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おいしい和食屋さん(6)
料理をお召し上がりください
やっほー!みちるだよ!昨日もねずみの五郎さんのお家(お店)に泊まらせてもらったよ。この1か月間はここで寝泊まりするんだ・・楽しみだなあ。
「みちる殿は早起きじゃのう。そういえば、昨日の夜、味噌汁の材料を買ってきたぞい。人参に、大根、豚肉に・・」
一生懸命ねずみの五郎さんが説明してくれているけれど、あたしは違うことに夢中。それは、寝室にあった、『木のつみき 子供の遊び心を育む!』と書いてある、積み木。とても面白いの。丸の形、三角の形、四角の形、蜂の巣の形ってどんどん積み重ねていくんだ。
「みちる殿、聞いていたかい?まあいい。その積み木は面白いか?わしゃが人間の世界で、初めて買ったものなのじゃよ。」
ああそうだった。人間の言葉を話すし、会話がスムーズだから、ねずみの五郎さんが『ねずみ』ってこと忘れてた。
「おはよーふわあ・・」やよいが起きてきた。とても眠そう。あたしは目ぱっちりだけどね!
「今日は久美殿がお店に来るぞい。朝飯、早く食って着替えるのじゃからな。」
『はあい。』あたしはそう答えて、朝ごはんはなんだろう?と考えた。
見たほうが早いか。えーっと、あっ!炊き込みご飯だ!朝から豪華だなあ〜!
「わっ!炊き込みご飯だあ!大好きなんだよねえー。」
やよいも喜んでる。炊き込みご飯はとてもおいしいもん。
「久美殿に味噌汁の他にも、炊き込みご飯も召し上がってもらおうかと思ってな。いい米は値段が高いが、おいしいものを食べてもらいたく、奮発して買ったんじゃ。」
ねずみの五郎さんは優しいなあ。そう思うのは何回目だろう。道徳の時間で知った、『思いやり』ができているんだろうなあ。
「いただきます!」
さっきまで眠そうだったやよいも元気よく炊き込みご飯を食べ始めた。
あたしたち、食べ終わって、すぐ更衣室で着替えてきちゃった!
早いでしょう。あたし、こう見えて仕事が早い、『キリッと女子』でもあるのよ。
「もうすぐで、久美様って人がくるよ。ほらみちるん、ピシってして。」
『ピシッとする』は先生がよくいっているんだ。ちなみに背筋を伸ばすことだよ。
カランカラーン。久美様が来た。
「久美殿、お待ちしておりました。こちらのお席にお座りください。如月殿もご一緒に。さて、お二人には炊き込みご飯と、味噌汁を召し上がっていただきたいのですがよろしいかい。」
丁寧語とねずみの五郎さんの口癖が混ざって、変な感じになっている。
「ええ。ですが、昨日のようにわたくしたちを待たせないようにお願いいたしますわ。お腹が減って大変でしたもの。」
久美様が少し怒っている。でもあたしたちのご飯を食べたらきっと笑顔になるはず。
あたしたちは『台所』(お店のキッチンだから本当は『厨房』)にいる。
「二人とも、炊き込みご飯はもう出来上がっているから、お茶碗によそってくれるかい。二人分な。」
ねずみの五郎さんはあたしたちにそう頼んできた。本当に店員さんになったみたい!だから嬉しい気持ちでいっぱいだよ!
「ねずみの五郎、あたしたちが食べた炊き込みご飯を、そのまま久美様達に、食べさせる気?ダメだよ。衛生的に。」
やよいはいちいち細かい。まあ衛生的には悪いけどさあ。
「違うのじゃ。さっき二人が食べたのは作り置き。久美殿達に食べさせるのは丘まで炊いた、ほかほかの炊き込みご飯じゃよ。ほら。」
ねずみの五郎さんはそういって、お釜を指さした。やよいは納得したかのようにお釜から、ほかほかのご飯をよそっている。
ずるい!あたしもやる!
お茶碗によそって、味噌汁もできたら、いよいよ、久美様達に食べてもらうよ。
ドキドキ・・緊張する!料理を久美様のところにおいていって・・
「久美様、如月さん、どうぞお召し上がりください。」
二人と1匹で声を合わせてそういった。揃ったー!よかった!
「いただくわね・・」
少し微妙な顔をしていたけれど、大丈夫なはず・・