生涯猫派犬を飼う⑧ さよならステラ
このシリーズを最後に書いてからだいぶ経ってしまった。
実は、3ヶ月ほど前に姉妹猫の片割れ、ステラを手放した。
そのときにその心情で書いた下書きの記事があるのだが、感傷的で言い訳がましく今読んでみると読むに耐えない。
あのとき投稿せずに寝かせておいてよかった。
客観的に見れるようになった今の方が上手に話せると思う。
さて、姉妹猫の片割れであるステラが、姉猫のソフィーと犬のジンジャーと折り合いが悪いことには過去記事でも書いたように、家族全員、薄々勘づいていた。
彼女は威嚇したり、よっぽどでないと攻撃したりすることはないので、表向きは仲良くやっているように見えていた。
しかし、実のところステラはストレスをかなり溜め込んでいて、あちこちでおしっこしたり、脱走したりと色々と大変だった。
そんなことがしばらく続きながらも、表面的には均衡を保っていたかのように見えたある日のこと。
ふとソフィーをみると、顔が血まみれだった。
そんな「ふと血まみれ」なんてことあるかいな!
と思われるだろうが、さっき見た時は普通だったのに、文字通り今みたら血まみれだったのだ。
ぎゃあー!とひとしきりパニックになった後によくみてみると首のあたりにボッコリと穴が空いていて、そこから血がボタボタとこぼれ、白い顔を赤く染めていた。
その日中に獣医に連れて行った。
「皮膚を貫通した傷がある。鋭い牙のある動物にやられたのだと思う」
と言う。
室内飼の猫の首を貫通させる牙なんて、姉妹猫しかいないはず、と問うと、ええ、そうねおそらくステラに噛まれた咬み傷でしょうね、と言われた(ジンジャーは気弱でソフィーを恐れているので噛み付くなんてことはしない)。
これは喧嘩してくる外猫ちゃんあるあるらしいのだが、猫がその日に負った傷はすぐに毛に埋もれてわかりづらくなる。しかし、その後、傷口から細菌感染を起こし、膿と腫れが溜まった時点で傷口が破裂する。その際の流血で飼い主が気付くということはままあるそうだ。
これで「ふと血まみれ」の謎が解けた。
では「なぜ」に迫ろう。
ステラはジンジャーのことがあまり好きではないが、姉のソフィーのことはもっと嫌っている。これも、家族全員、薄々気づいていた。
ソフィーはステラのことを自分の監視下におき行動を管理したいのだ。
ソフィーの独裁をおおむね受け入れているステラだが、耐えきれなくなると抜き差しならない喧嘩になる。
そうなるとステラがソフィーに対してしばらくシャーシャー吹いて大変になるのだ。
なので、このステラの一撃は彼女の精一杯の主張である、と家族全員受け取った。
これは、一緒にいられないかもな。
ちょっと前までなかよしで毎日だんごになって寝ていたのにな、と思い出すとせつない。
もちろん、厳重な棲み分けなどで管理すればいいじゃないか、という声もありそうだが、それは犬、猫、人間全員にとって大きなストレスとなり、それをこの先、猫と犬が天寿を全うするまで行い続けることは現実的に不可能だった。
この姉妹猫は地元のレスキュー団体から引き取ったという経緯もあり、理由によってはこの団体に返すこともできたので、それが一番信頼でき、かつ新たな里親を探す早い方法だと思われた。
早速、レスキュー団体に問い合わせをして、猫を引き渡す手筈も整えた。
しかし、渡された書類のタイトルをみて胸が痛くなる。
「Surrender Form」つまり、「放棄同意書」とあった。
私はこの子を「放棄」するのだな。
あまり考えないようにしていたが、家の中がストレスだらけとはいえ、家があり、人間に愛されて生きてきた子がシェルターの中で暮らす姿を想像するとひどく心が荒んだ。
そもそも、どっちの猫を引き渡すのか。
それも決められなかったが、他の動物と住めないステラになるだろう、ということにも家族全員薄々気づいていた。
できることなら自分の手で、安心できる里親を探してあげたい。
一縷の望みとともに、限定公開のSNSにて里親を募集した。
すると、10分も立たないうちに、仲の良い友人家族が名乗りを上げてくれた。
ちょうど、猫を飼おうと思って保護猫を探していたという。
しかも、彼らが猫を飼おうと思った理由のひとつが、我が家に来てステラとあそんだことだったという。
そんなことってある?!
ステラは人間のことは好きなので、とても人懐っこい。
遊んでもらうのも大好きだし、抱っこしたり、撫でられたりすることも好きだ。
すーちゃん、やった!
あなた、いいお家が見つかったかもしれないよ!
話はとんとん拍子に進み、次の週末には友人家族がやってきてステラを引きとってくれた。
娘は泣いていたが、私は安堵感の方が大きかった。
数日後には、新居ですっかりくつろいでいるステラの写真が送られてきた。
粗相もなく、外に行きたがる気配もないと言っていた。
よい意味で意外だったが、甘かわいさは変わらずだ。
それから3ヶ月が過ぎた。
我が家はソフィーとジンジャー、猫1匹、犬1匹の暮らしになった。
今は、家の中に蔓延していた動物同士の緊張感がなくなった。
ソフィーとジンジャーは決して仲良くはないが、お互い距離を保ちながら、まれに絡み(遊び)、緩やかな共存生活を送っている。
今回のように、ステラ自身が紡いだご縁によって、新しいおうちに引き継いでもらえることができたのは限りなくラッキーだっと思う。
猫は3日で飼い主を忘れる、なんていう飼い主泣かせの言葉があるが、
私たちのことや嫌な思い出を忘れて、新居でのびのびと彼女らしく暮らしてくれたらそれ以上望むことはない。
PS. 猫の多頭飼いをすすめる人もいますが猫の多頭飼いはおなじ腹からでた兄弟でもうちのように2歳ごろから難しくなるケースがまあまああるそうです(知り合いのオス同士の兄弟はもっと壮絶な喧嘩をして、人間も猫も怪我してRehomeすることになってました)。なのでわたしは気軽にはオススメできないなあと思ってます。