私の人生をいじめているものの正体。

中島勇一

2024年7月3日 11:52

【いじめの背後にあるもの】

なぜか、『いつもいじめられる立場』になってしまう人がいます。
新たな集団に入るたび、
気がつくと、仲間外れはずれにされたり、
イライラされたり、
無視されたりしている。

反対に、仲間外れになっている人に対して
大した理由もないのに、何となくその場の乗りで、
そっけない態度をとってしまった経験がある人も、
少なくないと思います。

このような一見理不尽に思える、
筋の通らないいじめの背後には、
「乗っ取られ現象」の力学が作用しています。

B子さん（48歳）は、施設でヘルパーの仕事をしています。
チームワークが何よりも重要な仕事なのに、
なぜかB子さんには
必要な情報が伝えられないことが多く、
仕事の指示すら、あまりもらえません。

その結果、ミスやトラブルが増え、
ただでさえ忙しい職場で
周りをイライラさせてしまいます。

今はほぼ無視されて、陰で悪口を言われ、
独り浮いている状態だそうです。

B子さんは、過去にも学校や職場など、
さまざまな場面で同じような経験をしてきました。

コミュニケーションが足りないからだと思うのですが、
自分からは怖くて輪の中に入っていけません。
どうせ受け入れてもらえないという諦めの気持ち。
自分はさげすまれているという気持ち。
周囲の人への強い怒りもありました。

子供時代、彼女の両親は
病弱な妹ばかりを可愛いがりました。
隣の部屋で、両親と妹が
笑いながらアイスクリームを食べていても、
B子さんは呼んでもらえませんでした。

特に母親は、
Ｂ子さんなどいないかのように振舞いながらも、
何か少しでも気に障ると、
いつ手が飛んでくるかわかりませんでした。

怯えながら過ごす家は、
B子さんにとって、悲しみと苦痛の場でしか
ありませんでした。

やがて学校でも職場でも、
気がつくと、何も知らないはずの周りの人たちが
彼女の母親が彼女に対してするような仕打ちを
してくるようになりました。

【幼い心に刻まれる2つの気持ち】

心が傷つく場面には必ず、
『傷つける人』と、『傷つけられる人』の関係
があります。

その時トラウマを受けた子供の純真な心には
2つの相反する気持ちが強烈に刻み込まれます。

1つは、『傷つけられた側の気持ち』です。

幼いB子さんが感じていた気持ちです。
悲しい。寂しい。自分はダメだ。怯え。
受け入れてもらえない。孤独だ。
私はいない方がいいんだ。

という気持ちが刻み込まれます。

もう1つの気持ちは、『傷つける側の気持ち』です。

B子さんを傷つけた母親が
感じていた気持ちです。

イライラした感じ。強い怒り。責めたい気持ち。
蔑み。馬鹿にする気持ち。

これは加害者の気持ちなのに、そのコピーが
被害者の心に刻み込まれてしまうのです。

『傷つけられた側の気持ち』と
『傷つける側の気持ち』。

この相反する2つの気持ちが
トラウマと一緒に強く刻み込まれます。

どちらも、とても嫌な気持ちで、
この気持ちがあると
日常のことが出来なくなるほど苦しいので、
意識から切り離されて、
無意識の中に埋められてしまいます。

だから普段は、『傷つけられた側の気持ち』は感じないし、
母親のコピーの『傷つける側の気持ち』が
自分の中にあることに気づきません。

しかし、切り離された気持ちは、
手綱の付いていない馬みたいなもので、

何かのきっかけで勝手に出て来て振り回され、
過去の気持ちに、
今の自分が乗っ取られた状態になります。

それだけでなく、B子さんが切り離した気持ちに、
周りの人たちも乗っ取られてしまいます。

【傷ついた時の関係が再現される】

ここで重要なことは、
切り離された気持ちは、
自分や他者を乗っ取ってしまう、
ということです。

Ｂ子さんが『傷つけられた側の気持ち』に乗っ取られ、
周りの人たちが『傷つける側の気持ち』に乗っ取られています。

別の人のケースではその反対になる人もいるし、
場面によって変わる人もいます。

でもトラウマのある人に共通しているのは、
『傷つけられた側の気持ち』か
『傷つける側の気持ち』の、どちらかに
自分と他者が乗っ取られてしまうことです。

だから相手を替えても、集団を変えても、
『傷つける人』と『傷つけられる人』の関係
つまり、傷ついた時の関係が
毎回、再現されてしまいます。

母親のコピーの気持ちに乗っ取られた周りの人は、
B子さんに対して、
彼女の母親と同じような言動をするようになります。

B子さんが今まで、どの集団に入っても
なぜかいじめられる立場になってしまったのは、
この「乗っ取られ現象」が起きていたからです。

心理学では、“切り離した気持ち”は
“解離” と呼ばれます。
過去の人間関係の再現だけでなく、
身体症状、アルコールや買物などの各種依存症、
共依存、家庭内暴力なども生み出します。

