耳の穴
保守的な人間だ、と自負している。
インドカレー屋に行けば、いつもバターチキンカレーを頼んでしまうし、新しいコスメを買うときには口コミを見ないと気が済まない。やりたいと思ったことには飛びつくけど、必ずリスクヘッジは怠らない。大抵の場合、大企業的なルートに乗ってしまう。いわゆる、「その他大勢」的な生き方をしてきて、このままいくと「その他大勢」として一生を終えるんだろうな、と。
予定調和的に、保守的な企業に入社した。
本人の専攻や最初の配属先から大体のキャリアパターンが決まっていて、特に技術職はその傾向が顕著である。しかし、技術職として入社した私にとって、そのキャリアパターンは意に沿わないものであり、そもそもパターンが決まっているのが気にくわない、と常々思っていた。
だから、次の人事面談用に作成する調書にはパターンに乗っからない、自分が今興味を持っていること、やりたいことを書いてみた。ドキドキしながら。批判されるのではないかとビクビクしながら。
調書を上長に添削してもらう。これは面白いね、と上長は言う。こんな風に、スケール大きく考えたことなかったよ、と。たしかによくあるパターンとは違うけれど、面談で言ってみることに価値はあると思うよ。それにしても攻めたねえ。
あれ、私、保守的な人間だと思って生きてきたけど、この中ではちょっと違うみたい。ちょっと異端みたい。そう認めたら、ちょっと楽になった。昔からレールに乗って正統でいることしか知らなかったから、レールから落ちるのが怖くて仕方なかった。でも、えいやっと自分の脚でレールから降りてみたら、ただただ広い砂利道が広がっている、それだけのことだった。
異端、悪くないじゃん。自分でいくらでも道は作れる。だからもっとやりたいことは声高に主張していこう、怖いものなんてないじゃん、と思ったのでした。軽やかにピアスを空けました。