は勿論全く覚えてませんし謎もマトモに解けなかったですが。


【はじめに】

めっちゃくちゃ切なく哀しい話です。
読んでてハッピーエンドなんて有り得ないこと、束の間の平穏もまさに束の間であることが察せてしまうんです。特に最後の約50ページ、読み進めるのが本当にしんどかった、、、

僕が感じた魅力をポイントに分けて紹介します。

①救いはあるのか。若すぎる主人公の苦悩

櫛森秀一は所謂優等生です。勉強、運動は出来るし成績も良く、仲の良い友人にも恵まれサボることもない。
一方で背伸びしがちな高校生らしく自転車やパソコンのカスタムに凝っていたり、友人から仕入れてこっそりウイスキーを嗜んでいたり、、、

そんな彼の平穏を脅かすのは10日前から突如彼らの家に乱入してきた母親の元夫曾根です。
まさに暴漢。母の稼ぎに手を出しギャンブル、酒、暴力。
秀一は警察や弁護士に必死に相談しますが様々な要素が絡み合い現状を覆すことができず。
母、妹にまで降りかかる人災は責任感と家族愛の強い秀一を追い詰めます。
家族を救うには?
曾根を追い出すには?
皆んなの平穏を取り戻すには?

曾根を殺さなきゃ。

若さゆえの短絡的な結論と思われるかもしれませんが、心に覚悟を灯し完全犯罪を計画する彼はまさに青の炎。しかし曾根を燃やしさえすれば綺麗に鎮火する、そんなものではありませんでした。(この真相は是非本編で)
人を殺すということ。瞬間の情景、五感。今後一生心に残り続ける“殺し”という性格。
それを忘れることは決して無く毎夜悩まされ続けます。

呪術廻戦より

この小説では街の景色、その日の天気、気温などが日が変わる度に細かく描写されるのですが、それらの副要素が出来事を読者にも強く植え付けさせるんですよね。
曾根さえいなくなれば皆んな幸せになれるのに。そう信じて行動したはずなのに。
彼が徐々におかしくなっていく、徐々に追い詰められていく様は哀しく目を背けたくなりますが、必見です。

②倒叙ミステリー特有のハラハラ感

冒頭でも紹介しましたが、今作は犯人視点で物語が進む倒叙ミステリーと呼ばれるものです。
通常のミステリーでは“犯人発覚→苦悩暴露“のパターンが多いですが、倒叙ミステリーでは犯人である主人公のパーソナリティやどのようにして犯行に及ぶ事になったのかを丁寧に描写するのでそれはもうめちゃくちゃ犯人側に感情移入してしまいます。

とてもとても僕なんかが「殺しはダメだ」なんて言えない、寧ろ曾根はこの世から居なくなるべきだと思ってしまいます。
故に完全犯罪が成立して欲しいしずっと誰にもバレずに幸せに過ごして欲しい。
けれどそんな訳にはいかないのだと読者も分かっているからこそ、束の間の平穏でさえも油断できないハラハラ感が作中を覆っているんです。

まとめ

今回は貴志祐介作の【青の炎】をレビューしました。心が震わされる作品なので是非機会があれば読んでいただきたいです。

余談ですが前回レビューした【プラチナデータ】同様、こちらもニノ主演で映画化しています。
選んだのは全くの偶然です
最近旧ジャニーズにどハマりしており、ネトフリのタイプロ超楽しみにしてます(更新頻度増やしてくれ〜)

ニノ主演被りしてるあたり、なんか陰謀というか因果を感じるなぁ()。

あ、舞台となっている鎌倉も聖地巡礼してみようかな(鵠沼をずっと鷺沼だと思ってました)。

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