社内外の情報源のどちらを重視すべきか?
仕事で高いパフォーマンスにつながるきっかけとなる知識を、会社内と会社外のどちらで探索するのに時間をかけるべきか?
高いパフォーマンスをイノベーションと仮に定義するとします。イノベーションは既存の知識を組み合わせて新しい何かを生み出すことと言われていますので、従来にはなかった組合せを求めて、会社外との交流を増やす方が結果につながるようにも思えます。
しかし、実は一定程度までは社内探索の方が結果を出しやすく、社外から探索するなら圧倒的に探索の幅を広げる必要がある、という研究結果があります。
米国IBMの技術者に対して、社内の人との交流をメインにしている人および社内の文書をメインに参照している人と、社外の人との交流をメインにしている人および社外の文書をメインに参照している人を比較して、どちらがよりイノベーティブな特許取得につながっていたかを調査したものです。
薄いグレーのほうが、社内との情報源をメインに活用しているしているグループで、濃いグレーが社外の情報源をメインに活用しているグループです。縦軸が特許数を参照したイノベーティブなアウトカム、横軸が外部探索の幅の広さです。
この研究は特許に繋がるような話なので、技術寄りの話ではありますが、「知識」「情報」の探索という意味では、営業・マーケティングの見込み顧客やクロスセルの機会の発見や、仕入先の発見、協業機会の発見にも応用できるはずです。
営業の文脈では新規取引先よりも既存取引先の方がLTV(顧客生涯価値)が高いと言われています。これは新規取引先獲得には信頼獲得から受注までの獲得コストが高く、既存取引先はその獲得コストが比較的小さいので、既存部署への追加提案や他部署への提案が結果に繋がりやすいからです。
仕入の文脈では、自社のサービスの成果物の品質を担保するために、仕入先とも長期的な関係を構築して、自社を優先してくれるようなところと付き合うことが、通常は良い結果に繋がりやすいです。
社外の情報源との接点をもつのは結局「人」であるため、その人が注意を向けることができる範囲は限られており、探索の幅と注意力はトレードオフの関係にあるといえます。(一方を重視すると、他方を犠牲にせざるをえない。)
それではトレードオフをどう克服していけばいいのでしょうか?
社内にもいろいろなひとが顧客接点や仕入先との接点をもっていて、ノウハウの蓄積もあるため、まずはそこをしっかり活かしきるような組織内コミュニケーションのデザインが重要になります。
そして社外といっても、既存取引先や既存仕入先に関しては、共に自社のサービスを作り上げる存在であることから、関係性をデジタルで記録・管理していく仕組みづくりが必要です。
ここまでまずはやりきることで会社全体として「注意力」を個々の人ではなく、システムに任せることができるようになります。
他方で、外部とのつながりをつくることに長けている者に対しては、オンラインでもオフラインでも自由に外部との接点を拡げることができるような権限をあたえる必要があります。
そして、一度外部から新しい知見を得た場合には、社内が受け入れやすいように翻訳する必要があるため、そこまでやりきるような体制を整える必要があります。