見出し画像

元気をくれた認知症のおばあちゃんの話


訪問先に、一人暮らしの認知症のおばあちゃんがいた。

テレビもなにもない部屋で、デイサービスには、週2回行ってた。

それ以外は、朝ごはんをたべるために、ベットから起きて、車椅子に座って、ホームヘルパーがご飯時とオムツ交換のために、6回訪問する。

それ以外は、誰とも話すことなく、ぼんやりと車椅子に座っている。
介護施設にいるのと、ほぼ変わらない生活!Σ( ̄□ ̄;)

認知症は、かなり進んでいて、毎日「あんたた、名前は?」と言われる。

その認知症のおばあちゃんいわく、「名前は覚えられないけど、なんとなくの雰囲気は、かすかに覚えてるとのこと。
でも、やっぱり、誰だかはっきりとはわからない」
とのこと。

とりあえずは、いつも「どちらさん?」と聞かれるから、首にぶらさげる名札を見せて、「ホームヘルパーのゆいぽんです。よろしくお願いします」と説明する。

そして、不審者ではないことをしり、その認知症のおばあちゃんもホッとする。
これが、そのおばあちゃんと私のルーティン。

そんな、認知症のおばあちゃんが、「あんたは、やさしいな。いつも、優しくしてくれて私のお母さんを思い出す。こんな、性格のきつい私に優しくしてくれてありがとうね」

と言ってくれた。
私のことを言っているかは、定かではない。
でも、私に言ってくれていると思って、この言葉を受け取った(*^^*)

ちょうど、これを言われた時の私は、大事な人とお別れをして落ち込んでた。
自己嫌悪の泥沼にはまってた。

だから、その一言で、認知症のおばあちゃんの前で、少し泣いた。

認知症のおばあちゃんの優しい言葉に、自分の心が癒された。

認知症になると、感受性が敏感になるのか、こちらの気持ちを察知して、突然優しい言葉をかけてくれたりもする。

しんどい顔をしてるつもりは、ないけど
「大丈夫?仕事しんどいんじゃないの?」とか、言ってくれたりする。

とくに、この認知症のおばあちゃんは、敏感に人の気持ちをよく察知していた。

だから、優しくした分だけ優しい言葉が帰ってくる、ありがたい認知症のおばあちゃんだった。
でも、不機嫌な態度で接すると、不穏になって帰ってくる。

訪問介護で、予定がつまっていてあわただしく、動いていると「どうして、私を無視するの?」と被害妄想が発動される。

いや、無視はしていないんだが…( ´;゚;∀;゚;)

俗にいう、感情の起伏が激しい、取り扱い要注意なおばあちゃんでもあった

でも、介護の仕事をしていると、利用者さんとの別れが突然やってくる。

この認知症のおばあちゃんも、ついに介護施設に引っ越すことなった。

そして、最後の夜オムツ交換のミッションのために訪問した。

その時、なにもいわずに、おばあちゃんが涙を流した。
私は、何も言葉をかけられなかった。

帰るときに、一言「ありがとうね。また、会おうね」と認知症のおばあちゃんに言うと、だまってうなづいた。

後で聞くと、介護施設に引っ越すことは、だれも、おばあちゃんには言ってないらしい。

でも、片付いていく部屋を見て、それだけで、おばあちゃんは、ここを離れることを察知したのだろう。

テレビも何もない部屋で、車椅子に座ったままの生活よりは、刺激のある介護施設のがいいのでは?と思ってたけど、何十年も家族と住んでいた家を離れることの方が、辛い!ということもあるんだと知った。

いま、引っ越した介護施設で、元気してますか?
テレビを見て、職員とお話して穏やかな時間を過ごせていますか?

このおばあちゃんを、思い出すとそれだけが気がかりだ。

このおばあちゃんが、引っ越した先でも、今日も元気に笑って怒って、毎日を過ごしてくれてたら、いいなぁと思う。

このおばあちゃんのかけてくれた優しい言葉。
私の永久保存版の名言だ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?