GRIS考察#01 GRISとの出会い
おそらく2019年か2020年頃かと記憶しているが(個人的な最初の出会いの年は定かではない)App Storeにて「GRIS」というゲームがリリースされていることに気がついた。ストアでの評価も高く、おすすめゲームとして大々的にプッシュされて紹介されていた。
その頃の私は、趣味として個人の作品作り活動に熱中していた。息抜きのエンタメはもっぱら映画や本だったので、ゲームは全くと言っていいほどやっていなかった。
なので「GRIS」の存在はリリース当初からいちおう認識していたにも関わらず、スルーしていた。主人公のGRISという女の子の顔がバナーでフィーチャーされていたり、ゲーム紹介画面で手書き水彩風のステージが画像や動画で何点か紹介されていたが、いまいちピンと来なかった。むしろGRISのキャラクター、絵柄のタッチは自分の好みに合わなかったほどだ(今となっては考えられない。絵柄のタッチの相性にも理由があり、またここでスルーしたことがあとから大きな後悔を招くことになる。それもいずれ書くであろう)
少し年数が経ち2021年。作品作りなど一通りやりきって燃え尽きたとき、もう疲れたのでゲームや漫画、エンタメなどを楽しんで行こうという方向にシフトチェンジする。映画や本だけからの楽しみも、幅が狭くなってしまうような気がして、食わず嫌いでいたゲームや漫画も知らないだけでなにかいいものがあるに違いないと、取り入れて行くことにする。
ここで初めて「じゃあ以前見かけたGRISというアーティスティックなゲームをやってみようかな」ということになる。最初iOS用の「GRIS」を購入。iOSでのタッチ操作のプレイに無理があり(そりゃそうだ)どうしてもうまく行かず、しばらく放置する。
タブレットではアクション系のゲームはさすがにしんどいので、PCで遊ぶことを目論んで、いろいろ調べてみる。するとプレステ、スイッチ等の専用機でなくても、PC、タブレットでもBluetoothコントローラーを使えば遊べる事に気がつく。だいたいこういう事はネットで探せば簡単に解決方法が見つかる。
さらにSTEAMというゲーム配信サービスがあるということを初めて知る。ゲームを取り扱うポータルサイトのようなものという認識だ。ソフトを購入したり、少なくともアプリを購入してダウンロードするのがゲームの楽しみ方である、というのが当たり前の私のような世代にとってはそういうサービスがあることすら知らなかったのだ。ここでも「GRIS」の取り扱いがあったので、以前iOS用で買ってしまったものの、たまたま半額セールのタイミングがありPC用として購入する。
ここでやっと本題に入る。
「GRIS」というゲーム。実は難易度は高くない。(といっても私のような中年には意味がわからないところが数箇所あり、ネットで解法をカンニングした所も多い。後から説明することになると思うが”実績”と言われる隠しフラグのようなものが特に)実際、ゲームをすすめクリアするだけであれば、2~3時間、長くて5時間もあれば一通り終える事ができるだろう。その簡単さ、プレイ時間の短さに不満を持つゲームプレイヤーも確かにいる。
何日かに分けけて一通りプレイ・クリアしエンディングを見ながら私は泣いた。もういい加減歳なので、ツラの皮も厚くなり生きていて辛いことや嫌なことがあっても泣いたりはしない。無表情になったり不機嫌になるだけだ。エンタメ作品でも、安易な感動を演出されたら冷めてしまう。こんなに中年になっても泣けるんだというくらい感動して泣いた。めったに泣くことが無いので目から何らかの毒素が出ているんじゃないかというくらい目が痛い。生きているうちにこの作品を体験出来て本当に良かったと思った。
このゲームにはストーリーに絡めたセリフ・字幕等の説明が一切ない。受け取るものは抽象的な感情で、この感動も言葉にすることはとても難しい。(でもこうしてチャレンジしようとしている)ある種の体験や概念をゲームという形として受け取ったといえばいいのだろうか? こんな深く感動するコンテンツは他の全メディア(文学・映画・音楽・演劇・詩・アート等すべての表現)でも思い出せない。間違いなく自分の中で一番の体験だ。(完全に主観・好みが入っているため、そこは誤解なきよう。中にはネット上でイマイチだった等の感想を持つ人もいた。だがレビュー等を見る限り国内・海外も含めてプレイした人の感想としては概ね好評のようだし、熱狂的なファンも多いと感じる)
そもそも、ゲーム画面で繊細な水彩画タッチであることも珍しい。イラストレーションやアートの画風に近い。我々の世代ではゲーム画面といえばドット絵だ。せいぜいリアルを目指しているのにカクカクしたリアリティのないポリゴンの3Dだ。後ほど詳しく書くが(さっきからこればかりだが、おそらく長くなるので)ステージを構成する色に対してもどうやら意味がありそうだ。そしてゲームプレイでミスというものがない。敵にやられて死んだりしない。パズル主体で謎解きをして進んでいくゲームなため、それさえ解ければ先に進める。しかもパズル自体は意地の悪さがなく、ちょうどよい難易度で、解く楽しみも感じられプレイしがいはある。
このゲーム世界を楽しんで、あるいは受け取ってもらいたいがために作られたフィールド。壊れた遺跡のような風景。図形のような奇妙な形の植物や謎の生物。霧のような、靄のような淡い色合いの空気。そして世界観を完璧に表現した美しい音楽。(ああ、Berlinistの素晴らしい音楽!)GRISという謎の多い女性。オープニングで彼女は声を失ってしまったようだ。彼女はこの世界でどこに行こうとしているのか?
こんなにファンが多いゲームなのに、インディーゲームということからか、ゲームの解法サイトはたくさんあっても、調べた限りとことん深堀りした考察は無いに等しい。個人ブログ等でゲームの感想を述べたものや、考察をしたものでコンパクトにまとめたものなどは見かけたが、商業誌で関連書籍なども出ても良さそうなのに、全く見かけない。権利の問題だろうか?
そこで自分で記録することにする。プロっぽい整った考察や批評文は書けないので、熱狂的ファン感を全面に押し出した、与太話になる。自分の中でこの感情が忘れられてしまうのは残念なので、できる限りの感じたこと、可能な限りの深堀りなど記録に留めたいと思っている。
たぶん続きます。
※タイトル画像はGRISのゲーム画面を参考に描き起こしたファンアートです。