星芒鬼譚9「そろそろ決着をつけさせてもらおうか、玉藻」
夏美は通信機を左手で押さえ、耳を澄ました。
が、武仁も光太郎も声を発しない。
これでは、向こうで何が起きているのかわからない。ただ、何かが起きていることは明白だった。
と、妖怪探知機のブザーがけたたましく鳴り出し、そのあまりの音量に耳鳴りがした。
『『わーーーーー!!!』』
光太郎と武仁の声が重なる。武仁が取り落としたのか、探知機のブザーが急に途切れた。
「今度は何だ!?」
夏美の声にも焦りが滲んだ。
ーーー落ち着け、焦ってもどうにもならない。
夏美は自分に言い聞かせる。
『相変わらず小賢しいのう…おとなしく礎となっておれば良いものを。ぬし以外は皆、我の手中に堕ちたぞ』
聞き覚えのない声が、地を這うように響いてくる。
嫌な感じがする。
『そんな…!』
ひよりのか細い声。
『きゅ、九尾の狐です!!』
武仁が絞り出すように言った。
『ひよりさん、下がって』
真面目なトーンの光太郎の声がした。
思ったよりもまずい状況らしい。
「今向かう!とにかく貍塚さんを守れ、いいな!」
『はいっ!』
武仁の返事を聞いた夏美は、通信を切りながら走り出していた。
***
賀茂と京極は連れだって歩いていた。
遅くなってしまったから、一応駅までは一緒にと京極が気を回したのである。
賀茂は昨日のこともあり少し気まずく思っていたが、京極はいつもと変わらぬ様子でカプリコの包装を開けようとしていた。
それを見たら、なんだか脱力してしまったのだった。
「…ホント好きですよねー、それ」
「ホラ、頭使うと糖分欲しくなるだろ?」
そんなに頭使うことしてましたっけ、と喉元まで出かけたが、やめた。
そうだ、あまりかかわり合いにならないでおけばいい。仕事は仕事で切り替えるとして…。
賀茂がそんなことを考えながら歩いていると、京極がふと足を止めた。
「京極さん?どうしたん…」
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