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「初めての人生の歩き方。――毎晩彼女と君にラブレターを」第375話:亀とセキレイ。

「死ぬことがわかっているから命は大切なんだ」テルー


 ここ最近寝不足でいつも頭がふらふらしている。
 そんな中、今朝、ふと思い立ち彼女に声をかけた。

「ねえ、今日スタバでも行く?」

 彼女はスタバが好きだ。しかし、最近は休職して収入がなく、お金を僕がなんとかしている遠慮からかあまり行っている様子がなかった。
 だから敢えて行って欲しかった。

「行こうよ。せっかく天気もいいし」

 彼女はすごく喜んでくれたようで、僕たちが久しぶりの太陽を浴びながらゆっくりと坂道を下った。
 途中、畑の横を通ったときに、視界に何かが飛び込んできた。振り返って目を細めてみると、そこにはまるで石のような色をした亀がいた。

 僕たちは足を止めて、亀を見つめた。亀は動いたらバレると思っているのか、微動だにしなかった。

「マズい、ばれちゃう……」

 彼女がすかさず亀の気持ちを代弁した。遠くでセキレイの鳴き声が聞こえた。僕たちは笑いながら、また歩き出した。
 スタバに行って、お昼は彼女の好きなパン屋さんに移動して、そのテーブルで風と日を浴びながらのんびりとした。

 彼女が珍しく、前の旦那のことを話し出した。

 僕は茶々を入れながら耳を預けていた。当時の彼女の言葉が心を痛める。それと同時に、僕はその旦那さんに感謝もした。
 もし、今もお互いが愛し合っていたら、僕は今ここにいなかったのだから。

 帰りに、冒険と称して、長い坂道を登った。
 途中、あぜ道に迷い込んで、近くの住民に怪しく見られたらが、僕たちの前はばかるものはいなかった。

 そして坂道を登り切って、空を見上げると、雲が近くを流れていた。
 振り返ると、セキレイが後をつけていた。きっと亀はまだ石のフリをしているのだろうか。

 僕たちは歩き出した。
 もうすぐ娘が帰ってくる。
 大切な時間が少しずつ増えていく。

寝不足すらも、

君といると幸せなことになる。

長生きしよう。

杖をつきながら、

一緒に散歩をするのが、

今から楽しみで仕方ないんだ。

心より愛を込めて。

初めての人生、友達と遊んで疲れた日が、

いつかとても幸せだったと君が思うのは、

いったいいつだろうか。

楽しんで、ときに泣いて。

今日も1日よく頑張ったね。

おやすみなさい。

今年も、残り341日。

またね。

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