星芒鬼譚25「そうじゃな…もしおぬしがそれでも気に病むならば…次にわしが危なくなったときは、助けてくれ。な」
太郎丸の動きは俊敏だった。
この屋敷に来た頃は、まったくと言っていいほど戦うことのできない少年だったのに。
いつの間にかこんなに戦えるようになって…まだまだ対等とは言えないが、上手く隙を見つけては果敢に突っ込んでくる。
稽古をつけたのは自分だが、ここまで強くなるにはきっと見えないところでも努力をしていたのだろう、と思うと、武器を交えながらも胸が温かくなった。
思わず笑みがこぼれてしまう。
それが気に障ったらしく、ばかにしないでください!と怒りながら突っ込んできた太郎丸をいなした。
「おぬしもやるようになったのう。こうなれば、秘密兵器を出すしかあるまい」
「秘密兵器?そんなものどこに」
鞍馬は懐から一冊の本を取り出した。
太郎丸が目を見開く。
「はっ!それは!!」
「そうじゃ。おぬしが楽しみに待っておった、ムーの最新号じゃ」
ムーは太郎丸の愛読雑誌だ。
食いつかないわけがないと鞍馬は知っていた。
「そんな…発売日はまだのはず…まさかフライングゲットですか!?」
ふふんと得意げな顔をする鞍馬に、太郎丸は奥歯を噛み締めた。
「ひ、卑怯です!」
「戦いに卑怯も何もないわ」
カカカと鞍馬は笑った。太郎丸は頭をぷるぷる振ると円月輪をかまえ直した。
「…そんなものに屈する僕ではありませんよ」
「ほう。じゃあわしが先に読んじゃおうかな~」
鞍馬がわざとらしくページをめくろうとする。
「やだやだ!僕が読むんですー!!」
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