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嫌い…やっぱり好き!苦味と人との愛憎関係

苦いもの、好きですか?

「大好き!」「昔は嫌いだったけど、今は好き。」「大っ嫌い!あんなの食べたくない!」
色々な答えが返ってきますね。本来は大嫌いな味。一方で大好きな味。
そんな愛憎渦巻く苦味のヒミツをご紹介します。

苦味は危険を教えてくれる

生き物にとって、苦味を毒素を感じるための味覚です。人は勿論、猫やクラゲや虫やバクテリアでさえも、苦味を感じます。なんと、5億年前の生物も苦味を感じて、危険なものを吐き出していたとか。だから本来は苦い食べ物は忌避されるものです。赤ちゃんでさえ、本能的に苦いものは嫌がります。離乳食を食べる前から知っている味覚です。
 
さらに、苦味は毒だけでなく、病気のリスクも教えてくれます。最近の研究で、苦味は口だけでなく鼻や気道、消化管等、身体中で感じることが分かっています。有害な細菌は増える際に苦い成分を出すことがあり、鼻などで苦味を感じると、細菌をやっつけたり、追い出したりしようと身体が免疫反応を示します。

なので、本来苦味は憎むべきものです。
もし体が苦味を感じられなかったら…、生き物はもっと不健康になっているでしょうね。

苦味は健康をもたらす

「良薬口に苦し」。一度は聞いたことがある、有名なことわざです。

苦味は毒なことがある一方、少量の苦味であれば体にいい影響をもたらすことが多いです。苦い食べ物としては、コーヒー(カフェインやクロロゲン酸)、チョコレート(カカオポリフェノール)、ゴーヤ(モモルデシン)、お茶(カテキン)、ホップ(イソフムロンや熟成ホップ由来苦味酸)、せんぶり茶(スウェルチアマリン)と、上げればキリがないですが、どれも健康にいいことが研究で明らかになっています。どれも苦いけど。
勿論、薬もそのまま飲めばだいたい苦いです。オブラートに包んだり、甘いシロップにしたりしますしね。また、古くからある民間療法では、苦いヤナギの樹皮を噛んだりします。伝統的にも苦いものは体にいいことが知られています。

世の中に苦い食品が溢れている理由は、からだが苦味を欲しているから、つまりはあまり健康ではないから、かもしれません。苦味への愛が芽生えてきましたか?

苦味は料理を美味しくする

人は唯一、苦味を楽しめる生物です。他の風味に適度な苦味を足すと、より美味しくなることを知っています。苦味のあるブロッコリーや芽キャベツを付け合わせ肉の旨味を引き立てる、あえて焦がして苦味をつけてコクや風味を増す、スイーツに抹茶を合わせより甘みに奥行きを増す、など和洋中いずれでも応用されています。実際に、美味しさは、五味(旨味・塩味・甘味・酸味・苦味)のバランスが大事、とよく言われていますしね。

また、研究でも苦味が美味しさを引き立てることが証明されています。味を感じないレベルの苦味を入れたところ、旨味がより強く感じられ、後味を美味しさを引き延ばしたようです。

人間の三大欲求である食をより豊かにしてくれる、苦味にはそんな素敵な力があるのです。愛が深まってきました。

苦味の感じ方は人それぞれ

苦味への愛と憎しみ。どちらが深いかは人によって変わります。それは好き嫌いとか、人生経験とかではなく、遺伝子によるものです。苦味の感じやすさは遺伝子で制御されていますが、感じやすい/感じにくいは、親子・兄弟でも異なります。とある研究では、苦い成分を舐めたところ、65%の人は苦味を感じ、28%の人は苦味を感じず、7%の人は別の味を感じたようです。苦味を感じる遺伝子を持っているかどうかで、はっきり分かれました。

そして奥深いのは、苦味を感じるセンサーは複数あるという点。例えば、甘味を感じるセンサーは1種類なのに、なんと苦味は25種類。自然界に存在する多様な苦味成分を正しく検知するために発達したと言われています。そして、この25種類それぞれに、味を感じやすい/感じにくい、が遺伝子によって変わるわけなので、味の感じ方は千差万別。個人差があって当たり前です。なので、もし自分が野菜好きなのに子供が野菜嫌いの場合、苦味を強く感じている可能性があるので、頭ごなしに怒らないであげてください。勿論、単に野菜嫌いの可能性もありますが。

終わりに

今回は苦味のヒミツをご紹介しました。毎日感じる味覚ですけど、奥深く、多様であり、面白い味覚です。是非自分の好きな苦味を見つけ出し、食を豊かにしたり、より健康になるために活用してくださいね。

それでは。


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