【『見守っている意識』が関係を修復する】

B子さんと、“切り離された気持ちたち”の関係は
分断されています。
だから勝手に出て来て、自分や他者を乗っ取るのです。

分断された関係に「架け橋」をかけて、
関係を修復する必要があるのです。

しかし、B子さんが、
これが自分だと感じている意識（自我）は、
この気持ちを感じたくないから切り離しているので、
自我には、関係を修復できません。

でも大丈夫です。
心の中には、自我の他に、
心全体を見守っている意識があります。

いつもの自我とは違う眼差しで
心の中のさまざまな“気持ちたち”を
温かく見守っています。

これは言葉で説明するのは難しいのですが
催眠や瞑想等で心の奥深くを体験していくと、
案外容易に実感できます。

催眠状態で、B子さんに
まず『傷つけられた気持ち』、次に『傷つける気持ち』、
両方の気持ちを体験してもらいます。

さらに、『心全体を見守っている意識』になって、
これらの２つを眺めてもらいます。

はじめのうちは、
『見守っている意識』を感じても、
「私の気持ちなんか、わかるわけがない」
と、あきらめた気持ちが出てきました。

同時に、母親のイライラ、不機嫌な顔、
叩くときの激しい怒りを感じ、
B子さんはどうしていいかわからずに
固まってしまいました。

すると、後ろから何か温かい感じが伝わってきます。
『見守っている意識』が寄り添ってくれているのです。

どうしていいか、わからない。逃げ出したい。
後ろから優しくしてくれるのは嬉しいんだけど、
母が怖くて、前からの母の圧力が強すぎて…。

しかし、
なおも後ろから温かい感じが伝わってきて、
安心が広がっていきます。

こんなの初めてだから…。

彼女は泣き始めました。
初めは静かに、
やがて、今まで行き場のなかった
さまざまな思いがこみあげてきて、
声を上げて泣きました。

こうして、
『傷つけられた気持ち』と、『見守っている意識』との間に
「架け橋」が出来て、関係が修復されていきました。

次のセッションでは
母親のコピーの『傷つける気持ち』と、
『見守っている意識』との間に
「架け橋」を作っていきます。

『見守っている意識』は、
やさしい眼差しで眺めているだけですが、

他者を傷つけずにはいられない攻撃的な気持ちにも
少しずつ、変化が起こっていきます。

激しい怒りの下には、怖れがあったのです。

感じたくないつらい気持ちを切り離すことで
心を守ろうとするのは、自然のことです。
小さな子供にはそれしかできなかったのですから。

しかし、一人ぼっちで切り離されていた気持ちは、
『見守っている意識』が一緒にいてくれることで、
過去の体験を学びに変えることができます。

私たちは過去とつながり、
受け容れていくことができます。

【「心を育てる講座」第3部開講のお知らせ】

誰の心の中にも、切り離された気持ちがあります。
無意識のうちに切り離されたので
自分では気づきませんが、

人生に同じような事がパターンのように
何度も起きているなら、
切り離された気持ちが関わっているかも知れません。

B子さんと、切り離された気持ちの間で、
つながりがなくなってから、
これらの気持ちは変化できなくなっていたのです。
だから、人や場所が変わっても、
何十年も同じ出来事が起き続けていたのです。

その気持ちとの関係を修復することで、
人生のパターンを変えませんか？

7月20日（土）から始まる
「心を育てる講座」第3部では

・自分の無意識の中にある気持ちが、他者を乗っ取る
・過去の気持ちに乗っ取られる
・他人の気持ちに乗っ取られる
・感じたくない気持ちを、他者に預ける（預けられる）

という、「乗っ取られ現象」がどのように起きるのか。
それをどのように癒したらよいのか。
について深く学んでいきます。

月1回の土日の本講座の他にも、
毎週2時間以上のフォローアップと、2回の個人セッションを通して、
実際に体験し、習得していくプログラムとなっています。

実は「乗っ取られ現象」は、人生のあらゆる場面で、
自然に、あまりにも“フツーに”起こっています。
皆さん気づいてないので、
つゆほどの疑問も感じていません。

だから、それに気づくことが重要なのです。
気づくためには、まずは「乗っ取られ現象」の
実態をよく知っておくことが必要です。

自分のことではなかなかピンと来なくても、
他の人のケースを目の当たりにすると、
よくわかることが多々あります。

講座では、受講生同士がお互いに重要な気づきを与えうる、
かけがえのない機会を共有することになります。
それが今後のあなたの人生にどんな奇跡をもたらしてくれるか、
今からどうぞ楽しみにしていてください。

皆さまのご参加をお待ちしています。

【心を育てるセラピー講座第３部】

お申込み＆詳細はこちら
（申込締切：2024年7月10日まで）
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