写真エッセイ〜2024年9月〜
年に1度、憧れの場所でアフタヌーンティーを妻と楽しんでいる。梅田を中心に、有名なところから、マイナーなところまで、スマホで「アフタヌーンティー 梅田」とありきたりな検索ワードを打ち込んで出てくるお店のホームページを見て、「あぁ、ここなら行けそうだね!」と金額よりも、雰囲気に押し潰されないかで選んできた。だから、どのお店もカジュアルで、フラッと遊びに行く感覚で、紅茶を何杯もおかわりして、2時間後にトイレに駆け込んできた。コップ1杯150mlだとすると、5種類の紅茶をそれぞれ2杯ずつ飲むと、もうそれだけで1.5Lも膀胱に襲いかかってくるわけなので、これから老いていけばアフタヌーンティー中に離席することにもなるでしょう。そんな変化も今後の楽しみの一つかもしれないなと思いながら、今年訪れた場所はライオンさんのロゴでお馴染みの「ザ・リッツ・カールトン大阪」。お馴染みなんて書いてしまったけれど、結婚式に1度参列したときに行ったきり、梅田を撮り歩くときもほとんど素通りするエリアにあるので入り口がどこにあるのかも分かりませんでした。梅田の地下迷路もビルボードへ何度か訪れるうちに、行きたい場所には迷わず行けるようになりました。ただ、今も変化し続けている梅田のことだから、年に数回しか行かないボクなんかあっという間に置き去りにされてしまうことでしょう。1番線で紀州路快速を待ちながら、先頭車両側の向こうにできた新しい通路。縁がないと思っていたけど、今思えばリッツへ行くときに使えば良かった。
あの日は、ポケモンセンターに用事があったから、大丸の方へ行ってしまった。エスカレーターを昇った先で、ポケモンカードの新商品発売を記念して、お兄さんが「いかがですか?」と平日にも関わらず賑わうフロアで奮闘していた。いくつかあるバトル場では、大学生くらいの男子が真剣にバトルしていた。ボクたちは、「スーパーボールで選んだポケモンは、その回で場に出して良いんですか?」と、疑問に思っていたことを視線があってしまったお兄さんに質問した。Q&A集に載ってそうな鉄板質問だ。なぜ自ら調べようとしなかったのか。調べることが面倒で独自に決めたルールを惜しみなく適用して遊んでいたボクたちは、正規のルールを知ることが怖かったのかもしれない。ひょっとするとポケモンカード界では有名だったのかもしれないお兄さんが教えてくれたルールは、ボクたちが遊んでいたものと同じだった。教えてもらった後は、ニンフィアのデッキに入っている新しいカードの効果について話を聞いていた。聞けば聞くほど欲しくなる。買えばきっと長女も喜んでくれるだろう。これはボクたち家族の買い物、娯楽ではなく生活費が適用されるんじゃないか!? 頭の中でぐるぐる思考を巡らせてみたが、結局まだ入門編でルールを覚えている段階で、それでも十分楽しめているのだから控えようと珍しく冷静な判断ができた。後に控えているリッツ効果により、財布の紐が硬くなっていたのだ。これを転用すれば、少し贅沢する日は、その前に欲しいものを見にいけば、「諦める」と容易に判断できるかもしれない。気持ちが高揚し過ぎている場合は、「耐えられなかった」とか言って、贅沢三昧と自暴自棄になる可能性もあるが、それでも生きているならそれでいいんだと思う。決断したことを後悔するんじゃなくて、これからどうするかが大事だって、なんかの漫画か、ドラマで言ってたと思う。
予約していた15分前にザ・リッツ・カールトン大阪の地下入り口らしきものを見つけた。「ここから入れそうだけど、どこへ繋がっているんだろう?」。妻とボクは挙動不審になりそうな体を意識しないようにして、正面玄関から突撃することに決めた。「見上げたらあかん」と、節子のお兄ちゃんの声が聞こえた。幻聴だ。残暑厳しい9月。今年は火垂るの墓を見ていないが、夏になると思い出してしまう。子どもの頃、よく妹と真似をしていたことも影響しているのかもしれない。暑さで意識が遠のいてしまいそうだったが、玄関横に背の高い外国人風のお兄さんが視界に飛び込んできた。周辺に停めている車たちには、いかにも高級そうなキラキラしたオーラを発していた。車に興味がないボクでも分かるくらいだから相当だったと思う。一軒家と交換できそうな車もあった。そんな駐車場を眺めながら、ホームページのドレスコード「スマートカジュアル」を信じてきたボクは全身ユニクロだった。感動パンツなら向かうところ敵なしと思っていたが、世界の広さを建物内部に入る前に実感させられた。さすが、ザ・リッツ・カールトン大阪。
カメラロールを振り返ってみても、妻とボクとアフタヌーンティーとカウンターで作業するお姉さんの4shot写真しかなくて、紹介できないのが残念なんだけど、ラウンジの雰囲気が知りたいという方のためにホームページのリンクを貼っておきます。
https://lounge.ritzcarltonosaka.com
写真エッセイなのに、写真はないのかと自分でも突っ込んでしまった。それくらい今月は写真を撮っていなかった。BUMP OF CHICKENのライブに3回、ミスチルのライブに1回行き、終演後に場内の写真を撮ったくらいだ。それじゃあダメだと、二日前に曇天スナップを近所でしたのはいいんだけど、どうにもLightroomを起動する気になれない。あぁ、これは残暑による初秋バテだなと結論付けたわけですが、皆さま写真活動の調子はいかがでしょうか? ボクは年末に計画していた雑草写真展も1度白紙にしました。これから準備してもお客さんに満足してもらえる展示ができそうにないと思ったから。書き忘れていたけど、今月「文学フリマ大阪」という作家さんが1,000人くらい集まるイベントに、出店者として参加してきました。昨年の写真展用につくった写真エッセイとともに。ボクのことなんて知らなかった人たちが、本の中の写真を見て、「こういう写真いいですね」と言って、購入していただけたことが本当に嬉しくて自信になりました。だから、次回に向けて、今度は文章でも誰かの気持ちに寄り添えたらいいなと思い、毎晩少しずつ文章を書いています。数あるブースの中から、「これが求めていた文章だ」という出会いをどのように提供できるだろうと考えても、全く答えは見えません。答えを求めることに意味がないのかもしれません。偶然手に取り、開いたページにある言葉に癒される。BUMP OF CHICKENのライブで癒されたいと言った彼女の少し疲れた様子が、終演後には羽が生えたように軽くなっていた。そんな2024年9月だった。