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村田結香(ゆんゆん)
2020年1月5日 22:42
ぱちり。静かな屋敷の中に将棋を指す音が響いた。他に聞こえているのは、そばを流れる川の音だけだ。広い屋敷だが、その存在を知る者はいない。敷地には強力な結界が張られ人の目には見えないどころか、現代にはなきものとしてひっそりとそこにある。居間では将棋盤を挟んで、二人の男が座っていた。「そう来るか」一人は結界を張った張本人である、安倍晴明。言わずと知れた陰陽師である。「どうです?少し
2020年1月12日 21:00
源探偵事務所の革張りのソファには、先程訪れた可憐な女性がちょこんと座っていた。時刻は20:05。業務時間はすでに過ぎている。女性の向かい側には所長の光太郎がキリッとした顔で背筋を伸ばして腰掛け(着ようとしていたモッズコートは横に放ってある)、その斜め後ろでは腕組みをした夏美が仁王立ちしていた。キッチンから武仁が白いマグカップを持って戻ってくる。「女性が来た途端これだ」苦虫を噛み潰した
2020年1月19日 23:59
京都府警の建物の外階段。刑事が一人、カプリコの包装を開けている。と、ポケットの中でスマートフォンが震えた。 「はい、もしもし」 刑事---京極正人は、カプリコをかじりながら電話に出た。 「どうした?…あーその件か。鑑定結果ならもうくすねてきてあるよ。え?今日?これからぁ?」 腕時計を見て不満そうな声を出すが、電話の主に頼み込まれているらしい。「…はいはいわかったよ、