見出し画像

星芒鬼譚26「お前にはそんな石、似合わないぜ」

―――だいぶやったが、まだ先は長そうだな。
ヴァンヘルシングは銃と剣を一旦おさめると、胸ポケットから煙草を取り出した。
マッチで火をつける。あたりは静かだ。
肺深くまで吸い込み吐き出した煙を、どこからか飛んできた矢が切り裂いた。
矢はすぐ横の柱へと突き刺さった。

「敵の城で一服なんて、ずいぶん余裕ね」

声の方向を見やると、廊下の暗がりにボウガンを携えたカーミラが立っていた。
ヴァンヘルシングはもう一度煙を吸って吐くと、にやりと笑った。

「今のは惜しかったな。なかなか良い狙いだった」

いつもそのくらい上手に狙えればいいんだが。
ヴァンヘルシングは思いながら、煙草をくわえたままおもむろに剣を抜く。
ボウガンはまっすぐにこちらを向いている。

「次は外さないわよ」
「操られても無粋なところは相変わらずか」

カーミラはブーツの踵で床を踏み鳴らした。

「前から思ってたけどあなたいちいち失礼なのよね!力づくでも黙らせてやるわ!」

次々放たれる矢の軌道を躱しながら、カーミラの体にあるはずの黒の宝石を探す。
胸元だ。狙いやすい場所じゃないか。
今度はボウガンをヴァンヘルシングめがけて振りかぶる。
矢が当たらないなら、先端についている小型の剣で接近戦に挑もうというわけだ。
それをこちらの剣で押さえると、睨みつけられた。
怖くもなんともないが、いつものカーミラとはやはり様子が違う。

「言葉遣いもまるでなってない。教育が必要だな」

その言い草にカチンときたらしく、剣を力いっぱい弾かれた。
一旦解放してやる。

「何よ偉そうに!言ってるでしょ、あたしは誰にも従わない!」

ここから先は

1,975字
この記事のみ ¥ 100

面白いなと思ってもらえたらサポートをお願いします。 執筆の際のカフェ代や、記事を書くための取材の予算として使わせていただきます!取材先に心当たりがあればぜひ教えてください(ここが面白そうだから行ってみて!とか)