超短編小説「口の悪い猫達7 」
茂みに入ってから何時間くらい歩いただろうか?
ずっと同じ風景なのでもはや進んでいるのかも分からなくなってきたがトムを信じてついて行くしか無い。
そんな事を考えながら歩いているとトムの足が止まった。
村に着いたよ
トムが言う。
だが5匹は唖然とした。
着いたと言うのに目の前は建物も何も無いただの原っぱなのだ。
どこを見てるんだ?足元だよ。
足元も見ると猫1匹くらいが入れる位の穴が空いていた。
奥は真っ暗で何も見えない。
怖いのか?じゃあ私から行こう。
トムが先に入った。
怖いに決まってる、当たり前の事だ。
5匹は山村のような感じの風景を想像していたのだから。
誰から行く?
チャコールが言った。
じゃあ俺から行くよ
ピートが入って行った。すごい勇気だな。
実は穴の中にアナコンダが居て食べられるかもしれないという想像は無かったのだろうか?
ピートに負けたと思ったのか、チャコールが無言で入って行った。本当に解りやすいヤツだ。
どうなってるのか楽しみね
メリーが言いながら入って行き、スパイダー、俺と続いた。
穴の中は思ったより広くヒゲが穴の側面には当たらない。しかし真っ暗なので茂みの中に居た時と同様、進んでいるのかは分からない。
人間の世界では猫は夜目が効くと言われているらしいが全くそんなことはない。
暫くして光が見えてきた。
穴を抜けるとそこは外の光がかなり高いところから差し込んでいる岩盤の上だった。
先に入ったトムと4匹が待っていた。
まるで秘境だな
チャコールが言った。
さっきまで借りてきた猫のように静かだったのに急にどうしたんだろうか。
日の光がほんのり温かく、どこか懐かしくてずっとここに居たい気分になった。
まだこの先だよ、ちょっと休憩したら進もう
トムが言った。
5匹とも歩き過ぎたせいか疲れが出ていた。
気づいたら俺とトム以外の4匹は寝ていた。
君も少し寝るといい
そう言われると眠くなってきた。
心地よい眠りにつけそうだ。
つづく
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