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星芒鬼譚18「さあ、総力を挙げてもてなしてやるが良い。存分にな」
真っ暗な廊下をヴァンヘルシングとカーミラは歩いていた。
城内はひっそりと静まり返っている。
二人ともあたりの様子に集中し黙っていたが、カーミラが口を開いた。
「ねぇ、なんだか変よ…静かすぎるわ」
カーミラは耳が良い。
本人が言うには、人間にはわからない超音波を感じとることができて、物との距離感までわかるんだそうだ。
彼らの眷属であるコウモリと同じ特性を持っているのだ。
「ああ、罠かもしれないな」
ヴァンヘルシングはあっけらかんと言った。
「ちょっと!そういうことは入る前に言ってよね!もう入っちゃったじゃない!!」
カーミラのキンキンしたわめき声が響く。ヴァンヘルシングがその顔の前に人差し指を立てた。
「大きな声を出すんじゃない」
ばつの悪そうな顔をしてカーミラは口を押さえた。
「…失礼。今のは悪かったわ」
ヴァンヘルシングは真っ暗な廊下に目を凝らし、あたりの様子を伺った。
やはりしんと静まり返り、何かがいる気配はない。
「まあ、罠だとしても問題ない。罠ごと壊すだけだ」
ぴくりとカーミラが反応し、廊下の角を指差した。
「何か来る」
二人はそれぞれボウガンと銃を握り直す。
暗がりから現れたその人物は、突然ボウガンと銃を突きつけられ、思わず手を上げた。
「…あら、探偵サン」
そこにいたのは、目を丸くして二人を見ている光太郎だった。
カーミラはボウガンを下ろし、ヴァンヘルシングも銃口を逸らした。
「お早いお着きで?」
「はあ」
光太郎は返事と共にやっと息を吐いた。
と、カーミラが光太郎の周りをキョロキョロと確認した。
「あらら?あのお姉さんは一緒じゃないの?」
お姉さん?と一瞬頭の上にクエスチョンマークが浮かんだが、ああ、と思い至った。
夏美の怒った顔が頭をよぎる。
「何だ、はぐれたのか」
ヴァンヘルシングまで顔を覗き込んでくるものだから、光太郎は何か当たり障りのない答えをしなければと頭を回転させた。
「あー、その、はぐれたっていうか…」
はぐれたと言えばそうなのかもしれないが…ニュアンスが違うような気もするし。
「別行動してた、と言いますか……」
目を泳がせ言い淀むその様子を見て、カーミラがにたぁと笑った。
「ふぅ~ん。喧嘩したのね」
「え!なんでわかるんですか!?」
言い当てられて、光太郎はなぜか慌ててしまった。
ヴァンヘルシングはやれやれと言うように肩を竦めた。
「女の勘よ」
カーミラがウィンクしたのを見て、光太郎ははっとした。
夏美との仲を勘違いされている。
「いや、違うんですよ、そういう喧嘩じゃないんですよ!ちょっと意見の食い違いがあってですね…」
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