妄想庭園【秋】実りなき秋/⑦台無しクリスマス〜チェッカーベリー
病気になる、害虫が付くなどは植物を育てる注意事項としてある程度予測がつく。しかし、意外な方向から植物がやられるということがある。
11月に入るとクリスマス感がお店や街なかにも出始めた。園芸店も例外ではなく、針葉樹系のツリーっぽい鉢植えや、真っ赤な葉色が定番のポインセチア、赤い花と緑の葉がクリスマスカラーを象徴するシクラメンなどが店頭に並ぶ。
そんな中、花もののような派手さはないが、緑の葉の中に鈴生りの真っ赤な実を付けるメルヘンチックな可愛らしい鉢を見つける。それがチェッカーベリーだ。
ただ、実がなるものは細心の注意を払わなければならない。ブラックパールの苦い経験が頭をよぎる。実に虫が付いたり、病気に弱そうなイメージがある。ところがよくよく調べてみると常緑樹、いわゆる木の種類で寒さにとても強いようだ。病気もほとんど無いとある。それならばとさっそくクリスマス感を演出してもらうべく招き入れたチェッカベリーは、ベランダでほぼ唯一の実もの、かわいらしい紅一点として、小さいながらも深まる秋のベランダを慎ましく彩っていた。
ある朝、いつもどおりベランダに出て植物の様子をチェックしようとすると「チチチ!」という鳴き声とともに、慌てて鳥が羽ばたきベランダから飛び立っていった。鉢のそばには今しがた出されたと思われる鳥のフンが。チェッカベリーの鉢をよくよく見ると、あんなに実っていた赤い実が無くなっていた。葉に隠れて根元の方にある数個の実以外ほぼ無い。鳥に食われたのだ。情報では食用の実ではなく食べられないとあったので安心していたが、鳥にとってはエサらしい。
植物にとって、病気や害虫以外にこういった敵がいるとは…。しかも野菜や果樹だったら想像が付くが、まさか食べられない実まで狙われるなんて。カワイコちゃんといい感じに仲良くなろうと、毎日ウキウキして世話を焼いていたら急に横から奪われた思いだ。しかも実際にチェッカベリーの実を誤って食べた人の感想では、湿布の様な味がするらしい。どういう事だ、鳥よ。チェッカベリーマズイんかい!
残った数個の実を守るためその日以来ベランダには一切出さずに、室内のラックで管理している。本当は屋外で管理した方がいい植物だからなのか、残された葉も次第に元気がなくなってきた。ただ、全て枯れている訳では無く、よく見ると新芽も出ているような兆しがあり、何とか復活してあわよくば、またたくさんの実を付けてほしいと願っている。
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