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星芒鬼譚24「俺たちは俺たちのやり方で守るべきものを守る。いいな」
山の上から爆発音がしたのは、京極が混乱する鞍馬山付近の住民たちをなんとかなだめ、避難させようとしていたときだった。
見上げると、あの不気味な城の門のあたりから煙が上っているのがうっすら見えた。
もう時間的には夜が明けているはずなのに、未だ空は暗く、大きな赤い月が居座っていた。
急に街灯がぱっと消えた。今の爆発の影響か。
子供が怖いと泣き出し、大人たちも顔こそ暗くて見えないが不安げにしているのが伝わってくる。
あたりに嫌な気配が漂う。妖怪が近くまで来ているのだろう。
こんな場所で悪意あるやつらに囲まれたら、自分一人ならまだしも住民たちを守り切れる自信はない。
自分の車で下山するにせよ、一気に全員を連れては行けない。
救援を呼んだとしても待つ時間が惜しい。
何か方法はないのか。
「京極さん!」
聞き覚えのある声に振り返ると、来るなと言ったはずの部下がそこにはいた。
「署で待機してろって言ったろ!なんで来た!」
怒鳴りつけたが、賀茂は一歩も引かない。
京極を睨みつけるかのごとくまっすぐに見つめて言った。
「何が起きているのか知りたいんです!それに私にもできることがあるかもしれないじゃないですか!」
「まったくお前さんは…」
京極は額に手を当てると、はぁとため息をついた。
自分も冷静さを欠いているらしい。一旦落ち着くべきだ。
「…俺にも何がどうなってるのかよくわからんが、平たく言うなら妖怪大戦争ってとこだろうな。とにかくまずは避難だ」
それはわかってますと賀茂が口をはさむ。
「でも彼らはあの中にいるんですよね?放っておいていいんですか?」
山の上の城を見上げる。
たしかにそうなのだろう。あいつから連絡が来たわけではないが、なんとなくわかる。
事の大きさに、大丈夫だろうかとも思う。
しかし、妖怪がおぼろげに見えるだけの凡人の自分と、妖怪を見ることさえできない部下では、今行っても足手まといになるだけだ。
「あっちはあいつらに任せるしかない」
「でも、」
まだ何か言いたげな賀茂の両肩を掴み目をしっかりと合わせると、京極は言い聞かせるように言った。
「俺たちは俺たちのやり方で守るべきものを守る。いいな」
賀茂は下唇を噛み、目線を外すと小さくはい、と答えた。
肩から手を離した京極は町のほうを振り返った。
「しかし避難させようにも暗すぎる。少し下れば町まで出られるってのに」
京極の言葉に、賀茂は少し思案しているようだった。
何かいい案でもあるのかと問うと、賀茂が神妙な面持ちで確認するように言った。
「明かりがあればいいんですよね」
息をふぅっと吐き、目を閉じて印を結ぶ。
と、宙にかざした手から小さな鬼火が現れた。
ぽぽぽぽ…といくつもの鬼火が道に沿って灯っていく。
そうだ、たしかこれが唯一使える術だと言っていた。京極は思い出していた。
賀茂は目を開けると、照れたように少しだけ笑った。
「あまり長くはもちませんが。ないよりはましですよね」
「ましどころか上出来だ」
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